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吉備津の妻の魂

雨月物語のお話をしましたが、念をわかりやすく伝えておりました。

上田秋成さまの作品に吉備津の妻というものがありますが、それも非常に見えないものをうまく扱っています。

主人公の磯良は遊び人の夫に裏切られてしまい、嫉妬に狂って死んでしまいます。

そして、怨霊となって、浮気相手の女性を呪い殺した後、夫にも復讐を遂げるのです。

とても、恐ろしい女性の様に聞こえますが、磯良はまるで逆でした。
生前は典型的な良妻で、道徳の鏡と言える様な模範的な女性だったのです。

本来、彼女にあった自我や人間性を徹底的に封じ込めて、ひたすらモラルのために自己犠牲をしてきたというわけです。
抑圧に従い耐えてきたのです。

そんな女性の怨霊というのは、肉体はおろか、モラルの縛りさえもありませんでした。

これは秋成さまにとっての封建的な儒教倫理に対する凄まじい怒りの念を表しています。

純粋で無垢だった作家が知性に抑圧され、幽鬼となったことで、こういう作品を世に残すことができたのでしょう。

素晴らしい古典文学から見えない存在というものを知ることができますが、残念ながらこういう世界は隠したいらしく古典の授業でほとんど触れられません。
大切なものが沢山ありますから、皆さまもこういうことを学んで見えない力を身につけていきましょう。


これからも良い記事を書いていきます。