ジャズが大衆化しない理由について私が聞いたことと考えたこと

ジャズ。アメリカでも最早音楽売り上げシェアの1%歩かないかの状況です。アメリカンオリジナルアートフォームなのに。日本では至るところでBGMとかで使われたりしていますが、ライブの現場で頑張ってる人の名前をあげられる人はほとんどいないのではないでしょうか。まぁ考えてみればクラシックだってそんなに大きなシェアはないし、民謡や小唄や端唄も一部の好事家のものになってしまっているように見えます。2010年にLAからトランペッターのCarl Saundersを招聘してクリニックをやった時の彼の見解が納得のいくものでした。曰く

「ジャズは聴衆にも知性を要求する」と。

この時彼はリズムとグルーヴの話をしていたのですが、他の西洋音楽に比べるとジャズはビートが見えにくい音楽です。2-4でスネアを叩いたり1拍目の頭にベースドラムを踏むようなこともほとんどなく、インタープレイが多いので他のジャンルに比べるとちゃんと聴いてないと乗れない音楽なんです。カールは中国の水攻めの拷問(同じピッチで額に水を垂らしてると発狂しちゃうってやつ)を引き合いに出しながらグルーヴの重要性の話をしつつそんなことを言いました。考えてみれば20年くらい前に流行ったヨーロッパ発のいわゆる日本でクラブジャズとカテゴライズされたスタイルは、リズムセクションのインタープレイを廃して連続するパターンとし、バスドラムを4つ打ち(ディスコやハウスと同じ!)にするなどビートのわかりやすさが前面に出たものでした(もちろんウエストロンドンのブレイクビーツみたいなのも同時進行してたけど)。

まぁそもそもジャズという音楽自体、アメリカのオリジナルアートフォームとは言われているものの、その誕生と発展はアメリカの被差別民族が中心になってなされたものなんですよね。黒人が主体でしたが、白人系の音楽家も非WASPであるロシア,ドイツ系とかユダヤ系とかです。政治経済を仕切るWASPの存在がほとんど見えないんです(白人の差別階級も結構はっきりあって、だからこそアイルランド移民系のケネディが大統領になったことは当時非常に大きなことだったはず)。ガーシュウィンやポーターやバーリンといったスタンダードを多く残した作曲家もロシア系民の人々でした。そしてやはり聞き手に知性が要求されるからかどうか、やはりジャズの愛好家にはインテリ系が多いのもまた事実なのです。ビル.クリントンみたいに趣味でジャズを吹く人もいるし、FRBの議長だったアラン.グリーンスパンは戦時中はジャズバンドにいて(録音あります)スタン.ゲッツと一緒に吹いて音楽をやめて金融経済の道に行った人もいたりします。この辺りはヨーロピアン.クラシカルミュージックとは違うちょっとしたねじれを感じます。

日本といえば、1970年代に一億総白痴という言葉が生まれてから数十年、特にこの20年くらいの反知性派みたいなのの台頭が見られるわけですが、その中で聞き手に知性を要求するジャズが拡大するのか?というとこれまた非常に厳しい状況なんだろうなぁ、とは感じています。でも他にできることがないので地味に続けるつもりですが。

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