マガジンのカバー画像

記憶の紙魚

69
雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
運営しているクリエイター

#長野県

水芭蕉の約束

彩花さんは、長野県のとある村出身だそうだ。 子供の頃の不思議な体験を聞かせてもらった。 そこはこぢんまりとした神社だった。 山の神と称され、春に田の神になり秋に山に戻る神を祀っている。 近所の信心深い住人達が世話をしていたので、山中にあるわりには小綺麗だった。 参道の階段は雑草が除かれ、敷地内に複数点在する塚も掃除されている。 お供え物も簡単なものが飾ってあった。 といってもかなり昔に廃神社となった場所。社や賽銭箱、神輿を入れた倉の戸は朽ちている部分がある。 ぼそぼそとした

溜まる澱

長野県に人肉を出していたと噂される、既に廃墟になっているレストラン跡がある。 廃墟マニアの咲子さんは目当ての廃旅館のついでに立ち寄ったそうだ。 背丈ほどある植物に囲まれ、太い蔦や折れた樹木。 歩くに難儀したが、すぐに土に汚されたコンクリートが覗いているのに気付いた。 長屋に台形を逆さにした屋根を乗せたような、不思議な骨組みをしていた。 全焼したと聞いたので、おそらく鉄筋コンクリートの造りだったのだろう。 廃墟というには目立つものが無い、がっかりするようなものだった。 落書き

土嚢のような

脚がない人が腰を下ろした時、どのように動くかご存じだろうか。 洋一さんは14歳の頃、競歩大会に参加したそうだ。 長野県にある湖をぐるりと一周する学校行事。冬の寒い時期にやるのに強制参加だった。 もちろん生徒たちのやる気はマダラ。 でも洋一さんは目立ちたい。女の子に一目置かれたいと思った。 なので下校後、個人的に練習をした。 流石に毎日一周はキツイので約2/3周、K水門まで。 K水門近くは駐車場がある。そこまで母親に迎えに来てもらうのだった。 辺りがとっぷりと暗くなる頃、