本番のプレッシャーって何?

私は無名ではありますが細々とジャズという音楽をやっています。このジャズという音楽は曲者でして、「現場で何をやってもいい」という音楽なのです。もちろん日頃から色々な練習はしますが、それをどう活かすか、活かせないか、はその現場で音を出してみないとわからない世界なのです。さらに困ったことに、自分の中ではあまり上手くいってないと感じても後で録音を聴くと思いの外良かったり、またはその逆ということもこれまたよくあるのです。演奏の現場では「その場で最善を尽くしていい音楽を作る」ということだけを考えています。


他方、世の中にはたくさんの試験やセレクションがあります。受験なんてのはそういうものの最たるものでしょう。そうした試験や選別の現場では「失敗したらどうしよう」とか「今まで成績悪かったから無理かも」とか「知らない問題出たらどうしよう」などといったあれこれが錯綜することと思います。こういうものに囚われてプレッシャーで潰れていくのは自滅だと思うのです。

だって、失敗するかどうかはやってみるまでわからないし、過去の成績が本番の試験に影響することなんてないし、知らない問題が出るかどうかも試験問題を見るまでわかりません。全部妄想なんです。妄想に振り回されることほど愚かなことはありません。そして妄想に振り回されて本来の力を出せない人も結構います。それはもったいないなぁ、と思います。

個人的には、宗教的に帰依するとかいうことはしませんが、禅宗系の仏教にある言葉に惹かれます。そのキモは

「今ある現実だけを見据えてそこで最善を尽くせ」

という思考です。莫妄想という言葉があります。妄想に振り回されてはいけない、ということです。過去のことでくよくよするとか、起きてないことに対する余計な想像にびくびくすることには意味がないんです。試験なんてものは「これにパスしたかったらこの問題7割解けて欲しいんだけどできる?」って言われているだけのことだから「これでどうだ!」ってやればいいだけの話です。妄想で萎縮するだけ損です。天上天下唯我独尊って多分そういうことですよね。

我々ジャズミュージシャンのスラングで(アメリカ人のですが)、とんでもなく素晴らしい演奏のことをHoly Shitと言います。「聖なるウンコ」です。食べ物を食べるように学び、練習して得た結果として出てきたもの(これを排泄物っていう感覚がクールだと思う)が素晴らしいからHoly Shit。排泄するのは生理現象だからプレッシャーもヘッタクレもありません。芸術には打算なんてものはないので、その意味からも実に上手い言い回しと思います。妄想に振り回されて実力が出せないことほど愚かしいことはありません。NIKEの広告のコピーであった

"JUST DO IT"
なのだと思います。

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