見出し画像

水産DXストーリー #3 水産AI導入「以前」~DXに向けたIT環境の構築~

こんにちは。フーディソン エンジニアチームのtakaです。今回は、AIの活用をはじめとした水産分野におけるデジタルトランスフォーメーション (以下、DX) の取り組みに向けて、フーディソンが行ってきたIT環境の構築についてご紹介します。


なぜ水産DXは進まないのか?

水産分野において、AIの活用をはじめとしたさまざまなDXの取り組みが紹介されてきました。特に漁獲・流通に関するものだけでも、

  • 漁場予測による効率的な漁船操業

  • AIを用いた水揚げデータの円滑な記録と資源管理への活用

  • 出荷作業の無人化、省力化

など、枚挙に暇がありません。
しかし、これら全ての事例が現場で実際に活用しきれているというわけではないと私は思っています。その理由の一つとして、日常生活では当たり前にあるはずの「意外な」ものが、水産の現場にない場合があると考えているからです。

水産DXに足りない「意外な」もの

電源

日常生活では電源に機器をつないで使うことは当然で、あまり意識もされないかもしれません。しかし水産の現場ではこのような電源へのアクセスが当たり前ではないことがあります。

水産分野は作業環境が水に濡れやすく、電源の設置があまり行われてこなかったという経緯もあるかもしれません。また、産業として情報機器の利活用が遅れがちで、電源の整備も進みにくかったという要因も想像できます。

もし、水産のさまざまな現場で電源が利用できるようになれば、コンベアを使った出荷作業の省力化や、固定カメラを用いたソーティングの自動化、漁獲データの自動集計などが実現可能になると思われます。

Wi-Fi

他にも、Wi-Fiが利用できないという課題もあります。船の上などそもそも陸から電波が届きにくい場所から、消費地市場など電波は届くけどそれを活用しきれていないところなどさまざまあると思われます。
特に船については「Starlinkを設置すれば終わりでは?」という声もあるかもしれませんが、法的な制約などにより導入が困難な場合もあり、広範囲にわたる利活用はまだ進んでいないのが現状なようです。

(Starlinkには海事産業向けのサービスが既にあります)

しかし、これが実現すれば、例えば各漁船のソナーから集められたデータをリアルタイムで解析し、魚群を即座に・空間的に把握することができるようになるかもしれません。効率的な操業につながり、資源保護や生産性向上への取り組みに応用もできるでしょう。また、水産市場における通信環境の整備も、業務の効率化に向けたさまざまな取り組みにつなげられることは想像に難くありません。

情報機器

電源やWi-Fiの他にも、 現場で使える情報機器がないことも、水産分野のDXを阻害する要因の一つと考えられます。例えば、冷凍庫のような氷点下の環境や、高湿度で海水の塩分が固着しやすい状況では、一般的なデバイスの使用が困難になります。

そのような環境下でも使える適切な機器の選定・導入ができないままDXの取り組みが進められず、非効率でアナクロな運用が続いているというところも少なくないのではないでしょうか。

フーディソンのIT環境構築

このような背景のもと、フーディソンでは特に市場にある自社の出荷拠点におけるDXを進めるためのIT環境の構築を進めてきました。

電源の確保については市場が設置しているものもあり、漁業現場と比べて問題は少なかったと思われます。しかし、当初は自社が使えるWi-Fiも通っていないという状況でした。ポケットWi-Fiを駆使してスマートフォンやパソコンを現場で使っていたものの、Wi-Fiの端末管理の問題や、自社ネットワークが十分に活用できないことによる効率化の限界が見えてくるようになりました。

自社ネットワークの整備

そこで、市場における自社のどの拠点においても社内ネットワークを使えるようにする取り組みがスタートしました。市場は公共性の高い場所であるため、自社ネットワーク内の構成検討や機器の選定といった自社だけで進められるものとは別の課題があり、各所との連携・調整が必要不可欠でした。

多くの時間を要しましたが、最終的に自社ネットワークの構築に成功しました。自社の事務所はもちろんのこと、出荷場所や加工場、倉庫などさまざまな拠点で自社ネットワークを活用することが可能になりました。

機器の選定と導入

通信環境を整えるだけではなく、適切な情報機器の選定も重要でした。「そもそも情報機器なんて今の世の中頑丈なものがいろいろあるんだし、選定は適当でもいいのでは?」という声もあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

先述のとおり、水産の現場は低温(倉庫によってはマイナス60度になるところも!)・高湿度・塩分ありという状況が珍しくなく、激しい現場作業の中で機器が破損してしまう恐れもあり、適切な選定が不可欠です。さらに、物理的な耐久性だけでなく、実際の業務の流れやアプリの活用に適しているかといった観点での検討も重要になります。

適切に機器を選ばないと、DXの推進どころか日常業務すらできなくなってしまうというリスクがあります。そこで、さまざまなメーカーの機器を比較検討し、各種要件を満たす機器を導入しました。

できるようになったこと

「それで、結局何ができるようになったの?」という声が聞こえてきそうなので、少しだけ簡単にご紹介します。

さまざまな業務をITで効率化できた

IT環境の構築により、出荷帳票の出力や在庫管理などを行うアプリを現場で安定して稼働させることができ、作業の効率化が進みました。現場でのIT活用となるとアプリケーションや業務の具体的な側面に焦点が当てられることも多いですが、IT環境の構築に依るところが少なくありません。

情報機器やネットワーク設定の遠隔操作が可能になった

システムを現場で活用する上でもっとも大切なものの一つにトラブル対応があります。急にアプリが動かなくなったときや突然Wi-Fiに繋がらなくなったときに、機器やアプリの不具合を迅速に検知し解決することが求められます。

これが一連の環境構築・機器選定により可能になりました。現在フーディソンでは、現場で使われている機器(特にAndroid端末)の所在・充電状況・アプリの状態・OSのバージョンなどの情報を自社ネットワークを介してリアルタイムに把握できるようになっています。さらに遠隔でも各機器を操作することができます。

また、ネットワークの遠隔管理も可能となっており、各種設定の変更や機器の接続状況確認を現場に行かずとも行えるようになっています。

ネットワークカメラを用いた現場確認が可能になった

自社ネットワークを各拠点で活用できるようになったことで、ネットワークカメラを導入して活用できるようになりました。防犯対策はもちろん、当日の出荷の様子なども遠隔で確認でき、運用状況の把握や振り返りにも応用できるようになりました。

アイデアを一緒に形にしよう

以上であげたのは、私たちがやっていきたかったことのほんの一部に過ぎません。フーディソンではこれからさまざまな施策をさらに推進していきます。

多様なアイデアを持ち、一緒にそれを形にしていく人材を募集しております。 興味を持っていただけたら、ぜひご連絡ください!