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Q.大学まで柔道を続けてきて、何を得られたのでしょうか?

僕の生活の中で欠かせないツールの一つにTwitterがあるのですが、その中で日課になっているのが匿名からの質問に自由に答える質問箱という外部サービスです。実は過去にこのサービスで大炎上したことがあるんですけど、今だに楽しくて使っています。

そんな質問箱にTwitterの文字数上限の140文字では足りない回答を要する質問がちょくちょく送られてくるので、そういう質問にはnoteにその回答を書いていこうと思います。今回はその第一回です。

(ちなみにこの1年弱でまたもや人生計画が狂ったのでnoteに全く手をつけてなかったんですが、またもやいい感じに追い風が吹いてきたので再会するきっかけでもあります。やっぱり上手くいってないときは何やっても続かないですよ!!)


質問

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私は学業を捨てて大学生の今まで現役を続けてます。しかし、よくよく考えたり調べてみたら「柔道で飯食うってほぼ無理。実は人生においてあまり具体的なメリットが無い」って事実を知ってしまいなんかゲンキンな話ですがモチベかがダダ下がりしました。

高校で結果残してもほとんどの確率で良い大学に入れる訳でもない、仮にB強化クラスになってもサラリーマンと同じくらいの待遇か、下手するとそれ以下。就職だってとりわけプラスになる訳でもない。むしろ柔道の上位0.1%になるより、学問で上位10%の位置にいた方が有利なくらい。こんなんならちゃんと青春を調歌したり、割と好きだった学問に打ち込んでおけはよかったななんて後悔の気持ちが湧いてきます。

親や周りに流されて、まるで柔道を続けてたら人生薔薇色みたいな催眠にかけられた様に、思考停止して歯を食いしばって今まで続けてきました。

この気持ちを柔らかく周りの大人に話すと100%返ってくるのが「精神が鍛えられた」みたいな超袖象的な「メリット」を得られるという答えだけ。聞き飽きました。

「プロ」が存在しない柔道を続けてきて、私はー体何を得られたのでしょうかね。。長文失礼しました。


ざっくりと印象

まあまあしっかり目に重い質問でした。

大学まで柔道を続けたはいいけど、その先が見えない。柔道で頑張っても就職で有利になるわけでもなく、時間を浪費しただけな気がする。いったいこの学生生活は何だったんだろう。

ざっくりまとめるとこんな感じかと。

大学スポーツ

まず、個人的な話をすると僕は大学で柔道部に入っていたわけではないし、特段目立った成績を残したわけではありません。その点をご理解ください。

柔道の推薦で入学した学生にとって、柔道部という肩書きが重荷にもなるし、その先へのパスポートになることもあります。

そもそも、スポーツ推薦で、特待生として入学するということは、個人的にはプロと同じ待遇と責任を持っていると思っています。「受験」「入学金」「授業料」などの本来は然るべき手続きを踏んで行う試験や大学に支払うべき対価を、大学の看板として活動することで免除という恩恵を受けることは、金銭を享受しながら競技を行うプロとさほど差違はないと思います。

部活が優先でプライベートがない、ほかに挑戦したいことがあるのに時間や機会が失われる、そもそも学業に専念できない。というデメリットを部活を行っている学生からよく聞きます。

確かに部活に所属していない学生からすると時間や金銭の面で余裕がない学生アスリートは多いです。一方で、その大学に普通に入学してきた学生は入試を受けて入学をしてきました。スポーツ推薦のように「どの学部をどの入試で受ける」といった取り決めを事前に行うことをせずに受験勉強をして入学しました。推薦で入ってきていない学生と比べるのであれば、その点をまずは忘れてはいけません。入試が免除、もしくは同等の待遇を受けていたのなら、その時点では他の学生が持っていなかったパスポートを持った状態だったはずです。

