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「青の花、器の森」を読んだ。

良い作品にまた出会えました。
作者は「坂道のアポロン」で一世を風靡した小玉ユキさん。
私は出身が長崎県の長崎市。小玉先生は同じ長崎の佐世保市出身で、「坂道のアポロン」は佐世保の町の60年代の歴史感と、ジャズという音楽の楽しさ、高校生の葛藤や青春が描写されている名作です。「このマンガがすごい!2009」オンナ編1位、2010年に連載を終えるも、2012年にはアニメ化もされましたが、佐世保は聖地としても各所が有名となっているようで、僕も同郷ながら回ったことがない場所も多々あり、勝手に「クソ田舎でもはや見るところはない」と思っていた故郷に新たなスポットが出てきて早く帰郷して巡りたい思いでいっぱいです。


「坂道のアポロン」でジャズを題材にした児玉先生が、同じ故郷とはいえまさかテーマにしてくれたのが「波佐見焼」。地元長崎でも馴染み深い焼き物です。
実はわたくしの本家は有名な窯元でして、まあわたくし本人にその才能は一切無いのですが。
わたくしは歴史物が好きでして、美術館や博物館に行っても、歴史のものは何時間もハマって見てしまうのですが、昔の考古物や文献などとかは。けど陶磁器などはスルーです。地元の「陶器市」?まったく興味関心すらないイベントで、うちのクソ田舎には自然とその自然の生む豪華な食材、そして陶器市ぐらいしか魅力がないものかと思ってました。


今回読むきっかけとなったのはヤフーやコミックナタリーのニュースで、小玉ユキさんの「アポロン」やこの「青花」のグッズが新宿紀伊国屋で販売されるとともに。なんとサイン会が12月13日にあると。
これは行かねばと。サイン会は漫画家超絶リスペクトの僕としては呼吸を忘れるくらい大イベントになるのですが、残念ながらいつもの、はい仕事で行けませぬ。


で、これまで読んだことがなかったのですが、せめて読まねばならないかなと「青の花 器の森」を5巻すべて読破しました。
さすが児玉先生、ラブロマンスがうまいというか、心の通わせ方や心理描写が実に美味でございました。


これまで陶磁器に関心が無い僕も、「デザインの1つ1つにクリエイターの物語があるのだな」と。陶磁器などの美術作品とかは、「そのモノの良さ」を使う人が自由に感じるために作られ、職人の思いを感じることは難しい。情報が欲しいなあと思ってしまう。
こういうと、僕は作品を楽しむ情緒や感情が欠けているのだろうなと思います。本来、作品というのは作品そのものを愛でるのであり、クリエイターの心情などどうでもいいものかもしれません。けど、その作り手の人々のドラマを知ることも、その作品の愛着のきっかけになると思うのです。物に魂がこもるというか。いや、使う私たちが想像せねばならないのでしょうが。


僕もこの作品を読むだけでなく、いろいろな描写の背景が気になる。たとえば、主人公の青子さんもふくめて、キャラの瞳が黒い塗りつぶしなんだ。少女マンガなのに珍しいなと思いながら読んでいた。
それで調べて、作者の小玉先生のインタビュー記事があり、読んで納得した。児玉さんのキャラの瞳、特に青子の場合は感情がこもったときに瞳に光が入る。「青子にマニアックなオタクっぽい感覚に火がついたとき」に瞳に光が入ると言ってました。この描写も、作品を楽しむ1つの要素。結局は、作品というのは、出てきたものを見て感じて、そこから思ったことを妄想したり、背景を調べたりしてムフフと思うものでしょう。

とりあえず、今度帰郷したときに波佐見町に行きたいなと思いました。のぼりがまのあととか見てみたいなあ。自然しかないクソ田舎と思ってたけど、こういうささいな歴史を感じるとふるさとは宝に思えてきますね。
あと、グッズの「波佐見焼キーホルダー」はゲットせねば。

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