見出し画像

日本の社会保障制度の終焉

欧米日の資本主義時代は終わった
 日本は戦後も欧米資本主義的生産制度を模倣して今日に至っている。
 従って、英米の経済の仕組みの内部に日本経済は取り込まれている。20世紀後半は欧米は植民地を独立させ代わりにそこを傀儡化した。
 植民地主義、傀儡主義なんて印象がよくないから、民主主義とい偽善的政治用語を前面に出した。しかし、IMF、世界銀行の仕掛けは途上国をずっと途上国のまま固定して、ドルで世界を支配してきた。
 ドル基軸ではドルがあたかも世界の通貨のようにふるまえた。貿易の決済はどの国の間の貿易であれ、ドルで決済し送金システムも70年代からSWIFT(国際銀行間通信協会 Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)が設定されていた。ドル価値を裏書きする商取引は世界中ということになるから、ドル需要は世界規模であった。世界中の途上国の労働者の労働がドル価値を担保するという、なんと打ち出の小槌のようにアメリカに都合の良い仕掛けだった。
 戦後の日本では工業化が促進された。農村から若者が工業地帯へ供給され、旺盛な需要と共に日本は工業国になった。この需要の多くをアメリカが提供していた。
 この恩恵として社会保障制度も成長した。つまり社会保障制度は資本主義的生産とセットで存在していた。
 従って、日本の経済成長が順調な時代には社会保障予算も潤沢に成長した。しかし、プラザ合意(1985年)により強引に円高(ドル安)誘導され日本の輸出産業は頭打ちになった。その後は医療分野においても健康保険制度は一方的に後退していった。医療から介護分野が切り離され、利用者負担の大きい介護保険制度も設定された。
 一方、途上国は次第に力をつけて欧米支配から本当の意味で主権自立を試みるようになった。途上国がアメリカから自立していくとアメリカの言うなりにはいかなくなる。
 アメリカは諜報機関を世界各国で暗躍させた。アメリカ傀儡の国で、アメリカに反旗を翻し自立を唱える指導者は粛清された。サダム・フセイン、カダフィなどの記憶がよみがえる。
 アメリカは対米自立指導者を独裁者、権威主義者と決めつけた。「人権外交」「民主主義」を押し付け、いわゆるカラー革命という政権転覆まで煽動誘発した。日本などのリベラル野党もそれに服従した。このため日本での対米自立の芽は小さいうちに摘まれるしくみができた。ドル依存は恒久化し、いうことを聞かない国はSWIFT制裁の対象となった。いわゆる経済制裁である。ドル決済の貿易の送金を凍結するのである。
 しかし、21世紀になり、アメリカの繁栄は急速に行き詰まった。下の三角図(図1)をみよう。

