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日本の漁船でStarlinkが使えるようになりそう〜海外事例と国内での活用〜


日本の領海外でもStarlinkが使えるようになりそう

総務省は12月25日、電波法関係審査基準の一部を改正する訓令案を発表しました。訓令案は船舶などに搭載される「非静止衛星通信システム」(Starlinkもこれに含まれます)の無線局について、領海外でも通信できるようにすることが盛り込まれており、2023年12月26日から2024年1月29日まで案に対する意見聴取(パブリックコメント)を実施するそうです。

通信の速さは下りで40〜220+MBPS、上りで8〜25+MBPS、レイテンシが99m sec未満。価格も1TB(少人数のクルー向けで、クラウドアプリケーション、ビデオ通話をサポートする船舶に最適なプラン)で月13万円ほどと、Starlinkは性能は高く、コストは比較的低く抑えられています

これまで法令上の制約で領海外においてStarlinkとの通信が行えないようになっていたこともあり、その活用の幅が一気に広がるのではないかと考えられました。

その矢先、日本郵船が2024年度内に、Starlinkを導入する外航船を現在の3倍超となる100隻以上に拡大するニュースが飛び込んできました。商船三井も2023年度中に140隻に導入する計画で、海運業界ではさっそく活用されるようです。

海運ができるのなら、水産業界においてもできるはず。では、先進して導入が行われていると考えられる海外では、どのような側面から活用されているのでしょうか。

海外のStarlink活用事例

ふわっとした記事が多いのですが、具体的なものがいくつか見つかりました。

ベーリング海のトロール船

ベーリング海で操業するトロール船への導入事例が紹介されています。気象情報や海面水温のデータなどを共有してくれて、医療面やマシントラブルといった緊急事態への対処を強化するものとして書かれています。

これらのような安全性・生産性の向上だけでなく、乗組員の快適さにもつながり、人員確保につなげられそうです(これまで船舶は乗組員の接続を制限してきたが、Starlinkによってビデオ通話や映画のストリーミングなどを陸上と同じく楽しむことができるかもしれないと触れられている)
(この記事が書かれた時は高緯度地域の導入がまだ一部制限されていたことがあり、現在の状況はわかっていません)

ブリティッシュコロンビアにおける魚の個体数監視

カナダ漁業海洋省(DFO)は、ブリティッシュコロンビア州の遠隔地で魚の個体数を監視するためにStarlinkを活用しています(この事例は漁船というよりかは電波の届かない遠隔地)。Starlinkユニットは2020年4月にバンクーバー島のスタンプ・リバーに設置され、それ以来継続的にインターネット接続されたカメラから水流速を測定し、魚の個体数を正確に追跡することができているそうです。

サイモンフレーザー大学と提携し、リアルタイムに収集したデータを河川におけるベニザケやサケの管理に活用しているとのこと。あわせて、通信・設置コストを抑えつつこれらを実現できたと書かれています。

(もっと事例があるかもしれないので、具体的な情報を求めています)

日本の水産業にStarlinkをどう活かす?

データの収集と活用

これまで電波の関係上集められなかった、各漁船や遠隔地から集められたデータをリアルタイムで解析し、例えば魚群を即座に・空間的に把握することができるようになるかもしれません。

得られたデータを将来予測に使うことで効率的な操業につながり、資源保護や生産性向上への取り組みに応用もできそうです(エビスくんなどでは将来予測の取り組みが既に行われていますね)。

この他にも、漁業の遠隔監視や水産物流通への活用など、さまざまアイデアが出てくることと思われます。

人材の確保

データのリアルタイムな共有以外にも船員の確保に活用できます。人手不足の昨今、どれだけ快適な環境を提供できるかが船員確保の重要なファクターということができるでしょう。とりわけ、適切な通信環境を整えられるか否かが今後の人材獲得競争でも不可欠となるはずです。

この他にもいろいろと書きたいことがあったのですが、長くなるので一旦ここまでで。水産分野の電気通信インフラまわりは会社の方に寄稿したnoteにもまとめておりますので、こちらもどうぞご笑覧ください(スキ・フォローいただけると嬉しいです)

(サムネはこちらのサイトからお借りしました)

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