ふたり人事

人事の仕事をたった一人(あるいは二人)でやっている方について、思っていることを書いてみようと思います。
(個人的な感想を書きますので偏見も含まれます)

人事の仕事は何人で担当していますか?

大きい会社だと、採用・労務・福利厚生・教育研修・人事制度設計・組織開発など人事の仕事のくくりの中でも仕事が縦割りになっていて、その中でチームになってその分野の仕事を担当しているのでしょう。時に連携しながら。
もっと細かく、例えば採用であれば新卒・中途に担当チームがわかれていたり、採用企画と採用選考のオペレーションが違うチームになっていることもあるようです。

それが小さい会社だと、人事担当は一人です。
20名以下くらいの会社であれば人事の仕事だけでなく、総務・経理・営業事務・情報システムなど、なんでもやってる「事務全般の担当」みたいな場合もあるかもしれません。それも大変だとは思うのですが、私が個人的に過酷だと思うのは、数十人~100人くらいの会社で人事を1名で担当している「ひとり人事」だと思っています。
そういう人は、自分の仕事がすべて「人事の仕事」という認識でいるので、「労務」の仕事、「採用」の仕事、みたいに分けて考えてはいません。全部自分の仕事です。もちろん採用の仕事は現場の責任者の人に面接官をお願いしますから一人でやっているわけではないのですが、あくまで主体は私、と考えています。「採用を専門的に担当している人が10名いる」という話を聞いても、一体どういうことなのか、まるで想像もつかないのです。
他に「事務担当のアシスタント」とか「派遣さんがやってくれる」なども意味がわかりません。手伝ってくれる人なんてどこにもいないのです。

ひとり人事

私の勝手なイメージですが、ひとり人事には2パターンあると思います。(偏見です)

①社長を含めた経営側と近く、組織の成長に携わる人事

組織が小さいので社長とも日常的に直接、事業展開や組織運営について話を聞きながら、自分では何をすべきか考えている。社長から直接指示を受けるので、予算を使うハードルは高くない。外部の人事コンサルや社労士は社長と仲良さそうで、その中に自分も入って話をしながら中長期的な人事課題に取り組んでゆく。施策は自分で考え社長に提案し即決。人事施策はスピードが大事。
給与計算や社保手続きは基本アウトソーシングで、タレマネや勤怠管理のシステムはシェアナンバー1のものを導入。労務の細かい作業はしない。

②毎月の給与計算、社保をせっせと。時期によって採用業務とか

前任者が退職して、自分が「人事の仕事」を担当することになった。給与計算は難しいけど、前任者の引き継ぎ資料を見ながらどうにか毎月こなせている。社保の手続きは市販の本で勉強。新卒採用業務は毎年掲載しているナビサイトの営業の人がどうすれば良いか教えてくれるので、その通りにやっている。人事評価は、これまた前任者の引継ぎ通りに評価シートの内容をまとめて総務部長に提出。評価点が修正されて戻ってくるけど、基準はよくわからない。総務部長は営業畑の人なので人事には詳しくはなさそうだけど、従業員のトラブルはいつもうまく解決してくれる。


①と②はどちらが良い悪いとか、最先端なのか遅れているかいうことではなく、業務分野自体が違います。

私は長らく②に近い状況で、一時期は一人で人事業務をやっており、せっせと給与計算と社保手続きに追われる日々でした。
目の前の仕事(作業)に必死なので、「組織開発」みたいな発想には全然ならないんですよね。
総務や人事の仕事を少ない人数でやっていると、「頼れるお姉さん(お兄さん)」「みんなのお母さん的存在」みたいなのをイメージして、そうなろうとする人がいます。そういう要素も必要ではありますが、社員に寄り添うばかりが仕事なのではなく、本来は会社全体、組織として良いのかどうかを見なければならない仕事です。

私たちは、ふたり人事

私は現在、2人で人事業務を担当しています。一人でやれと言われれば私だけでもやるんですけど、できるかどうかでなく「人事業務を一人でやってはいけない」と思っています。たとえ人がいなくても、人事以外の業務と兼任にして2名で対応すべきでしょう。その理由を書いてみます。

給与計算は、全員にお金を振込んでゆく仕事

給与計算ってのは、要は従業員一人ひとりにお金を振込む仕事ですよ。そんなの一人でやるってこと自体がそもそもおかしい。不正が生まれる場面でしかありません。経理の人がチェックするのかもしれませんけど、経理の人は賃金規程を熟知してますか?細かい残業代までチェックします?給与計算作業を一人でやっていたら、属人化してその人にしかわからない仕事になってゆきます。もちろん不正なんかしませんけど、何かおかしい場合に疑われる環境も作ってはいけません。

社員の個人情報の管理も徐々にずさんに

社員の個人情報は紙であれば決められたファイルに決められた棚に保管し、決められた項目が同じようにシステムに登録されていなければなりません。ものによっては法令上の保管義務がありますよね。一人でやってたらだんだん杜撰になってきますよ。二人以上いるから、ルールがあってその通りにやるのです。一人だと「自分がやりやすいようにやれば良い」となる。そして自分にしかわからない状況になる。最後にはトラブルになる。

人材の配置計画も恣意的に

昇格や人員の配置とかは、小さい会社なら社長の裁量だけで行うんでしょうけど、一定以上の規模であれば、人事制度があって会社独自の基準が定められているかと思います。基準にそって運用をするのでしょうが、人が人を管理する以上、主観が入りこむ余地がゼロになることはありません。ひとり人事のような会社なら社員全員の顔と名前が一致していて性格もわかってるでしょう。そういう状況だからこそ、人の好き嫌いが出てきますって。一人でやってたら個人的感情に左右されるでしょう。そりゃ、複数で考えるべきでしょう。

無理してやらない

人事の業務は複雑化し、社会の変化や政治的政策で新しい概念がどんどん増えてきています。ひとり人事とかふたり人事のような規模の小さい会社の人は無理して新しいことをやらないほうが良いとも思っています。

本当にDX化が必要なのか?システムの導入には費用がかかるだけでなく、導入・運用まで労力がかかります。
社長による人事考課にみんなが納得しているのなら、無理して複雑な人事制度を作る必要もない。

厄介なのは社長が思いつきで、「最近はどこの会社も○○をやってるぞ。うちでも導入だ」という場合で、社長だからといって何でも言われた通りにやるばかりが正解ではなく、黙殺するスキルが必要だったりします。

注意点としては、法令で定められていることは当然実施しなければなりません。規模の小さい会社だと、違法状態になっている場合もあるのでそれだけは注意したほうが良いです。法令は変わるので最新情報をキャッチアップする必要があるのですが、よくわからなければ顧問社労士とよくコミュニケーションをとったほうが良いでしょう。

最後に

ひとりか、ふたりか。
それだけで大きく異なります。一人で大変だと思ってる人は、どうにかして2人にしてもらったほうがいいですよね。






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