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商品と通貨1

商品生産における労働価値には質的な価値と量的な価値がある。
質的な価値とはその労働の専門性などの様々レベルを含む。
量的価値はどれだけそれを生産したかということである。
商品の価値はそれ単独で評価することはできないから、それとは異なる他の製品と比較して表現することになる。
現代の市場では物々交換ということは、ほぼないだろうからその交換価値を表示する役割を果たすものが通貨ということになる。
私は通貨(カネ)を「約束事を数値で表現するための証文」と定義したい。通貨に表示されているのは数値のみであって約束の内容は書かれていない。
最近では中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)が開発されている。
私はまだCBDCを使った経験がないから、その機能の全体を存じない。
単なる数値以外の約束事を帯びる機能の付与も予想はできる。
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国主導のデジタル通貨が2024年4月現在開発中と聴く。世界経済をこれから主導するのはこれらこれまで開発途上国と呼ばれてきた資源、製造大国群となる。
いわゆる従来先進国と呼ばれた欧米日は、製造業が後退し、その産物が裏打ちすべき通貨の価値下落を止める方法がなく、経済の主導権を途上国へ譲ることになる。
製品を商品とするには現物それ自体の形態に価値を設定することになる。
それはどのように決まるものなのか。
前項では需給バランスによる価格決定機序に関して述べた。
製品には原材料、流通経費、労働手間賃、生産者、流通業者、小売商の利益、税などさまざまな価値が乗せられる。従って現代の商品の価格の中身を分析することはとても複雑な事となる。
しかしいずれにせよ需要のない物は売れないし、必要度の高い物はよく売れるから値は上がるかもしれない。
この原稿を書いている今、貴金属店舗には行列ができているという。
通貨価値が下落している現在、安定資産である純金を買って資産保全をはかる向きが多いのであろう。
価値に関して、古典経済学には、商行為は労働価値どうしの交換だと考える立場がある。
現代ではロボットがその労働のかなりの部分を担うからロボットの仕事をも含めて考えることになる。
金の価値を基準価値とする考えは合理的であるため伝統的に用いられてきた方法である。
通貨はその国の様々な事情や都合で変動するのだが、金の価値は不変だと定義するのである。
金の生産は限られているのでその価値を固定しやすいとも言える。
現在は金本位ではなく、金がそれぞれの通貨でいくらというように、金の価値が動いているかのように扱われているが、通貨価値が下落しつつある現代では、やがて金または生産資源が基準となる国際的通貨制度があらわれるかもしれない。
もちろん志賀島の金印は歴史的国宝であるから、その金としての物質何グラムだからいくらという話では片づかない。また金に芸術的細工が施されたりして工芸品、美術品としての価値が付加されることもある。
付加価値というのは化け物のように捉えどころがなく、価値があると買い手が勝手に評価すればその通りになり得るのである。だからバブル現象が起きてしまい市場の価値判断に大きな歪みを生じて流動性に支障が起きてくるのである。
その弊害については、厄介な問題であるが、項を改めて述べなければなるまい。

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