ものすごく残酷なことを言ってしまうと、1日数時間の練習と大会での好成績を4年間行い続けることがスポーツ推薦です。その対価として通常よりも緩い条件での入学や入部が許されています。もちろん競技が好きでやっている学生や、そもそも大学から奨学金という形で上記にプラスして金銭を受け取っている学生もいます。享受するものが違うだけでプロに近い形であることは明白です。

このシステム自体は僕は全く問題だとは思いませんし、アメリカのNCAAはさらに大きなお金が動く一方で勉学の面で成績を残せなければ競技を続けられないというルールが明文化されています。「学業がおろそかになる」といえる日本の方がまだ緩いです。

しかし、問題もあると思います。それは後述。

沼田の大学生活

僕は母校の大学の柔道部から「入部すれば〇〇学部に入れてあげられるよ」とお話をいただいたことがあります。学部は自分の希望する学部でしたが、自分自身高校での成績のなさや、柔道部との相性、そして柔術やMMAといった格闘技がやりたかったこともあり、お断りして別の学部に公募推薦入試で入学しました。

結果として、その判断は9割正解だったと思っています。

地元から通うのは大変でしたが、格闘技に没頭できて、海外での試合を自分でアテンドして出場して、それが後のホンジュラスでのコーチの話に繋がっていきます。

格闘技が好きだったからこそ自分でスケジュールを立てて自分のペースで練習できたことは気持ち的に余裕ができる要因でもありました。柔術で上手くいかないときは柔道の試合に出て、指導法を学び、海外で実践することは部活に所属していたらできなかったと思います。

他方、「大学柔道部出身じゃない」という理由で海外のクラブとの交渉を打ち切られた経験もあります。遠征に行くのにももちろん公欠ではなく欠席扱いです。学費もすべて納入しました。これが1割の後悔です。柔道部に入っていれば・・・と思うことも多少ありました。

それでも自分で推薦を受けずに入試を受けると決めたので、その点はしっかり受け止めることができました。

回答

ここからしっかり回答していきます。


高校で結果残してもほとんどの確率で良い大学に入れる訳でもない、仮にB強化クラスになってもサラリーマンと同じくらいの待遇か、下手するとそれ以下。就職だってとりわけプラスになる訳でもない。むしろ柔道の上位0.1%になるより、学問で上位10%の位置にいた方が有利なくらい。

この意見については半分は間違っていないと思います。

そもそも偏差値で見れば「良い大学=柔道が強い大学」が当てはまるかというとそんなことはなく、男子柔道で言えば東◯大も筑◯大も強いですが偏差値に開きがあります。こればっかりは高校の時にいかに自主的に大学のリサーチに取り組めるかだと思います。それは生徒の責任でもあるし、監督やコーチのフロント活動も関わってきます。

柔道が強くなっても就職に影響が出ないというのは、希望の進路にもよると思います。大学スポーツにしっかり取り組んできた事を評価する企業もありますし、全然専門外で「仕事ができれば何でもいい」という企業もあります。

個人的な話をすると、僕は1社だけ面接を受けました。フィットネス関係の企業ですが、元々外部委託という形でクラスを請け負っていた企業だった事もあり、割とすんなりと就活が進んだ気がします。

最終的にホンジュラスでのナショナルチームからオファーが来たのでそっちを選んだのですが、結局企業の方は僕の大学時代の実績に関係ないし、ホンジュラスは間違いなく大学時代の指導と試合の実績を買ってもらいました。

柔道と相性の良い会社は探せばあるはずです。言ってしまえば警察の試験も段を持っていれば加点が入りますし、OBとのパイプが使えるのも大学の部活ならではではないでしょうか。

もちろん勉強はするに越した事はないですが、そもそも「練習があるから授業に出ない(出れない)」は前述の通り義務を果たしていないので論外です。すごく厳しい言い方ですが。もしも部活の雰囲気や指導陣が「授業より練習」というような風潮・論調なのであれば教育機関として失敗しています。


