リムスキー.コルサコフ

ジャズの和声の理論を独習しているのですが、そもそもこれはクラシックの西洋音楽理論に軸足があるのでそっちも少し読みかじっています。その和声法も大元はドイツ〜オーストリア音楽のスケールの機能性みたいなもので、ここではトライトーンが禁忌になっています。このルールがいわゆる調性の壁となってワーグナーやマーラーがのたうち回ったと認識しているのですが、同時代の東欧の作曲家が全然違うアプローチで音楽を書いていたように思えるのです。例えていうとブラームスの1番の1楽章のオルガンポイントとムソルグスキーの展覧会の絵の古城のオルガンポイントの質感の違い。ムソルグスキーのは完全5度が鳴り続けているので、むしろ東欧からアジアの民族音楽の痕跡も見えるのですが、スラッシュコードのあしらいにしても、曲の真ん中あたりで1度だけポーンと投げられるアッパーストラクチャートライアドなど、ドイツ音楽では聞けない響きがたくさん出てきます。そのあたりが気になりだしていわゆるロシア5人組周辺や前後の作品や有職故実を当たっているうちに突き当たったのがリムスキー.コルサコフの和声の本でした。ストラヴィンスキーがコルサコフの弟子で、3大バレエ組曲のようないわゆる不協和音やポリトーナルな技法を(コルサコフの理論に則って)縦横無尽に活用したのであれば、そのルーツにあるかもしれないコルサコフの本は大きな意味を持つのではないかな、と。ジャズとは無縁のロシアのカプースチンの作品のジャジーな和声の使い方の原点もここにあるのではないかな、と。バークリーメソッドの根幹にあるシリンガーシステムを提唱したジョセフ.シリンガーもロシア人だし、20世紀の音楽を考えるのに極めて重要な本なのではないかなぁ、と感じているのです。まだそこまで読み進んでいませんが、3章のModulationは見出しを見るだけでワクワクします。ジャズにおけるビバップでの和声の解釈の斬新さはトライトーンを利用したコードのサブスティテューションにあると思うのですが、このドイツ音楽の禁忌に対して12オンを幾何学的に均等分割したアプローチというのがシリンガーにあり、コルサコフはmoduleって言ってる。これめっちゃワクワクします。考えてみると、日本の音大のクラシック系ってドイツ音楽に軸足があるみたいで、他方近年定着したジャズ科の学部で教鞭をとってる人の大半がバークリー出身の方々です。同じ西洋音楽の和声をベースにした音楽なのにとても大きな溝があります。コルサコフの本はそこをつなぐものなのではないかなぁ、と推測しています。その推測が正しいかどうかはこれから読んで確かめますね。

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