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髪をバッサリと切った話

私の髪は5年以上、ただ伸ばして縛るだけだ。

子育てにいっぱいいっぱいで、マメなお手入れが必要な長さにはしたくなかった。何より自分の髪質にクセがありすぎて、どうせどんな髪型も上手くいかないのだ。

縮毛矯正をかければどうにかなるけど、お金も時間もない。
伸ばしっぱなし、縛りっぱなしが楽。


でも、写真で自分の後ろ姿を見るといつも何だか悲しくなった。

伸ばしっぱなし縛りっぱなしの自分は基本鏡では正面からしか見られない。だから縛られた髪がどんな状態なのか、普段自分ではよくわからなかった。

でも。
写真で見ると、いつも私は後頭部にごわごわのタワシを付けてるみたいだった。

それが嫌で自分で髪を切る。

長ささえなければそんな酷いことにはなるまい…と、どうせ縛るし適当でいいや、と適当に髪を切る。 適当に切った髪を適当に縛った後頭部のタワシは、前より歪んだだけでやっぱりタワシだった。

今回、子どもが不登校になったりでずっと悩み続ける日が続いた。

毎日毎日悶々としていて苦しかった。
何かで思い切り気分を変えたかった。

どうせ子どもが家から出ないなら、私もほとんど引きこもりだ。

短くして失敗しても、ほぼ家族以外に見られないならいっそバッサリ切ってやろうと思った。

襟足を刈り上げるツーブロックなら少しは広がりもマシになるかもと、何十年もの付き合いの美容師さんに私の髪質と合う髪型を相談し、思い切ってバッサリいくことにした。

さすがに、バリカンでバリバリやられたときはどうなるんだろうと怖かったが、新しい自分になるみたいでちょっとワクワクした。

仕上がってみて驚いた。
思った以上に、良かった。

広がりがちな縮毛が強い襟足、広がっていつも飛び出すもみあげは刈り上げてしまったらスッキリ。



くせ毛はいつも通りぴょんぴょんはねていたけど、それはそれでいい味だと思った。

縮毛で無理やり思ったとおりに矯正しなくても、本当の自分の髪質で自分のいいと思える髪型に出来たのは初めてかもしれない。

どうせ失敗するんだろうと思いながら短く切ったときは、大抵、本当に失敗した。

今日は、失敗してもいい、それでも何か変わりたいと思って切った。
そうしたら上手く行った。
なんか人生みたいだと思った。

失敗するんだと思いながらやると失敗するし、無理やり矯正してきれいなものでいようとすれば続けることに疲れる。

そして、自分らしさを押し込めて、縛ってるだけで自分のクセを誤魔化してる髪型が、私はずっと嫌いだった。
その髪型の自分も嫌いだった。

美容師さんが最後に

「本当にいい。結構大変な髪質だからどうするのがいいか迷ったけど、いいカットが出来た!」

「この先の季節、寒いんだよねー!
刈り上げたの失敗したな、って思うかもだけど。
でも大丈夫よ、なんとでもなるから。
なんせ髪は伸びるからね」

そう、満足そうにカラカラ笑った。

結局、なんでも、それでいいんだと思った。


今までずっと縛られていた髪の毛は、毛根に縛りクセがついているからしばらく中央に集まるようにクセが残るらしい。


「でも、縛られなくなったから、これから髪はみんな自由になっていくよ」


髪が自由になる。

面白い言葉だと思った。 縛られていない自由さ。

自由になって好きな方にクセがはねる。
本当に人みたいだ。面白い!

今の髪型の自分が好きになった。
そのままでいいと思えたら今の髪質も悪くないと思った。


これからは、好きなだけ自由にクセを出してくれたらいいと思う。



切り終わって立ち上がると、ずっと重たく伸ばされていた長い髪が床にいっぱい落ちていた。

刈り上げた襟足に秋の風は少し冷たかったけど、気持ちは春みたいにほっこりした。

心も頭も軽くなった。

きっと大丈夫、全部うまくいく。

そう思っていれば、きっとうまくいく。

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