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書き残したいのは「できごと」ではなく「感情」

『アンメット ある脳外科医の日記』にハマっている。

杉咲花演じる川内ミヤビは、将来を嘱望されている若手脳外科医。不慮の事故で脳に損傷を負い、「記憶障害」という重い後遺症が残ってしまった。

過去2年間の記憶がすっぽりと抜け落ちたうえに、今日のことも明日にはすべて忘れてしまう。そのため、ミヤビは毎晩日記を綴り、その日のできごとを事細かに記録している。朝目覚めてすぐ日記を読み、昨日までの自分を知ることから、ミヤビの一日は始まるのだ。



今日の記憶を明日に持ち越せないとしたら。全部忘れてしまうとしたら。今日の日記には何を記すだろう?



ミヤビの日記には、基本「できごと」が書かれている。仕事の内容、患者さんのデータ、誰かとの会話などできるだけ多くのことを詳細に。それは彼女が明日を生きるために必要な情報だから。

ところが、時折、感情を含んだ一文が交じるときがある。

「私は本当に医者なのだろうか」

「私は三瓶先生を信じる」

たぶんだけど、ミヤビが本当に書き留めておきたいことはこっちなんだろうなと思う。

仲間に支えられ、記憶障害と向き合いながら、医師としての成長を目指す中で、思わず涙がこぼれてしまうほど心を揺さぶられたとき、ミヤビはつぶやく。

「忘れたくないなー」





心から美しいと思える景色を見たとき。
覚えていたいのは、場所や地図なんかじゃなくて。

ひと目見た瞬間に目の前がバァーッと開けて、この世のすべての悩みや迷いや不安が溶けて流れてなくなっていくような感覚。




心から美味しいと思えるものを食べたとき。
覚えていたいのは、いつどこでなんかじゃなく。

口に入れた瞬間に、全身の力が抜けていくようなフワーッとした感覚。からだの細胞すべてが喜んでいるのを実感し、思わずクゥーっとうなりたくなる気持ち。




心のざわめきを、言葉にするのはむずかしい。

でも、書き残したいのは、やっぱそこんところ。

うまく書けない。めちゃくちゃわかりづらい。雲を掴むかのような表現しかできてないなと、自分でも思う。

それでも忘れたくないのは、瞬間的に脳を走る、なんとも言い換えがたい感情なんだよな。




ミヤビと同じ病院に勤務する脳外科医・三瓶先生が語る。

三瓶「強い感情は忘れません。記憶を失っても、そのとき感じた強い気持ちは残るんです」
ミヤビ「記憶がなくなっても、心が覚えているってことですか?」
三瓶「そういうことです」

明日には何もかも忘れてしまったとしても、文章としてじょうずに表現できなくても、私は「できごと」だけでなく「思い」を綴りたい。

もし強い感情は忘れないのだとしたら、たとえうまく言葉にできなくても、「美しい」の一言しか書いていなくても、心が覚えてくれているはず。



私はプロじゃないんだから。言葉足らずでも自由に書いちゃっていいよね。だけど、せめて未来の自分だけには伝わってほしい。

それこそが日記なのだという気がしている。


ではでは、また。



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