こんなんならちゃんと青春を調歌したり、割と好きだった学問に打ち込んでおけはよかったななんて後悔の気持ちが湧いてきます。

多分ですけど、卒業してからも後悔はし続けると思います。ですが、大学時代に楽しく4年間を過ごしてきた人も、社会に出れば程度の差はあれ同じように後悔するという事をたまに耳にします。僕もその1人ですし。

そもそも「青春」という曖昧なものを実感できる人ってそんなに多くはいない気がします。部活一筋で毎日先輩や監督にしごかれまくって半ベソをかきながら必死に食らいついてた学生時代を「青春」と呼ぶ大人は沢山います。僕も高校時代は柔道で成績が出ずに死ぬほどキツイ状況に追い込まれながら3年間を過ごしましたが、大学に入ってすぐに思ったことは「高校の時みたいに寮生活がしたい」という懐古的な事でした。結局その瞬間を切り取ってしんどい思いをしていると感じていても、時間が経つと嫌な思い出は少しずつ薄れて、いい思い出は補完されていきます。

もっとも、毎日そこそこに勉強してアルバイトをして遊んで飲んで恋愛するのも悪くないかもしれません。ただ、僕が大学時代をやり直せるとしてもしっかり競技をやり通すと思います。それも結局補完された記憶から来ているのかもしれませんが、僕の青春はそういうものだった気がします。

学問に関して言うと、授業に真面目に出て、ゼミに入って真面目に研究していればそこそこ納得いく程度には結果が出ると思います。ゼミは他のゼミ生との兼ね合いがあるかもしれませんが、先生を少人数で独占できる数少ない機会です。興味のある分野であれば積極的に質問したり自分で論文なり書くこともできます。

優等生っぽい意見に聞こえるかもしれませんが、僕は大学生の時に学部関係なく興味のある先生にくっついて色々と話を聞かせてもらっていました。それは卒業した今でも続いていますし、多いと月イチ、少なくとも2月に一回はゼミの先生の研究室に足を運んでいます。(ちなみに7月に行ったときは4時間くらい話し込んでました。)

そして、具体的な進路をおすすめすると、大学院に進学してください。「学問が好き」と自分の意志で言えるのならば自信を持っていいと思います。僕も大学院進学をついこの間まで考えていました。諸事情で無くなりそうですが。

そこまでの頭がないというのであれば、それこそ大学の先生に話を聞く事をおすすめします。通っている大学のランクが納得のいくものでなかったとしても、先生方の殆どは博士号か修士号を持っています。院進を検討するのであれば先輩に当たる人たちです。

もしも今の自分の立場だったり学歴だったり将来だったりが不安であれば、迷うことなく大学院をおすすめします。これは僕が選ばなかった進路なので理想や希望が入った意見かもしれませんが、今悩んでいるのであれば検討する余地はあるのではないでしょうか。


親や周りに流されて、まるで柔道を続けてたら人生薔薇色みたいな催眠にかけられた様に、思考停止して歯を食いしばって今まで続けてきました。この気持ちを柔らかく周りの大人に話すと100%返ってくるのが「精神が鍛えられた」みたいな超袖象的な「メリット」を得られるという答えだけ。聞き飽きました。

これは前述の「問題」の部分なのですが、正直言ってしまうと高校の時に大学という施設と環境を理解できていないで進学先を選んでしまうと後悔する可能性が高くなる気がします。

確かに日本であれば入学できれば大卒という資格を得るのにさほど大きい労力は使わないように思われています。真面目に授業に出て単位を取って、必要であれば卒論を書けば大方の学生は卒業ができます。つまり、入試さえ受かってしまえば大卒になれる(可能性が高い)と思われているわけです。

ならば柔道で進学して、入試を楽にパスして大学に入れてあげたい。これは大人からすると親心です。高校で柔道ばかりやっていて勉強はそこまでできないだろう。だったら少しでも楽に大学に入れるようにアドバイスをしてあげる。という発想です。