図1.三角図では頂点Cに至ると一二次産業が全滅である。


頂点Aは農業など第1次産業100%、頂点Bは第2次産業100%、頂点Cは第3次産業100%ということになる。昔の農業国はAの位置にいたはずだ。工業化すればBの方へ移動してゆく。金融サービス業が発達すればCの方へ。いわゆる先進国は頂点Cに限りなく近づいている。アメリカ、イギリス、イスラエル、フランスなどはCに近い。日本もそうだ。農工業がおろそかにされているともいえる。事実、農村は過疎化しており、農業は遅れた産業だという偏見を持つ若者さえもいる。異常だ。
 しかし、通貨価値を担保するものは第1,2次産業の生産なのだ。第3次産業の付加価値は架空のものだから、通貨価値を創出するようでいて実はしない。バブル価値なのだ。
 2020年3月には架空のコロナ禍が国際的に演じられ、「先進国」では相次いで都市閉鎖(ロックダウン)が行われ、金融、サービス業は大打撃を受けた。コロナの架空性や「ワクチン」と称する物質に関しての虚偽性については稿を改めて書かねばならない。
 農工業などのきつい労働を避けて、第3次産業を志向する先進国はGDPこそ高額となるが農工生産という肝心な現物が国内で自給できなくなり、途上国の労働に依存する。三角図の頂点Cに至ると国家は滅亡するのだ。
 GDP(国内総生産)というのは多ければよいというものではなさそうで、私見では現在のドル単位で言えば一人当たり名目GDPには至適値があり、それは$20000/年位なのではなかろうか。
 コロナを利用して点Cに至るを防いで農工生産に労働者を振り向けようとしたのか、金融業の淘汰を図ろうとしたのかは諸説あるところだろう。独占資本主義というのはつまるところ他の金融業を蹴落として富の国際的独り占めを画策するものである。21年12月にはアメリカはそれまで行っていた量的金融緩和をやめた。通貨の過剰発行が物価上昇を招いているからだとしていた。実際にはアメリカが対中貿易に高関税をかけるなどして中国を敵視する政策をとったため、物流が不足して商品価格が上昇したのだ。三角図の頂点Cにいるものは滅亡する運命なのだ。農業を棄てた民は必ず滅びる法則である。中国とは実体経済中心という意味でもある。実体経済の流動を断ってしまえば、アメリカといえども生き残れない。アメリカの量的金融緩和終了はある意味アメリカ経済政策の終焉であった。カネは刷ればいいというものではない。
 2014年(ヤヌコビッチ政権転覆工作)からウクライナでアメリカはロシア系住民迫害工作を行っていたが、ウクライナ内戦はアメリカの武器輸出によって激しさを増していた。ドネツク、ルガンスクなどの東部州は独立まで宣言してアメリカ、NATOによるロシア系住民攻撃から逃れようと戦っていた。しかしアメリカはゼレンスキー政権をそそのかしてウクライナ東部に対する攻撃を激化させたため結局ロシアは22年2月に応答的に特別軍事作戦(SMO)に踏み切った。この作戦を誘発した責任がNATO側にあることは明白だ。アメリカは輸出できるものが乏しくなり、武器輸出市場を拡大するしか貿易赤字を解消する手立てがなさそうだ。いや、それでも工業生産は減るばかり。移民労働で穴埋めしようとしてもだめ。生産力は2008年ころには中国に抜かされており、その差はどんどん加速して拡大している。2008年というのはリーマン・ブラザーズの破産で記憶されているが、私はこの時点でアメリカ資本主義は崩壊したとみている。その後は再生できず、諸経済指標は隠蔽、粉飾、上塗りされて嘘が喧伝されつつ経済が回っているかのように見せかけているだけだ。いわば張りぼて経済大国だ。当然軍事力も張りぼてに過ぎない。戦力はすでにない。在庫に残った武器を高額でウクライナに買わせているだけだ。さらにアメリカは欧州や日韓をそそのかして対露制裁までやらせた。これは西側にとって致命的であった。アメリカが嘘の上塗りを続けるためには子分の国を利用して経済が生きているかのようにアメリカ資産を買い支えさせた。すでに死んだ資本主義アメリカがまるで生きているかのように欧州、日韓(台湾)は支えるのに苦労している。この巨大な死体を解体するのにはまだ時間がかかるだろう。
 対露制裁の結果、欧米日韓には資源、戦略物資が回らなくなり、物価が上がり庶民の暮らしは厳しさを増す。ロシアと中国は結びつきを強めた。これまで分断されていた中印、印パ、サウジ、イランなどが和解する流れになった。世界資源の多くは中露の側にある。BRICSという途上国主導の経済枠組みも立ち上がり決済にドルを使わない方法が開発されつつある。中国はアメリカの先端技術に依存しなくなり、独自先端技術の開発を加速している。
 アジア、アフリカの途上国はアメリカ傀儡状態から次々と自立している。脱ドル化も進んだ。

