最終章 NHKスペシャル 2030 未来への分岐点(2)「飽食の悪夢~水・食料クライシス~」を視聴して「釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフ」を通して畜産業界を考えてみる③
今回はやっとこの話題です。「釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフ」を通して自分なりの考えをまとめてみます。
以前書いたように、現在の畜産はいろいろと批判されることもありますが、現実にはしっかりと社会の循環の輪の中に組み込まれ、食を生産するということに貢献しています。
しかし、今後も現在の形で良いのかを今問われている?
飼料を生産するために、今後爆発的に増えるであろう人口に対して食糧を確保するために現在の畜産のあり方で良いのか?
特に日本は輸入飼料に依存している割合が高いです。その飼料を生産する海外の土地で人の食糧を生産した方が良いのではないか等々。
穀物が生産出来ずに草地にしかならない土地があるのも現実です。そういった土地は草を生産し、その草を最大限有効活用するためには牛は最適です。なぜかというと人は草(繊維)を消化出来ません。人が直接利用出来ないものを牛を通して人にとって良質な蛋白質として、間接的に人の食糧として提供してくれます。
さて、「釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフ」はどうでしょう?
釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフがどのようなに暮らしているかを簡単に説明していきます。
まずこのような形で生後5~7ヶ月まで親子で非常に広い放牧場で過ごします。この時は親から母乳をもらい、時々草も食べたりしながら伸び伸びと過ごします。
12月になると放牧地から下牧しますので、その際に親子が分かれ、子牛のみ上記のような牛舎に移動します。ここから初めて親牛のいない子牛のみの牛群での生活が始まります。20頭~25頭の群れで生活します。
春から秋まではこのように外の運動場にも出られます。冬場は地面が凍ってしまうため、滑ってケガをしてしまう可能性があるので牛舎内のみで過ごしています。
餌はこんな「ご馳走飼料」を食べてるよ!
餌はものすごい種類食べていて、大きくなるまでに数十種類は食べています。一般の牛さんとは比べ物にならないくらいの種類の餌を食べています。なぜこんな種類の餌を食べているかは後で説明します。
餌の筆頭はなんといっても大好物の有機牧草です!餌の50%以上は有機牧草を食べています!これまた一般的な牛さんはこんなに牧草を食べてはいません。有機畜産では半分以上は牧草を給与してくださいという項目があります。
他には、こんな餌や
こんな餌を(有機JASのマーク見えるかな?これはほんの一部です)
餌全体の85%以上は有機飼料でなくてはいけません。
こんな風にして手で混ぜています。結構大変(笑)
美味しそうに食べます!餌を持って行くとものすごい勢いで寄ってきて夢中になって食べています。←クリックすると餌を食べている動画が見れます
こんな感じですくすく育っています。
では、現在畜産業界に突き付けられている問題を考えた場合、釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフはどうなんでしょうか?
今回、NHKスペシャル 2030 未来への分岐点(2)「飽食の悪夢~水・食料クライシス~」で問題提議された穀類に関してですが、気づいた方もいると思いますが、飼料として生産されたものは有機牧草以外一切給与していません。
どういうことかというと、給与されている餌は食品製造副産物か、なんらかの理由で食品にできなかった、本来なら捨てられてしまうものを有効活用し飼料として給与しています。
これは本来の家畜の姿で、人の利用出来ないものを人の利用できる価値あるものへ変換してくれるのです。
こういった存在なので、昔から長く人間と共存してきたのだと思います。例えば人と食が競合していたのであれば、家畜として成立しないので長い年月共存することはなっかたと思います。
どの牛でも基本的には穀類ばかり食べていることはないです。慣行の飼い方であってもかなりの食品製造副産物を給与しています。
例えば大豆油の搾り粕やなたね油の搾り粕、小麦を製粉する際に出てしまうふすま、日本人の大好きな醤油や豆腐を作る際に出る、醤油粕やおからなどは牛や家畜が食べて有効利用していますが、家畜がいなくなるとこれらはどのようになるのでしょうか?一部は食用として人が食べてはいますが、とてもそれだけで消費出来る量ではありません。
肥料にするといっても、現在の国内の残渣でさえ撒く場所がなく苦労しているのが現状です。
牛や家畜が環境破壊のみをしていることはないです。環境に寄与している部分もあるのも理解して頂きたいです。
このようなことから畜産は今のままで良いということではなく、現在の日本の方法では穀類をたくさん食べているのも事実です。
しかし、穀類を多給しなくても良質な蛋白質を生産出来ることも事実ですので、そのような方向に行くことが今後の社会に受け入れられ、畜産が存続できる手段のひとつではないかと思います。
話がそれてしまったので「釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフ」に話を戻します。
なぜ釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフは他の牛に比べて何種類もの餌を食べているのかというと、国内で人が利用出来ない、もしくは出来なくなってしまったもののみを利用しているからです。
例えば醤油が売れなければ醤油粕は出てきません。どれだけ売れるかは分からないのです。他には、賞味期限切れなどの理由ででてくるオーガニックのドライフルーツなどを使っていますが、基本的にお店は賞味期限切れは出したくないので、いつどのようなものが、どれだけ出てくるかは見当もつきません。
しかし、これらを出てきたときにはすべて引き取り有効活用するのが釧路生まれ、釧路育ちのオーガニックビーフの最大の特徴です!その度に飼料設計の変更をし適切な栄養の餌を給与しています。
これはオーガニックだからということではなく、オーガニックでなくてもこういうことを積極的に行っている農家さんはたくさんいます。
基本的には賞味期限切れなどは出さずに、ちゃんと最後まで食品であることが当然理想です。しかし、現在の社会の仕組み上なかなかすべてを食品として売ることが出来ない事情もあります。メーカーは今後売ることの出来ない商品を減らす努力は必要です。
あれ?その際、餌が無くなるけれどどうするの?当然その時は他に国内で餌を探しますし、手に入る餌を最大限活用し効率良く管理する方法を考えます。これもある意味変化です。
オーガニックというのも当然大切ですが、このように人と食を競合しないということも非常に大切なことだと思っています。
長い話になってしまいましたが、畜産業界の転換期であることは間違いないと思います。
今までは現在の畜産のあり方で良かったと思います。しかし時代が変われば畜産業界も変化していかなければいけません。
何を変化し、どのような形であれば持続可能な畜産が成立し、社会に必要とされ続ける畜産になれるのか、今後も考えていきたいと思います。
きっと批判(アドバイス)の声の中にもヒントが多く隠されていると思います。
環境…アニマルウェルフェア…水…食糧…何が正解なのか分かりませんが、変化を恐れずに今後もチャレンジしていきたいと思います。
上手く伝わるかな?伝えるって難しいですね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
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