終末の麻雀譚11
荒廃した世界で麻雀に出会った少年少女。
まだまだ初心者。打ちまくるだけであった。
第14話
「今日はこんぐらいにしとくか。」
モーさんが去って3日目の夕方。
ムサシの言葉でみんな片付け始めた。
「さて、今日思ったことあるか?」
自然と暗くなり始めると麻雀をやめ、その日思ったこと、考えたことを話し合うようになっていた。
「コジローは待ちの悪いリーチが多いよね。」
トムが指摘した。
「だって役が無いんだからしょうがないじゃん!結構アガれるし!」
「あーそれは俺も思ってたなー。確かに意外とアガれてるけど、テンパイ即リーチってどうなんだろうね?」
ムサシが続く。
「変化が無いとか少ないとかなら分かるんだけど、もったいない感じのも多い気がする。」
「待ち悪いのに追っかけリーチしたりしてるよね。」
「それで意外と勝っちゃうんだからイラっとしちゃうのよね。」
コジローのリーチ攻撃に一同は不満の様子。
どうやら今日のテーマは「愚形リーチについて」に決まったようだ。
「でもよー。役が無い時にアガリ牌出てくるの嫌じゃね?」
「もちろんその可能性はあるよな。でもお前役ありでもリーチしてくるよな。」
「だって裏ドラみたいじゃん?」
「結局それじゃねーか!つーか別に俺らもリーチを否定してるわけじゃないよ。」
「まぁそういうスタイルって言ってしまえば話は終わっちゃうんだけど、みんなでもうちょっと考えてみようよ。リーチのメリットデメリットを。」
「リーチにデメリットなんか無いだろ。」
いつの間にかコジローはリーチ信者だ。
「いや、そんなことない。デメリットは存在する。」
トムは言いきった。
「ええ?じゃあ言ってみろよ。」
「姉さん、リーチのデメリットって何だと思う?」
トムは急にシェリーにふった。
「え?アタシ?うーん…手牌を変えられないことかなぁ?」
「テンパイしてるんだから変える必要ないだろ!」
コジローの意見は雑だがシンプルだ。
「そうだね。やっぱりそれもデメリットだよね。悪い待ちでリーチして、追っかけリーチされたら大体負けるはずだもんね。」
「んなことねぇよ。気合いで勝つ!!」
「あとは単純にアガりにくくはなるよね。」
気合い論は無視した。
「確かに安全な牌がある時はそれ切るもんなー。シェリーなんか自分の手すぐやめちゃうよな。」
「姉さんはオリすぎだと思う。自分都合で切っていってもそんなに当たることないよ!コジローのリーチなんか大体待ちの種類少ないし。」
「うっせ!それでもアガれてんだろ!」
「ほんとコジローはよくアガれてるんだよなぁ。」
コジローのアガリ率に関しては誰もが認めていた。
本当に気合いが牌に影響してるんじゃないかと錯覚するほどに。アガリへの嗅覚が優れているのか・・・?
実は全員がじっくり手役を作ったり良い待ちにしたりしようとしていると、先制リーチ(先制テンパイ)がどうしても強い。なぜならアガリ抽選を受ける回数が違い過ぎるからだ。リーチを受けてオリたり回ったりしてくれればなおさら強い。
別にそんなことを考えている訳ではないが、コジローはこの戦法になっていた。
「コジローみたいにどんどんリーチした方が良いのかなぁ?」
シェリーが言った。
「いやぁそんなことないと思うけどなぁ?」
トムはそう答えたが、自信や確信があるわけではなかった。
「ほら君たち、もっと単純に考えればいいんじゃないかい?リーチをすると役が出来る・点数が増える・裏ドラが見れる。これだけで理由は充分じゃないかい?ん?」
丁寧口調のコジローほどムカつくものはこの世にない。
「ぐぬぬ…。今日のところは何も言えねぇ。でもな、上手く言えねえけど、俺の魂が『麻雀はそうじゃねえ!』って言ってんだ。必ず見返してやるからな!」
ムサシはビシッとコジローを指さした。
コジローはやれやれといった感じで余裕の笑いを浮かべている。
「僕もコジローのやり方には負けたくないなぁ。でも悔しいけど一番アガってるのはコジローだもんね。なんとか対策を練らないと。」
数字なんかに強いトムでも、理由が分からずモヤモヤしていた。愚形ばっかなのに何故アガれるのか。
そう。コジローの戦法は相手次第ではかなり有利になるということを、この時はまだ誰も分かっていなかった。
コジローですら。
しかし感覚的にこの戦法を否定するムサシとトム。
まさかのコジローがリードする形となったが、それにより皆は燃えていた。
いいぞ!本当の意味で切磋琢磨するんだ!
〈現在のみんな〉
コジロー・・・愚形だろうとテンパイ即リーチ。よくアガる。
シェリー・・・安全牌がある限り中抜きしてでもオリる。
トム・・・鳴き封印中。
ムサシ・・・仕切り屋だが特記事項なし。
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