東京で新潟ラーメンが食べられない

新潟ラーメン。
ちょっと前までは新潟4大ラーメンと呼ばれ、あっさり醤油、濃厚味噌、背脂、生姜醤油の4区分だったのだが、近年はカレーラーメンを含めて5大ラーメンと呼ばれるらしい。らしい、というのは、カレーラーメンは食べたことがなく、あくまで伝聞に過ぎないためだ。

新潟から上京して、はや11年。新潟時代は親と、友人と、あるいは一人で、ラーメンを食べまくった。そのどれもが美味しく、優しく、暖かかった。東京のラーメンは美味しい。美味しいんだけど、優しくはない。この感覚は個人的な感情が多分に含まれるので、理解はしなくていい。とにかく、新潟のラーメンが好きなのだ。

そのなかでも好きなラーメンがある。いわゆる、あっさり醤油と呼ばれるもので、新潟市民なら誰もが知る三吉屋という名店が代表格だろうか。石門子(せきもんし)という名店もあったのだが、こちらは残念ながら閉店してしまった。

僕はてっきり、新潟ラーメンといえばこれを指すものだとばかり思っていた。確かに、割りスープで薄めて食べる味噌ラーメンは味はもちろんエンタメ的にもおもしろく、生姜醤油も唯一無二で、背脂系はインパクトがある。カレーラーメンはよくわからないけど、名前が既にインパクトの塊だ。そのどれもが特徴的で、たしかに4大ラーメン、5大ラーメンと呼ばれるのも頷ける。

しかし、だ。それでもなお、あっさり醤油のあの味は、他とは一線を画す存在だと思う。正直に言って、他の4ラーメンと比べればインパクトは間違いなく薄い部類だろう。煮干しと醤油をベースに作られた透き通ったスープは、見た目だけなら「まあ普通だな」で片付けられてもおかしくない。細縮れ麺もまた、下手をすればインスタント麺と同じだと思われても不思議ではない外見である。

それでも、それでも、僕はこの三吉屋を筆頭とするあっさり醤油ラーメンが大好きだ。スープは優しく、そして暖かく、思わず飲み干してしまう。スルスルと食べられる麺が優しいスープとよく合う。具材はシンプルで、お店にもよるが2、3品目が乗っている程度。だがそれが、雑味を残さず、ラーメン全体の一体感をもたらしてくれる。スープは優しく、そして暖かく、思わず飲み干してしまう。スルスルと食べられる麺が優しいスープとよく合う。具材はシンプルで、お店にもよるが2、3品目が乗っている程度。だがそれが、雑味を残さず、ラーメン全体の一体感をもたらしてくれる。素朴な見た目に反して、いや、シンプルな構成だからこそ、全体の完成度が底上げされたラーメンである。素朴な見た目に反して、いや、シンプルな構成だからこそ、全体の完成度が底上げされたラーメンである。

このラーメンが、東京にはないのだ。「東京 新潟ラーメン」などで検索してみるといい。「東京 新潟ラーメン」などで検索してみるといい。新潟ルーツの店でなくとも高く評価されている店はそこそこあるが、そのどれもが5大ラーメンのうちあっさり醤油以外のラーメンを提供する店だ。なおじ、青島食堂のような新潟の名店が進出しているが、どちらもあっさり醤油のラーメンではない。新潟ルーツの店でなくとも高く評価されている店はそこそこあるが、そのどれもが5大ラーメンのうちあっさり醤油以外のラーメンを提供する店だ。

他にも中華そばを提供する店――そう、たびたび名前が登場する三吉屋ではラーメンのことを「中華そば」と呼んでいる――も当然数あるが、
そのどれもがやはり新潟のラーメンではない。スープが違ったり、麺が違ったり、具が違ったり。

東京で展開される新潟のラーメンを食べて「こんなものか」と思わないでほしい。あっさり醤油のラーメンだけが、東京にはない。どう考えても、新潟の代表と言えるポテンシャルを持っているのにだ。東京に進出しない詳しい理由はわからない。「新潟の新鮮な魚介が必要だから県外に出せない」なんて話も聞いたことがあるが、正直眉唾だと思っている。新潟にはサラダホープという新潟人のソウルフードとも呼べる米菓もあるが、こちらも県外で販売されていない。
思うに、新潟の人たちには新潟で終わらせる文化があるのではないか。人の東京流出率は高いのに、新潟の良いものは新潟から出てこない。困ったものである。


だから、東京の人はどうか、新潟へ行ってラーメンを食べてほしい。幸い、三吉屋は新潟駅前に店舗がある。ついでにちょっと足を伸ばせば東横という味噌ラーメンのお店もある。こちらも新潟を代表するラーメンで、美味しい。ぜひどちらも楽しんでいただきたい。ちなみに、油淋鶏が激ウマだ。

誰か、頼む。東京に新潟ラーメンを持ってきてくれ。僕は帰省するたびに三吉屋のラーメンを食べている。だが、それでは多くても年に2回程度しか食べられない。東京にあれば毎週でも食べられるというのに。

僕は今日も、東京で美味しいラーメンを食べながら物足りなさを感じている。

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