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日本企業でDXが進まない理由

日本は少子高齢化と人手不足が深刻であり、企業はこぞってDXの推進に躍起になっているが、多くの日本企業ではDXがうまくいっていない

筆者は外資系のIT企業で、製造業のクライアントを中心にDXを支援をさせて頂いているが、日本企業(特に大企業)のDXがうまくいかない理由は、日本企業特有の「現場の意見を尊重する文化」にあると考えている

現場は「変えられたくない」が基本

人間の本質は保守的で、多くの人は「現状維持」を好む傾向にある。それが経営層ではなく現場の社員であればその傾向は顕著で、多くの現場社員は「現在の業務やシステムを変えられたくない」のである

なぜなら、現場の社員からすれば、DXにより企業としての生産性や収益性が上がったとしても、個人の利益になることはほとんど無く、多くの社員にとって「そんな事やって俺に何の得があるんだ?」となるからである

DXというのは新しい業務やシステムの導入という「面倒な事」を伴うが、現場の社員にとっては、そんな面倒な事をするインセンティブは全く働かない(むしろDXにより自分の仕事が無くなり、雇用が脅かされる危険すらある)

「現場に任せる」ではうまくいかない

一方、欧米の経営層はその点を熟知しており、変えざるを得ない「強制力」をトップダウンで働かせる。「今までのやり方を変えたくないから」などという理由で現状維持することは認めず、客観的な理由も無く新業務や新システムの導入に反対する社員はプロジェクトに関与させない

DXとは「企業全体の生産性や収益性を高めるために、デジタル技術により今までのやり方を大きく変える事」だから、経営層のスタンスとして「現場の意見を尊重する」「現場に決定権を与える」ではうまくいかないのである

DXに伴い、筆者のような外部のコンサルを活用するケースも多々あるが、そのスタンスでいる限り、いくら外からコンサルを入れてもDXは絶対にうまくいかない。なぜなら、外部のコンサルがどれだけ合理的な提案をしても、現場は「そもそも変わりたくない」「変えられたくない」のだから、変わらないための理由をひたすら並べられたあげく、現状維持の決定をされて終わりとなる

もちろん、トップダウンで進めると言っても「いいからやれ!」では現場が動かないから、現場が変わることをサポートする取り組み(= Change Management)もセットで推し進める必要があるが、基本スタンスはトップダウン(現場に意思決定を任せない)がDX成功の大前提となる

今、変わらないといけない

もしトップダウンでの推進が非現実的と思うなら、DXなど止めた方が良い。筆者の経験上、大きなお金と時間を費やした挙句、「現状維持」が残るだけの結果となる

ただしその場合、今から5~10年間は大丈夫でも、その先に未来はあるのだろうか?

今はかろうじて「人海戦術や現場力」で何とかなっても、日本は生産年齢人口が減少していくことが確実である。また、欧米企業はとっくにデジタル技術で合理化や標準化を進めており、今も最新技術でその先を行こうとしている。そんな状況で、日本企業は競争力は維持できるのだろうか?

日本企業の現場力自体はすごいと思う。でもDXは日本企業が将来も競争力を維持していくために必須であり、現場力で何とかなっている今のうちに変わらないといけない


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