Z世代に伝えたい、優しい世界の作り方(5章)④
街を一通り見渡すと、記憶をたどりながら家に帰ることにした。それにしても不思議だ、今生まれた感覚があるのに頭の中には子供のころの記憶があるんだ。まるで、ゲームを途中から始めたような感覚。
「ただいま、おかあさん元気?」
「何言ってんの?今朝も元気だったでしょ。今も元気よ」
「そうだね、元気そうで良かった」
「ところで僕は子供のころからお母さんに育てられたんだよね」
「何、記憶喪失みたいなこと言って、夢でも見たんじゃないの?」
「ごめんごめん、夢とごっちゃになっちゃって」
「変な子ね」
「疲れたから部屋で休むね」
「そうしなさい」
部屋に入ると、テレビは無かった。スマホもなく必要な情報はヘアバンドのようなものをすることで頭に浮かんでくる。この世界ではディスプレイというものがないらしい。ガラスやプラスチックや鉄を極限まで使わないみたいだ。
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