飲み会にいるはずのない女がいた話(創作コメディ)

A,Bは大学一年生の友人である。新歓に参加した帰り、二人は家に向かっていた。

A  「今日も楽しかったな。」

B 「そうだな。そういや、Aの左にいたCさんかわいかったよな。連絡先聞いた?」

A 「俺は左端の席だったから、左には誰もいなかったぞ?」

B 「え?いたよ。怖いこと言うなよ。ルベーグ積分とその応用について熱く語ってた子だよ。」

A 「飲み会の話題じゃないだろそれ。」

B 「みんな爆笑してたぜ。」

A 「どういう感性?」

B 「でも確かに変わった子だったかもしれない。「お前らがやってるのはロックでも何でもねぇよ!!」って叫んでたし。」

A 「尖りすぎだろ。吹奏楽部の新歓で。」

B 「真のロックンローラーだと思ったよ。」

A 「お前も大概だな。」

B 「あんなに目立つ子なのに覚えてないのかよ。先輩に確認してみようか?」

A 「ああ。頼む。このままじゃ気になって夜も眠れん。」

(Bがスマホをいじる)

B 「よし、ライン送ったぞ。」

A 「Cさんってどんな服着てた?」

B 「ロックマンのコスプレしてたな。」

A 「ファッションセンスどうなってるの。」

B 「バイトの制服のまま来たんだってさ。」

A 「どんな職場だよ。」

B 「先輩から返信返ってきた…先輩はCさんのことはっきり覚えてるってさ。」

A 「やっぱり居たのか…」

B  「その先輩、Cさんに「水のコップちょうだい」って言ったら水の入ったピッチャー渡されてたからな。」

A 「だからあの先輩、ピッチャーから水飲んでたのか!!」

B 「やっぱりCさんはいたよ。お前がおかしいんだよ。」

A 「そうなのか…」

B 「そういやお前、今日少し変だよな。左足からお店に入ってたし。」

A 「野球選手のルーティーンか」

B 「そういえば、Cさんって早めに帰ったんだよな。バイトが再開するからって言って。」

A 「休憩時間に来てたの!?」

B 「自分以外に従業員がいないんだってさ。」

A 「もはや店長だろそれ。」

B 「お前、今日は用事があって途中から参加してたよな。もしかして入れ違いになったんじゃないか?」

A 「そういうことか!解決したな!」

(しばらく二人で歩く)

B 「また先輩からラインが来た。「さっきからお前が言ってるAって誰だよ(笑)。参加者の名簿にもないぞ。」だって。」

A 「え?俺がいない?」

(Aの家の前につく。)

B 「おい。着いたぞA。」

(振り向くとAがいない。)

B 「もう家に入ったのか…?まぁいいや、帰るか。」

後日、BはAの連絡先が携帯から消えていることに気づいた。Aの家には既に別の人間が住んでいた。大学にもAを覚えている人は全くおらず、まるで最初からAなどいなかったかのようであった…

~終~




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