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私と舞さんが、なぜ、今、コンポントムを暮らすように旅する雑誌を作るのか

以前、紹介したサンボービレッジの舞さんから、雑誌制作のお話をもらったのは、今年の9月のこと。とは言え、私と舞さんらしく、明確に「雑誌を作ろう!」ではありませんでした。

前回の舞さんとサンボービレッジのお話は、こちらから読めます。


初めの物語

コンポントムの過ごし方を、サンボービレッジに泊まってくれるお客さんに知ってほしい。ガイドブックのような、雑誌のような、でもみんながイメージするガイドブックのようにコンテンツを載せるのではなく、過ごし方のヒントがふわりと空から降ってくるような。
見る人によって、どう過ごすか、何を経験したいか、それぞれに感じ取ってもらえるようなものを作りたい。
サンボービレッジの夜のレストランでお話しした時の舞さんからのリクエストはこんな言葉でした。

どのような雑誌にするのか、具体的な形は見えませんでしたが、舞さんが雑誌を通じて伝えたいものは明確に、「あー、あの時感じたこれだ」というのだけはわかりました。


コンポントムって?サンボービレッジって?どんなところ

舞さんの体験したコンポントム
シェムリアップとプノンペンのほぼ中間地点に位置するコンポントム。ガイドブックにはカンボジアで3番目に登録された世界遺産サンボー・プレイ・クック遺跡がある街として載っているものの、街自体は特に目立つものはない”普通”の地方都市です。
ほとんどの観光客は、遺跡を見学して、留まることなく街は通過していくのみです。
街の特徴と言えば、街の中心を二分するように流れる雄大なセン川。今年は雨が多く、市内一帯が冠水したそうです。

Photo by EAC News


そんな何の変哲もない街を紹介する雑誌をなぜ作ろうとしているのか?
それは、遺跡をきっかけにコンポントムを訪れた舞さんが、この街の”ファン”になっていった過程にあります。

舞さんがこの街にひかれたのは、この場所で暮らす人たちとの濃厚な記憶と体験からでした。
10年前に一緒に村の赤土の道を散歩した少年とは、その後もシスターと呼んでくれる遠い親戚のような間柄に。彼との今の会話と、赤土の道を見て思い出す以前の彼の姿と楽しい思い出が、その田舎道の魅力に繋がっていくのです。次に舞さんがそこを案内する時は、きっとその少年との思い出を語りながら、それを聞く人は、またその思い出と共に自分が体験した記憶を重ねて、その場所を思い返すと思います。

そうして、おり重なるように紡がれていく記憶と体験が、ストーリーとしていろんな人に繋がっていくと、さらに魅力は増していくでしょう。
そうした人との記憶が色濃いのが、このコンポントムという街なのだと思います。

日常に隠れている冒険
コンポントムの街の人の距離感
サンボー・プレイ・クックをめぐる暮らし

こうした関係性が重なって、からまりあって、コンポントムという街の魅力に繋がっているのだと思います。
そして、そんな舞さんと一緒にコンポントムで過ごした私も、やっぱり”ファン”になりました。
こうした街の魅力を伝えるには、コンテンツを紹介するだけのガイドブックに掲載してもらうだけでは、伝えきれないのです。

きっかけのひとつとなった残念な出来事

舞さんの運営するサンボービレッジに日本からお客さんが訪れた時のこと。そのお客さんはサンボー・プレイクック遺跡見学をした後、さてどうしようかとガイドブックで次の計画を立てようとしたそうです。しかし、そこには遺跡以外のコンテンツがほとんど掲載されていなかったそうです。しかも、たまたまその日は舞さんが外出していて、カンボジア人スタッフにも相談できず。そのお客さんは旅程を1日短縮して、次のシェムリアップに移動してしまったそうです。

お客さんが帰った後に、舞さんがその話を聞いてとても残念だったし、そのお客さんにもせっかく立ち寄ってもらったのに、コンポントムを楽しんでもらえなかった事がとても申し訳なかったそうです。
自分がいなくても、お客さんがコンポントムを楽しんでもらえるように伝えるものがあったら…そう強く感じたそうです。