しかし、あくまでも高校生相手のアドバイスです。大学に入ってからの具体的な勉強の仕方や進路の決め方なんてものを話す大人はほぼいません。せいぜい「教職を取れば教員になれる」「公務員になれば高卒よりも給料が良いぞ」くらいです。「じゃあ電通に入るためにはどうすればいいですか?」という質問を想定してませんし、高校生もそんなことは考えていません。

みんなリサーチ不足なのです。大人も極論でいうと自分のことではないので「いい監督の元に教え子を送りたい」という1年先の気持ちはあれど「いい大学に送っていい就職先を見つけてほしい」という4年先の気持ちは持ち合わせていない事が多いし、柔道部の情報は調べていても、その大学に柔道関係者以外にどんな教授がどんな授業を持っていてどんな所に就職できるかなんて調べてません。

ですが、これは本来大人もですが高校生も調べることです。パンフレットを取り寄せていろんな大学と比較して、授業についてネットで調べるくらいはできます。しかし、それを誰もアドバイスをしてくれない環境にいたのならば、これは運が悪いとしか言いようがありません。柔道部の先生が分からないのであればOBを招いて小規模の説明会を開くなりするのが個人的には親心だと思うのですが、そんな余裕はないのでしょう。なぜならば柔道をやっていれば幸せですから。

あと、精神を鍛えられるというのはあながち間違ってませんが、それはメリットではないです。精神力が鍛えられるのは他の体育会系でもそうですし、バイトでも鍛えられます。就職面接で5人並んで「精神面が鍛えられた」と全員がアピールしたら、その先は不幸自慢と理不尽自慢の比べ合いです。そんなネガティブな経験をアピールされても、僕だったら全員薄気味悪くてバイトでも採用しないです。気持ち悪い。

僕が思うメリットは前述の通り「OBとのパイプができる」や「公務員試験で多少有利になる」こと、そしてアマチュアスポーツとしての日本一になるための試合にチャレンジできることだと思います。

僕は大学で柔道部じゃなかったので「学生の」試合にはもちろん出れませんでした。でも、オリンピックや世界選手権を目指すため、日本一を名乗るためには学生の大会はほぼ必須です。となれば、出場資格を得てチャレンジできるのは身分的な特権だと思います。そしてその試合で勝とうが負けようが、僕のようにチャレンジできなかった・しなかった人間がいる中で畳に上がったのですから、そこは胸を張っていいと思います。


「プロ」が存在しない柔道を続けてきて、私はー体何を得られたのでしょうかね。。長文失礼しました。

何が得られたかは自分自身で決めることなので僕が判断できることではないのですが、言えることがあるとすれば「大卒の資格を手に入れられた・手に入れられる」ことが一つと、「大学院入学の試験を受ける権利を手に入れた」ことではないでしょうか。

それは柔道を続けて今の大学に入ってそれなりに授業についていけて「学問が好き」と言える状態であるからです。これが身分不相応の大学で柔道も結果が出なくて授業も全くついていけない状態だったら「学問が好き」なんて言えない気がします。だったら「どこでもいいから早く就職したい」と現状からの脱出を図ろうとするはずです。そうではなくて、現状に満足が行かずにステップアップしたいという意思が質問文から見て取れます。ということは、今自分が持っているカードを改めて整理して手札を揃える段階に進むべきだと思います。

余裕がない、もしくは向上心がなくてそれすらもできない人がいる中で「このままじゃマズイ」と気づけているのであれば、今の自分の状況を把握して次の一手を打つことができる冷静さを持っているはずのなので、その一手を得たという事ではないでしょうか。

会ったことのない方なので曖昧なことしかいなくて申し訳ないのですが、このnoteで少しでも心に余裕が持てればと思ってます。

そして是非この詩を読んでもらえればと思います。

「道」

この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる
迷わず行けよ 行けばわかるさ

アントニオ猪木



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