社会保障制度を支える資本主義生産が行き詰まる

 これまでみてきたように欧米日の先進国的な経済は崩壊し始めており、現在はその解体作業過程に移っている。経済は再生できるのか?残念ながら現行システムのままでは無理である。なぜかは別の稿述べたように、第三次産業化した構造は容易には一次、二次産業には戻れないからだ。通貨価値を裏打ちする者はあくまでも一二次産業の現物実生産である。(仮想通貨のマイニングに相当するのだろう)
欧米日はこれまでは途上国の労働価値を搾取できたから(つまり資源、材料などを格安で輸入できた)通貨増刷も面白いようにできた。途上国の剰余労働によって先進国の福祉が回っていたようなものである。しかし、途上国を敵視したり蔑視した”先進国”はもう終わりだ。中露を先頭に途上国は脱ドルを加速させている。ドル価値はどんどん低下している。円はそれよりも墜落速度が速いようだ。(対ドルでの円安)
 日本では農村がアメリカ(追従)により破壊され過疎化が著しい。農村は食料だけでなく人材の供給装置でもあった。農村がだめになれば、福祉人材も乏しくなる。金融サービス業で貴族生活に慣れた人々は、農業や介護職にはなかなか就けないものだ。
 日本人の生活形態は核家族化~一人暮らし化が著しい。家族的に、あるいは村落共同体の近所付き合い式に助け合わないから社会保障要求度が高い。

 こどもの教育や高齢者福祉が有料、災害被災地復旧ができないなんて言う国は国家として失格なのだ。日本の国債発行残高は極端に高額だし金利も上昇している。日銀はその金利を上げることも下げることもできない。上げれば国家に負担が大きくなり国債償還費が増えすぎて社会保障費を削ることになる。下げれば国債を買いオペするということだから通貨流量が増えて物価があがって住民負担が増える。結局、日銀はこの実体経済の問題を解決する能力を失っている。いずれにしても社会保障という”贅沢構造”を支えていた途上国にそっぽをむかれたのだから、日本人は覚悟せねばなるまい。それが嫌ならば中露に謝罪して資材輸入を格安でお願いするしか方法がないだろう。         
 対米追従を続ければ続けるほどこの国は損壊する。アメリカ解体作業の穴埋めに使われてしまい、結局この国も解体されるだろう。その際、穴埋めしてくれる国はない。   

 これまで、途上国にはうらやましがられたこの国の社会保障制度は、どんどん廃れてゆく。国際償還費や軍事費というのは対米追従経費ともいえる。これが増えてゆく形で社会保障費は相対的に減っていく。介護人材も減る。物価は上がる。よってもうこれ以上書くまでもなくどれもこれも成り立たないのだ。
 どこまで物価があがるのか?第1.2次産業割合がGDPの1/4位なのであれば最悪通貨価値も1/4まで縮むかもしれない。つまり物価が4倍にまで上昇するということだ。さらに1.2次産業比率が低下するならば物価ももっと上昇する。特に食料、つまり農産物、水産物の生産量は重要だ。福島の核汚染水を排水して中国から水産物輸入を制裁されたのは罰当たりだ。絶対中止しなければならないが、アメリカが圧力をかけ続けるのだろう。最悪だ。水産物輸出額自体は大したことがないなどという者があるが、食料生産は通貨価値維持のためにも重要だ。サービス業で埋め合わせられるものではない。

図2.GDP産業内訳
資源製造国と友好でなければ必需品が不足し、
資材、原料不足で生産も低下し通貨価値は下落する

 第三次産業比率が名目GDPに直接反映する。この比率が高い国ほど人口一人当たりGDPは高値を示す。資本主義が発展しているのではない。サービス業者が増えただけのことだ。そして1.2次産業比率が縮むほどその国の将来はなく、社会保障も崩壊する。これは国債費、軍事費よりも先に削られる性格をもっており、近い将来には制度が消えることになると予測できよう。
 救済策があるとすればそれは唯一、対中露友好路線、対米自立のみである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?