日常生活に隠れている「冒険」

何の変哲もない、と何度も書いているコンポントムですが、舞さんのフィルターを通した街は冒険にあふれているんです。

舞さん手書きの街の冒険MAP。
街の日常生活が舞さんのフィルターを通すことで、冒険に変身します。

そして同じ行動をしても、人によっては違う体験となり、それぞれの”冒険Map”が出来上がっていくのだと思います。

私が最初に2人の子どもと一緒にコンポントムを訪れた時のこと。私たちは舞さんと一緒にサンボープレイクックを訪れ、セン川沿いに位置する舞さんの事務所に遊びにいき、近くの市場とコロニアルの街並みを散策しました。途中の予定変更などもありましたが、楽しい旅となりました。
私も、サンボープレイクックの地元の人の暮らしが混じりながらも、静謐な森が広がる空気を楽しんだり、コロニアルの街並みを舞さんの解説付きで散歩できたりと、贅沢な時間を過ごすことができました。

シェムリアップに戻ってきた後に、子どもたちに何が楽しかった?と聞くと「チャタロウとチャチャ(当時舞さんの飼っていた犬)と川沿いを一緒に散歩したことが一番楽しかった!」という意外な返事が返ってきました。

子どもたちにとっては、サンボープレイクックも、コロニアルの街並みも、全く印象に残らなかったようです。その時以来、子どもたちにとってのコンポントムは、チャタロウとチャチャの暮らす場所という認識になりました。

頭ではわかっていたものの、旅とは、旅行とは、体験とは、本当に千差万別だと、自分の子どもたちのおかげで実感できた出来事になりました。

サンボービレッジ再訪と、コンポントムでの”何もしない”旅の楽しみ方

私がサンボービレッジを再訪したのは今年の9月の下旬、雨季の終盤の雨が降り続く日のことでした。
たまたま、子どもたちと一緒にプノンペンに行く用事があり、ちょうどシェムリアップとの中間地点であるコンポントムに休憩がてら立ち寄ることに。

前回の旅とは違い、何も予定を立てず、舞さんに会えればいいな〜、サンボービレッジでのんびりできればいいな〜、ぐらいなゆるりとした旅程で立ち寄りました。
その日は雨の合間の晴れの日で、子どもたちと庭を散歩したり、虫を眺めたり、部屋で本を読んだり、緩やかな時間が過ぎていきます。

夕方になって、舞さんと一緒にプロジェクトをしているメンバーの面々がホテルに帰ってくると、夕食のひと時にお邪魔させてもらいました。それぞれのプロジェクトへの思いや状況を話つつ、ゆるりとした時間が流れます。

こういった何の変哲もない時間を過ごした時、これから作る雑誌の輪郭がさらにはっきりしたものになってきたと感じました。

例えば、薬草に詳しい近所のおじさんがふらりと訪ねてきて、そこにたまたま居合わせた宿泊しているお客さんと、ハーブについて語らった後にひょいと庭で摘んできたハーブでお茶をする時間の、ポットから匂いたつハーブの香りや、湯気の向こうにで真剣に聞き入るお客さんの表情や、温かいハーブティーのほっとするような味わい、そういった五感からよみがえる記憶は、その時の思い出に大きくつながっていくと思うのです。

これから作る雑誌には、ここを訪れる人、訪れたい人、訪れるつもりはなかったけど来てみたいと思った人、それぞれが忘れられない体験をするヒントがたくさん詰まったものになる予定です。

同じ文章を読んでも、きっとその体験は人それぞれ、千差万別。だけど田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に行った時のことを思い出すような。
この、コンポントムという地域で、サンボービレッジでの体験は、ただいまと言いたくなるようなものが待っているはずです。




サンボー・ビレッジ
Sambor Village
 
TEL:017 924 612
https://www.facebook.com/SamborVillage/
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