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Q.柔道のシニア階級に50kg級は必要か?

質問箱に送られてきた質問に答えるシリーズの第1弾として、前回は「大学で柔道を続けてきて何を得られたのでしょうか?」という記事を書きました。お陰様で色んな方から好評の声を頂き(心が折れずに済んだため)、シリーズとしてできるところまで書いていければと思います。

ということで以下本文です。


質問

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体が小さくて60kgに全然満たない人って世界にゴロゴロいるし、シニアでも50kg級を創設すべきだと思うんですが沼田さんの見解はどうでしょう?

ざっくりと印象

柔道の階級については時々SNSでも議論になることがあります。特に少年柔道の階級については年に1回は必ず目にしますし、僕自身、自分の意見を上げることもありますが、シニアの階級についてはあまり触れられないように思います。なので、非常に興味深い質問だと思いました。

以下回答になります。


50kg級よりも先に

柔道の階級は階差数列という規則に基づいて決定されています。

男子の階級の場合は、最も階級の軽い60kgから「5」、「6」、「7」、「8」、「9」というように、1ずつ体重差が増えています。
女子の階級も同様に、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」といった具合です。
柔道の体重区分は、何階級作るかという問題とともに、「階級差と体重の比率」を加味して設定されています。
この時、例えば5kgずつといった一定の決まった体重を加えていくのではなく、体重の比率で決めたほうが合理的であるという考えに基づいているのです。
この体重差を考慮して調整された階級が、体重差による階差数列です。

引用:スポーツなんでも情報クラブ

現在のシニアの最軽量階級は男子が60jg級、女子が48kg級です。質問者さんの意見としては、「男子の階級であれば60kgよりも下の階級をシニアにも作るべきだ」ということだと思いますが、だとするならば階差数列に基づいて50kg級よりも先に55kg級の創設をする方が現実的だと思います。

中体連・カデ・ジュニア階級

シニアは前述のように男子であれば60kg級が最軽量級ですが、現在のカデット(17歳以下)の部門では最軽量階級は55kg級となっています。またとジュニア(20歳以下)部門では、2018年までは55kg級が実施されていましたが、2019年からは廃止され60kg級が最軽量級となっています。

中体連が主催の中学総体(全中)では男子は50kg級が最軽量階級となっており、100kg級と100kg超級は存在せず90jg超級を含む8階級が実施されています。

2014年まではカデット部門でも50kg級は実施されていましたが、2015年からは50kg級は廃止され、55kg〜100kg超級の8階級で試合が行われています。

55kgが適正階級の選手とは?

世界ジュニア選手権の55kg級と60kg級にエントリーしている選手の人数を比較すると以下の通りになりました

2016年
55kg級19人 60kg級29人

2017年
55kg級32人 60kg級47人

2018年
55kg級26人 60kg級38人

と、上記のように55kg級が60kg級よりも多いエントリー人数になったことはありませんでした。

また、55kg級が廃止された2019年大会では60kg級のエントリー人数は45人となり、55kg級が廃止されたことによるエントリー数に大きな変動は見られませんでした。(もっとも、各国・地区ごとでの代表選手のエントリー人数に制限があることが大きな要因であるため55kg級の廃止による影響はほぼ無いと考えるのが妥当です。)

55kg級の選手はどこから出てくるのか

仮にシニアカテゴリに55kg級を追加したとして、そこにエントリーする選手はどこから来るのでしょうか。

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