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SXSW 2020 Virtual Cinema on Oculus TVで最も良かったVR映画"Look at Me"

今年残念ながら開催中止となったSXSWでは、「SXSW 2020 Virtual Cinema on Oculus TV」と題して、上映予定だったVR映画7作品を5/22-31の期間OculusTVにて無料配信しています。

今日はその中で個人的に最も良かったVR映画"Look at Me"をご紹介させて頂きます!

台湾のVR映画事情

この作品は台湾で撮影されたVR映画で、台湾の高雄(カオシュン)にあるVR FILM LABのサポートを受けて制作されています。

今年のトライベッカ 映画祭では”Home”という、とてもクオリティの高いVRドキュメンタリーが公式上映されていたのですが、これもVR FILM LABのサポートを受けて作られた作品でした。

台湾では今、国を挙げてVRコンテンツの制作を促進しようと、VR技術を用いた国際共同制作作品への助成スキームを作っていたりと、VR映画へのサポートを推進しています。

その甲斐もあって2019年のベネチア国際映画祭VR部門では、公式上映された40作品のうち、8本もの作品が台湾によるプロデュースもしくはコ・プロデュース作品という快挙を遂げました。

VR業界はまだ黎明期なだけあって、国によるサポートの効果は大きいのだと思います。台湾のVR映画業界は、今とても層が厚くなってきているのではないでしょうか。

作品概要

この作品の主人公Zhangは、近未来の世の中で誰もがそうしているように、バーチャルな世界で日常の多くを過ごしています。

しかしZhangの彼女はさらに重症で、デート中すら彼のことを見ることがなく、また彼とのセックスよりもバーチャル上の関係に興奮を覚えるようになってしまい、彼は「こんなのは正常ではない!」と深く落ち込みます。可哀想なZhangは、VR上で女の子が自分のことを見て話しかけてくれるように感じられるVRチャットツールを使い、自分のことを慰めます。

Zhangは彼女と失恋した夜、街中を彷徨い歩き、ある怪しげなクラブの前で足を止めます。そのクラブでは、バーチャルな世界に飽き飽きした若者たちが、「実際の交流(real interactions)」を求めて、全身を使って闘いを繰り広げています。

そしてそこにいる誰もが、会話をしている最中、実際にお互いのことを「見つめ合って」いるのです。

感想

私はこの作品が、今年のSXSWの上映作品の中でダントツに面白く感じました。

その理由の一つは、脚本の面白さだと思います。VR映画はまだ黎明期なのもあり、斬新な撮り方や新しい技術を使うこと、またVRで撮ったら面白そうな場所・シーンを撮ることにこだわる一方で(その点が映画祭からも評価されるため)、肝心のストーリーが弱い作品も多いという印象があります。

しかしこの作品は脚本がよく練られており、短編小説として読んでもかなり面白いのではないかと思います。またVRが普及した後の世界を、VR映画という形で表現することで、よりリアリティが感じられました。

もう一つ感じたのは、VRならではの体験の設計です。ネタバレになってしまうので詳細の説明は伏せますが、自分のことを見て欲しいと求め続けていた主人公が、最後には実際に人から見つめられることによって満たされていく感覚を、視聴者自身も肌で感じることができます。

また室内のシーンも屋外のシーンも、全体を通して映像の色味が美しく感じられ、撮影のクオリティも高いと感じました。


以上、私が今回の上映作品の中で一番好きだったVR映画"Look at Me"のご紹介をさせて頂きました!これ以外の作品については下記のnoteで記事化しているので、宜しければご覧ください。

実際に作品を見てみたい方は、5/31までにOculus TVにてご覧ください!

*Twitterもやっていますので、宜しければぜひフォローいただけたら嬉しいです!
https://twitter.com/Kanamonomono




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