共通テスト 国語 文学的文章は妄想禁止!

 文学的文章では、これまで小説が出題されている。最終的には、共通テストの4分野の中で、この小説が一番やっかいなものになる(実用文はまだ実施されていないので、ここでは外す)。受験勉強をしっかり進めていくと、小説の点数を保持することが、いかに難しいことかを実感してくる。

 戦う相手が自分自身になるからだと思う。その理由と、その勝負に勝つためにはどういう手段をとればいいのかについて書いていこう。

 小説には、二つの読み方がある。
 まずひとつは自由な読書、楽しみとしての読書だ。私たちは文字を読むことで頭の中に情景を組み立て、その作品世界に浸る。それは本当に楽しいことだし、もちろん悪いことではない。ただ問題は、そこで行われている「読み」が、どこまでも個人的な「読み」であるということだ。そこには、「個性的な読み」が存在するし、「読み」の根拠は個性に依っている。どの読みも間違いではないし、そこでの自由は担保されている。ただ、その読みを根拠にしていたら、小説の問題などはできない。どんな答えでも正解になってしまうからだ。

 なぜ「個性的な読み」が生まれてしまうのかについても説明しておこう。私たちは言葉を共有している。誰かが発した言葉を、文字通りに受け取る。だからといって、それによって2人が同じ認識に立てるわけではない。話し手が「赤」と言い、聞き手が「赤」をイメージしたとしても、その「赤」は決して一致しないのだ。それは、私たち一人ひとりの持っている「こころの(言葉の)辞書」の定義が、それぞれ違うからだ。
 そのうえ、一人ひとりが異なる生育歴を持っている。「デート」という言葉にどのような雰囲気、ムードを感じるかは、大きくその生育歴にかかっていると思いませんか?
 同じ言葉を読み、作品中の同じ出来事を追体験したとしても、その受け取り方が大きく違う(個性的な読みが生まれる)のは、こういう理由からだ。

 話を戻そう。小説のもう一つの「読み」のことだ。こちらが大学入試などで問われる小説の「読み」になる。
 ここで問われるのは、「正確な読み」である。「正確な読み」とは何か。それは「一般的な日本語話者であれば、あまねく納得できる読み」のことだと考えればいい。その場合の読みの根拠は、「読者の個性」ではなく、「本文中の言葉」にある。つまり、客観性が担保できる「読み」か否かが問題になる。

 ここで、また悩みが出てくる。「一般的な日本語話者」とはどこにいるのか? また、自分は「一般的な日本語話者」ではないのか? という悩みである。その答えは、いつまで考えても出てこない。私たちは、生まれてからずっとそれに悩み続けているのだ。

 この話を続けていると、いつまでも終わらない。とにかく小説の問題は、とてもやっかいなのだ。

 ではどのように読み、どのように解けばいいのだろうか。そこで冒頭の言葉、

 妄想禁止!

 となる。

 小説を読むと、ぼくらは情景を思い浮かべる。その情景のなかで作中人物が動き出し、物語が進んでいく。その自分の頭の中で進んでいくストーリーに従って、問題を読み、解答する。
 このやりかたでは、間違いが起こる。思い浮かべた情景は、読み手のこころの辞書に従って作り上げられた、読み手の世界である。作中人物の行動や語り口も読み手の基準で作り上げられている。この自分の妄想のなかの人物の動きや心情を基準にして解答していったら、必ず間違える場面が現れる。

 では、小説問題の具体的な解きかたの話をしよう。

 ① 場面の変化ごとに読むのをやめて、そこまでの問を解く。
  …… 場面とは、時間空間の切れ目のこと。短い時間であっても、長い 
    時間であっても、時間の切れ目があったらそこで読むのをいったん
    止めよう。わずかな場面の移動にも反応して、読むのを止めた方が
    いい。作問者は、選択肢の中に文章を最後まで読んだ人が落ちる罠
    を仕掛ける。作中の人物は、決して未来も違う場所のこともわから
    ない。それがわかるのは、先まで読んでいる読者だけなのだ。

 ② 自分の頭の中にできている風景に従わず、その風景が文中の「どの言
  葉」に反応してできた風景であるかを確認し、その言葉を軸に解答を選
  ぶ。文中の言葉と選択肢を照合する、ということだね。
  …… 妄想禁止! ということ。自分の頭の中の風景は、とても個性的
    な自分だけの風景になっている。それを基準に選択肢を読むと、間
    違いを招きやすい(もちろん正解のこともあるんだけど)。そうで
    はなく、自分の頭の中にできた風景が、文中のどの言葉に反応して
    出てきた風景かをちゃんと読みとることが大切。

 こうやって解くと、本文を読み終わった時には問5まで終わっているということになる。このやりかたは小説の場合、時短にも寄与する。

 小説の問を解く時には、

 ① 場面の変化ごとに読むのをやめて、そこまでの問を解く。
 ② 自分の妄想に従わず、文中の言葉に従って解く。

 この二つの約束事を忘れないように。

 話が中途半端になっているところや、問題を解く時の細かい注意事項は、他にもたくさんあるけれど、もうずいぶん長くなってしまったので、今日はここまでにしておこう。

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