今日はAIに書かせてみた小説を、実験結果として紹介したい。
深夜2時のジャズ(Bing AI)
まずはBing AI(Creative mode)に次のような質問をぶつけてみた。
質問文のおかげか、文章全体にそこはかとない村上春樹っぽさがある。(とはいっても、それは傾向の問題であり、村上春樹の物真似というわけではない。)筋としては全く面白味を感じないものの、文体は軽く、読みやすい。
「部屋には彼とジャズだけが存在しているような静寂が漂っていた。」という文章から、撞着語法のような技法も取り入れることが可能らしい。
しかし展開は単調であり、文章全体に構造のようなものを見出せないし、伏線描写のようなものも見当たらない。「テーマは『愛と死』だった。」という気になる言及も、それ以降、掘り下げられることはない。
また「深夜2時のジャズ」というタイトルでありながら、深夜2時の雰囲気というものがあまり醸し出されていない。ここは人間の手で修正すべき箇所かもしれない。
ジャズに関する表現もありきたりなものであり、具体性が感じられない。そこで、今度は具体的な作曲家や演奏家の名前を出しながら、小説を書き直してほしいと依頼してみた。(Creatvie modeだとウソをつくかもしれないので、Balanced modeで頼んでみた。)
深夜2時のジャズ(Bing AI リライト)
回答が途切れてしまったので、「続きをお願いします。」と入力してみたが、連続的に文章を出力してはくれなかった。ChatGPTであれば、ちゃんと文章を繋げてくれるものの、Bing AIだとうまくいかないらしい。
個々の段落が説明的に感じられる。しかしながら、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスといった固有名詞を出しながら、歴史に名を残すジャズ・ミュージシャンが「彼」に与えた影響を語っていく様は、なかなか見ごたえがある。(筋があまり感じられないのは少々寂しいが。)
ただし「音楽で言えば、『カーネギー・ホール』や『バードランド』みたいな小説を書きたかった。」という表現はいただけない。「カーネギー・ホール」や「バートランド」は音楽ではないからだ。あくまでクラブだ。ChatGPTに文章を生成させた際にも同じことを感じるのだが、こうした”ちょっとした齟齬や矛盾”がみられるのは仕方がないことなのかもしれない。
アルバムや曲名も日本人には馴染みのないカタカナに訳されてしまうことも多いようだ。たとえば、「ア・ラヴ・シュプリーム」は「ラブ・シュプリーム」とした方が通じやすいかもしれないし、「ウォルツ・フォー・デビイ」は「ワルツ・フォー・デビイ」とするべきだろう。しかし、固有名詞をざっと検索してみたところ、『風の歌を聴け』に登場するデレク・ハートフィールドのように、完全に架空の人物が登場することはなかった。
AIの書いた文章自体に強烈な感動を覚えることはなかった。ただ、この文章を読んで少しだけ楽しくなってしまった自分もいる。