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映画は芸術だ。<『ベニスに死す』研究報告>

はじめに

どうも、映画鑑賞が趣味の現役大学生・大矢です。

前回のブログから執筆を始めた「午前十時の映画祭10」で公開された作品の鑑賞日記

今回も引き続き、理解を深めるため、そして、自分の記憶を書き残しておくため、感想をまとめていきたいと思います。

本日、取り上げる作品は、『ミッドサマー』ホルガ村のヤバいおじさんwを演じて話題になったビョルン・アンドレセンさんが出演している一作。

若き日の彼の姿に、是非、驚いてほしい作品です。


今回の作品

『ベニスに死す』

監督:ルキノ・ヴィスコンティ/制作国:イタリア、フランス/上映時間:131分

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出典:https://www.imdb.com/title/tt0067445/mediaviewer/rm4034291968

 

あらすじ

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出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/20977/photo/?page=11

ある理由でベニスにやって来た初老の男性

ホテルに宿泊していた彼は、偶然、目にした美少年に心を奪われ、次第に、その姿を追い求めていき……。


感想

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出典:https://eiga.com/movie/56941/gallery/3/

白状します。今回の作品、実を言うと、映画館で爆睡してしまいました。泣

「午前十時から」という上映スケジュールの制約、セリフ数が少なく、まるでサイレント映画かのように映像で語る作風

心地の良いクラシック音楽美しい映像に、いつの間にやら意識が朦朧とし始め、目が覚めるとクライマックスの浜辺のシーンへ……。(執筆2回目から、中々の失態。笑)

シンプルな物語ゆえに、観客一人一人が余白を埋める作業を必要とする作品であるようにも思いましたが、「これは、さすがにいけない」と思い、今回は動画配信サイト"U-NEXT"さんにて、再鑑賞。

初見で分からなかった部分は、ある程度、調べた上で、今回は、作品の魅力を探してみることにしました……。


見どころ

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出典:https://www.imdb.com/title/tt0067445/mediaviewer/rm968068865

本作の見どころは、何と言っても、全編を彩る美しい映像音楽でしょう。

ベニスの美しい海と主人公が心惹かれる美少年。

さらに、緩やかで心が落ち着く旋律が融合することで、単なる映画とは一味違う見事な芸術作品としての感動がありました。

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出典:https://eiga.com/movie/56941/gallery/

ちなみに、そんな本作で美少年・タージオを演じたのが、序盤でもご紹介したビョルン・アンドレセンさん。

「初老男性が美少年に心を奪われる」という突飛な設定に、確かな説得力を持たせるほど整った顔立ちには、誰しも心惹かれる耽美な魅力がありました。


解説

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出典:https://www.imdb.com/title/tt0067445/mediaviewer/rm1396594432

本作において、とりわけ印象的だったのは、劇中で繰り返し使われている楽曲

こちらは、グスタフ・マーラーさんによる交響曲第5番・第4楽章「アダージェット」で、心が落ち着くようなどことなく切なさを感じさせるような弦楽器のメロディが胸を締め付ける一曲でした。

また、物語の背景には、当時、蔓延していたコレラの存在が大きく関係していました。

ベニスにやって来た主人公が、たびたび目撃する不思議な現象、そして、それこそが病の見えない恐怖へと繋がっていく展開。

美を追い求めていくうち、次第に身体の危険をも見えなくなってしまう主人公の執着心には、複雑な気持ちも抱かざるを得ない一作でした。


ヴィスコンティが描く本物の『おっさんずラブ』

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出典:https://eiga.com/movie/90359/gallery/3/

近年、日本で流行した人気ドラマに『おっさんずラブ』という作品がありました。

「若手男性社員が、20歳年上の男性上司に突然プロポーズされてしまう。」という、これまでの日本ドラマにはなかった物語が好評を博し、2016年の単発ドラマから、2019年には映画化もされた一作。

そんな現在の観点から見ると、『ベニスに死す』の物語に、どうしても、このドラマの存在を想起せずにはいられません。

これらの作品に共通しているのは「年齢や性別に関わらず、誰かに好意を抱くことは美しい」ということ。

人間の愛の本質を描いた物語は、いつの時代になっても支持される普遍的なテーマであり、そこにこそ、本当の意味での「芸術」が存在しているのだと思います。


今回の小道具 

本作の主人公が胸に入れていた一輪の花

100円ショップに売っていた造花を、少し調節して、そちらを再現してみました。

 

 

おわりに

正直、ヴィスコンティ作品初挑戦にしては、かなり敷居が高かった本作

とはいえ、名の知れた監督ということもあり、鑑賞後に『白夜』(1957)を観てみると、本作とは対照的に、セリフ量も多く、分かりやすい内容だったため、驚きました。

個人的には、そちらの方が好みではありましたが、監督の撮る作品の幅を知ることにも繋がったので、観て損はない一作になりました。

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