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終末の麻雀譚4

荒廃した世界で麻雀牌を見つけた少年たち。
ついに麻雀という遊戯に触れる──

第7話

麻雀の始め方はなんとなくわかった。

ムサシ、コジロー、トム、シェリー。4人の心は一つだった。

『ルールなどの記憶はトムまかせ』

これである。トム自身もそう思っていた。

「あまり時間がない」そう言っていた髭のおっさんに聞けるだけ聞いておかねばならない。

「次はどうするんだ!おっさん!」

ムサシが言った。

「私が1枚捨てるのよね。確か」

シェリーの手牌はこうだった。

一五七九②④⑦123459東

「一番要らないと思うものを捨てていくわけだが、どれだと思う?」

髭が問う。

「これ?」シェリーは東を手に取った。

「あー、たしかに要らない気はするな。でもさっきも言った通り、親には東という風牌が振り分けられてる。東が揃うと点が高くなるんだ。」

「つまり役になるってこと?僕の場合は南。ムサシが西でコジローが北?」

「そうだ。君はホントに飲み込みが早いな。ちなみに今言ったのは自風牌。他にも場風牌というものがあって、これは全員『東』になるんだ。」

「もしかして親は2つともつくの?だとしたら大事にした方が良いかもね。」

「そう。東がダブルで通称ダブ東だ。ちなみに一般的なルールでは親が2周したら終わり。1周目が東場で2周目が南場となる。」

「わかった。親はどうやって終わるの?その次の親は?」

「親番は『子供のアガリ』もしくは『流局時ノーテン』で終わる。そして親番も左回りに流れていく。」

「なるほど。『流局時ノーテン』っていうのは?」

「これは後で説明しようと思ってたんだが、親が取り出した所から14枚を必ず残すルールなんだ。だからその手前まで行ったらその局は終了。流局となる。その時に『テンパイ』つまりあと1枚でアガリの状況だったら親は続行できて、そうじゃない『ノーテン』なら終わりってことだ。」

「ノーテンパイってことか…」

髭とトムでずいぶん話してるが他の人間はさっぱりだった。

「コジローわかったか?」
ムサシは自分はわかってる風に尋ねた。

「ああ。つまり俺は北風ってことだよな?」

「そう。俺は西風だ。」

髭のおっさんは続けた。
「んー、手役を早めに教えた方が良い気もするが、とりあえずアガリ形を作る練習した方が良いよな。ごめん、やっぱり東から切ってみようか。」

シェリーは言われるがままに東を切った。

「次は僕の番だね。ここから取るんだよね?」

トムの手牌
三五五五八②③⑧⑨14東  ツモ南

「コレでいいよね?」トムは東を指差す。

「そうだな。すでに1枚切られてるし。他に何が要らないかはついでに考えといた方が良いぞ。」

トムも東を切った。

次はムサシ
二二七八①①⑥⑥⑧⑧248  ツモ①

「あっ。」

どれどれ、と髭。

「おー。いいじゃないか。要らないのはどれだ?」

「えーっと、これか?」8を手にした。

「そうだな。でも次は難しいかもな~」

ムサシは8を切り、手牌に目を落とした。
二二七八①①①⑥⑥⑧⑧24

次・・・?確かに。これどうするんだ?
というか13枚でも結構揃うもんだなぁ。

「次は俺だな!よいしょ!」

コジローの手牌
九②④⑤⑦⑨579北白發中  ツモ六

「なんだよこれ!要らないの多過ぎてわかんね!」

「うん、確かに悪いな(笑)。でも配牌が悪い方がツモが良く見えて楽しかったりするんだ。沢山ある要らないものを処理してたら良い感じになるさ。直感で何か切ってみるんだな。」

「じゃあこの何も書いてないやつでいい?何にでもなる訳じゃないよね?」

「この何も書いてないやつは白。本来は真っ白な牌なんだ。字牌は東南西北の『風牌』と白發中の『三元牌』に分かれる。三元牌はすごいぞ。自分の風が何だろうと役牌になるんだ。」

「え?じゃあ大事にした方が良いってこと?」

「そうだなー。でも1枚ずつ持ってても効率悪いから、勘でどれか切っていいと思うけどな。思うって言ってるのは次に何が来るかわからないから、正解というのは難しいんだ。切ってしまったものをまた引いてしまうこともよくある。これは麻雀の性質上仕方ないんだ。それでも役牌が被るのが嫌だったら、九を切る方法もある。」

「九?数字は字牌よりも繋がり易いから大事なんじゃないの?」

「僕、なんでかわかったよ」

トムが入ってきた。

「これって六を持ってるからじゃない?九に繋がる八とか七を持って来ても、六があれば無駄にならないもんね。」

トムは目をキラキラさせている。

他のみんなは「ほほぅ、確かに」と頷くばかりだった。

「で、結局何切るのが一番良いんだ?」

「それは自分の切りたいやつを切るんだな。実際八も七も持ってきた時に六七八九って持ってると嬉しいケースもあるから、九切りが良いとは一概に言えない。」

「もう!絶対的な正解はないんだから早く切ってよ!先に進めないよ!まずは進行を覚えないとでしょ!」
トムはウズウズしている。

「じゃあ勘で。」

コジローは白を切った。

さて親のシェリーの番に戻るが、ここからはおっさんの指示に従いながら離れてる牌を整理していく面々。

しかし好配牌のムサシだけがツモ切りを繰り返していた。

「俺だけ何も良いのが来ないよ!みんなは色々入れ替えてるのに!」

「これも麻雀の面白い所だな。手が進めば欲しい牌も限られてくるから、配牌悪かった人間が追い付けたりするもんな。」

「おじさん、こうなったけどどうすればいい?」

シェリーの手はこうなった。
五六七②④12334589  ツモ9

「そうだなぁ。練習がてらリーチしてみるか。」

「リーチ?」

「実は麻雀っていうのは役がないとアガれないんだ。この『役』っていうのを理解するまでが結構ハードル高いんだが、幸い君たちは自分たちでやってた遊びで『役』の概念がわかっている。そして何も役が出来なくても、この『リーチ』というものが役になるんだ。」

ついに核心に迫ってきたような気がしている4人。
静かに髭の言葉に聞き入っていた。

「それでリーチの手順なんだが、自分の手がテンパイしたら『リーチ!』と発声して捨てる牌を横に置く。そして1000点棒を供託に…ってあー!そういえば点棒がないな…。麻雀は点棒のやり取りをするゲームだからこれは用意しないとな。まぁ石でも木の棒でも何でもいいが。」

一旦麻雀を中断して点棒に代わるものを探しにいく4人。果たしてリーチを理解することは出来るのか──

〈現在の知識〉
自風牌・場風牌・三元牌・・・役牌。集まれば嬉しいらしい。
リーチ・・・役がない時に役を作ることが出来るとっておきの技。

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