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【5/22-31まで無料配信】SXSW 2020 Virtual Cinema on Oculus TV / VR映画レビュー Part1

イベント概要

アメリカ・オースティンで毎年3月に行われるSXSWは、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルを組み合わせたイベントで、毎年世界中から多くの人が訪れます。

VR映画業界においてもベネチア国際映画祭、サンダンス映画祭、トライベッカ 映画祭などに並び、最も影響力のある映画祭VR部門の一つとして、毎年ノミネート作品や受賞作品に大きな注目が集まっています。

今年は残念ながらコロナウイルスの影響でイベントは開催中止になってしまったのですが、Oculusのサポートにより「SXSW 2020 Virtual Cinema on Oculus TV」と題して5/22-31まで無料配信を行っています。

4月にはトライベッカ 映画祭VR部門のノミネート12作品も、Oculus TVでの無料公開が行われていました。実際の経緯は分かりませんが、Oculusが世界の主要映画祭VR部門にアプローチをかけているのかもしれません。

VR映画の領域においては、映画祭もこういった形でテクノロジー企業や、機材のオペレーションができる会社と連携をしながら開催しているケースが多いです。

上映作品について

SXSW 2020 Virtual Cinema の上映作品は「Places」(3作品)と「People」(4作品)の2つのプログラムに分かれており、この記事ではまず「Places」プログラムの3作品を紹介させて頂きます。


①After the Fallout (核の灰の後

概要

After the Falloutは、福島の原子力発電所の事故を題材にしたVRドキュメンタリーで、今年1月にはサンダンス映画祭「 VR Cinema Program 」でも公式上映されています。

アメリカのEmblematic GroupというVR/AR/MR領域のプロデュース会社が手掛けており、スイスとアメリカの映像ジャーナリストが、2016年から福島の原子力発電所の周辺地域(立ち入り禁止地域を含む)で撮り続けたということです。事故から10年近くが経過した今、その地域でどのような光景が広がっているのかを、そこで暮らす人々の日常を通して描いています。

また作品の中で、今年の1月に逝去された大野慶人さんという日本の著名な舞踏家の方が随所に登場し、視聴者の想像を掻き立てるような舞を披露しています。

感想

私はこの作品についてVR業界の数名と感想を話し合ったのですが、見る人によってとても意見が分かれる作品でした。

作品内にはナレーションがないため(一部吹き替えだけありますが)、制作者が自分の主張を発信しているわけではなく、淡々と現実の風景をそのまま見せる構成になっています。

しかし切り取っているシーンや取材対象の選び方から制作者の意図が見え隠れするため、客観的なドキュメンタリーとは言い難いという意見もありました。

私個人としては、この作品を見なければなかなかこのテーマについて最近考える機会がなかったので、VRで現地の様子を見ることができて良かったです。またこの作品がSundanceやSXSWで上映をされるということは、原子力発電所の事故から10年近くが経っても、日本国内だけではなく世界中の人々にとって記憶が風化していない(また風化をさせてはいけないと強く思われている)出来事なのだということを、改めて認識しました。


②Notre-Dame de Paris: A Unique Journey Back in Time (パリのノートルダム:時を遡るユニークな旅) 

概要

Notre-Dame de Paris: A Unique Journey Back in Timeは、ノートルダム大聖堂をVR空間内に再現したVR映像です。

2019年の4月、世界中の人々がノートルダム大聖堂が焼け落ちていく映像をニュースで目にしました。この悲劇の後、たくさんの人々が大聖堂の記録を残そうと、写真や映像をシェアし始めました。

またコンピューターゲーム会社のUbisoftは、2014年に発売したフランス・パリが舞台の『アサシン クリード ユニティ(Assassin's Creed Unity)』の中で、たまたま精緻なノートルダム大聖堂を登場させていました。

本作品では、このゲームに使われた3Dモデルを元に、ノートルダム大聖堂の中をVR空間でツアーできるVR映像を制作しています。大聖堂の外観を眺めるだけではなく、建物内や屋上など、色々な場所から主観視点で大聖堂の風景を楽しむことができます。

感想

この作品は「VR映画」というよりも「VRツアー」に近いのですが、とても精緻なアニメーションで大聖堂の各空間が再現されており、実際に訪れたかのような感覚を得ることができました。

私自身はノートルダム大聖堂に行ったことがなかったので、シンブルに「ノートルダム大聖堂ってこんなところなんだ!」という楽しみ方をすることができました。既に行ったことのある方は、きっとまた違う感覚を味わえるのではないかと思います。

今後こういった精緻なVRツアー映像が増えてくると、観光のあり方も変わってくるのではないかと思います。例えば旅先の有名な場所をVRツアーで先に巡っておいて、特に自分の目で見たいところには実際に訪れてみる、というような旅の仕方も将来的には可能になりそうです。「VRツアーで世界一周」なんていうバーチャル旅行パッケージも、そのうち出てくるかもしれません。


③A Song Within Us(私たちの中にある歌)

概要

A Song Within Usは、アンビソニックスオーディオ(360度空間内でリスナーを取り囲むように音を聞かせるオーディオ)を用いて、視聴者が声を発しながら作品に関わることができる作品です。

VR体験中、視聴者はある民族の長から指導を受けながら、彼らと一緒に「自然と一体になる」ための歌を歌います。視聴者が歌を歌うのと共に、VR空間の中でオーロラのようなビジュアルが写し出されます。

そして彼らと一緒に歌い続けることで、次第にそのビジュアルは大きくなっていき、やがて空間そのものが姿を変えていきます...。

感想

この作品の1番の特徴は、声を使って作品と関われることで、ただ眺めるだけのVR映像では無くなっていることです。自分も実際に歌いながら体験したのですが、ただ眺めるよりも作品に没入するような感覚が得られて、最後に空間そのものが変わっていくのも気持ち良く感じました。

またCGと実写の組み合わせ方も秀逸でした。最初は劇場内のステージ上の様子が実写で描かれているのですが、歌うにつれてCGの空間になっていき、最後には360度空間をフルに使った屋外の実写映像に切り替わっていきます。そのシーンの移り変わっていく感覚がとても爽快でした。

ちなみに今回はVRデバイスで映像を見たのですが、ドーム施設を使って、五人同時に体験できるバージョンもあるそうです。


以上、約3,000文字の長文になってしまいましたが、SXSW 2020 Virtual Cinema 「Places」プログラム3作品のご紹介でした!

明日のnoteでは「People」プログラムの作品もご紹介していければと思います。※下記続きのnoteになります。


作品視聴可能期間は5/31(日)までですので、ご興味のある方はOculus TVで期限内にご覧下さい!

*Twitterもやっていますので、宜しければぜひ繋がってください!
https://twitter.com/Kanamonomono

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