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酷暑とモノクロームなショートフィルム-SIGMA fp & Leica Lenz

宿命的でグローバルな熱波が世界に浸潤し、エアコンの庇護のもとでしか息もつけない。
斯様に薄弱になったのは進化なのか適応なのか。
こうも暑いと何もする気は起きず、かといって冬の絶望的なドーパミン不活性とまではいかない。
酷暑は光の世界であり、生物は精神の高揚を感じずにはいられない。
正午過ぎ、圧倒的な熱波の最高潮を脳天に感じながら、カメラ内部に閉じ込められた行き場のない熱を感じつつ歩く。
光はこれでもかと大地を覆い尽くし、鬱陶しい虫すらいない蹂躙された散歩道、ライカのオールドレンズは熱気のそのすぐ下を撮る。
吹き出す汗は家路を急がせ、カメラは火を吹くような熱さ、生物の臣従限界を超えた太陽直下の影のない道を記録するというのは人間の欲そのものである。
35度を超える気温は、数学的な正しさなどどうでも良くなる。
まさしくカメラで撮るべき世界を引っ剥がしてくれる熱波。
猛烈な熱を透過させた植物は、モノクロームで撮るしかその全てを映す術はない。
モノクロームは傍若無人な自然への適応であり、モノクロームは生物の抵抗力を陳腐化する。
我が子はエアコンの庇護のもと、自然から隔離され晴れて人間とされる。
最近では教室にもエアコンはあるようだ。
汗だくになりながら、蚊の生態系に寄与しながら、それでも自然で遊んでいた往時の自分はこの猛暑を耐えることができたのだろうか?
そんなことすらわからなくなるほど、エアコンという現代の象徴のもとで暮らすことに疑問も感じず、冷蔵庫でキンキンに冷やされたビールを飲む、この上ない幸せである。

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