大補強に打って出たオフシーズン エルゴラ浦和担当、沖永雄一郎さんと議論してみた(選手評価と3トップ編)

<全3回中の2回>
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浦和レッズの2023シーズンが終わり、24シーズンが始動しました。浦和は今季も「2023シーズンの振り返りと2024シーズンに向けて」という総括を発表しています。今回も残念ながらこの総括に関する質疑応答などの取材機会はなかったのですが、サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」で浦和を担当する沖永雄一郎さんと総括を読み解きながら話をしていきます。

前回の23シーズン振り返り部分を前編とし、この24シーズンへの展望を後編とする予定でしたが、ペア・マティアス・ヘグモ新監督の就任やフィールドプレーヤーだけで11人が新加入という大補強もあり、あまりにも話が尽きずに超長編となってしまいました。そのため、クラブが打ち出した方針や昨季を踏まえた選手の評価をどう考えるか、そして4-3-3の採用を明言するヘグモ新監督による3トップがどうなっていくかを中編とし、中盤から最終ラインにかけた部分を後編に分けさせていただこうと思います。約1年前の沖縄キャンプから年末のクラブ・ワールドカップ(CWC)まで取材した中で、クラブの狙いが垣間見えた言葉や動きも紹介していきます。

※文中で敬称を省略します。

沖永雄一郎(エル・ゴラッソ浦和担当)
山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』の浦和担当に。
https://twitter.com/RMJ_muga

轡田哲朗(フリーランス)
埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。https://twitter.com/tetsu11k

チームへの貢献度と、数字として残した実績の捉え方

轡田 クラブからは、2023シーズンの課題からの補強方針としてポジションの意味でも明確な指針が示されました。そのうえで、全体的な継続性は担保するというメッセージもあります。僕は、この補強方針が出た時点での文面にはかなり納得しました。正直なところ、23シーズンを戦った2列目から前の選手では、新シーズンに向けた戦力として説得力のある数字を残したのはホセ・カンテだけだったでしょう。そんな彼が現役を引退してしまいましたから、攻撃陣の大幅刷新への動きは自然というか、仕方ないという感覚がありました。

「チーム作りに関しては攻撃陣の強化が急務であり、最優先課題となります。具体的には、J1リーグで得点王を目指すことのできるストライカーと、年間10得点以上取ることのできる2列目の選手の獲得を目指します」とされたわけですが、沖永さんは23シーズンの陣容、主に攻撃陣の評価を踏まえてこの部分をどう捉えましたか?

沖永 リリースが出る度に『ずいぶん獲るんだな』と驚いていました。昨季の2列目~前線の物足りなさをどこまで個々に背負わせていいのか、という問題はありますが、より数字と順位を上げていくためにはこれくらい必要という判断なのでしょう。特に、今季は[4-3-3]で戦うということなので、同じサイドアタッカーでも求められる役割が微妙に変わってきます。そういった細かいことを抜きにしても、安定して優勝争いを目指すのであれば好選手を越えた『反則級』が求められるわけなので、既存選手にはっぱをかける意味でもいいストーブリーグになったのではないでしょうか。相対的に優勝候補に押し上げられそうな充実した陣容と言えますが、細部を見ていくと不安もあり、ちょっと様子を見てみようという感じですね。

轡田 人数で言うと、期限付きからの復帰や正式なトップ昇格など契約形態は考えず、昨季に浦和でプレーしていなかった選手という意味で新加入選手が11人います。ここにGKを足したら1チームできますし、何だったら1人余ります。西野努テクニカル・ダイレクター(TD)は「今年に関して言うと、少し結果を出すために振れたといいますか、動いたところは事実あると思っています」と話していました。ただ、入ってくる選手が多いということは同じくらいの選手がチームを去ったという側面があり、入れ替わりの激しさも特徴です。大雑把に言って、平均的なシーズンの2倍くらいの選手が入れ替わったと言えるかもしれません。西野TDが「大きな方向性に特にブレ、変化はないです」としましたが、この大量入れ替えを全体的に見てどんな印象がありますか?

沖永 長くJ2を中心に見てきたので、20人くらいじゃないと驚かないような麻痺をしていますが、確かに入れ替わった人数は多いですよね。ただ、惜しい人材はたくさんいますが、アウトで昨季の主力と言えるのは荻原拓也と明本考浩(未確定)、引退したカンテくらいで、一方のインは昨季のレギュラーを喰えそうな選手が多くいます。全体的には戦力アップを果たせていますし、強引な印象はそれほどなく、健全な循環と言えるのではないでしょうか。今季の大会数からすると過剰にも見えますが、25年のリニューアルされたCWCを一つのチェックポイントと考えれば動く人数が多くなったのも納得がいきます。

轡田 補強ポイントに挙げられた攻撃陣から話をしていくと、例えば昨季のレギュラーでいうと大久保智明のような選手をどう評価するかということになってくるんですけど、約1年前のプレシーズン時点で彼は、ダヴィド・モーベルグで右サイドは埋まっているのでトップ下でも試してみようかという扱いに見えるところがありました。ただ、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)絡みの外国人枠や様々なことに起因して起用回数が増えて、結果的にリーグ30試合に出場するに至りました。そして、良い働きをしたのも事実でしょう。攻守をつなぐプレーもあれば、相手ボール時のポジショニングも忠実でサボらなかった。ただし、数字から残った事実は2列目で30試合に出て1得点というものです。

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