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数日間の切符生活

僕は電車の自動改札やバスに乗る時に、Suicaや PASMOのチャージ切れで止まる人を見る度に
「おいおい、チャージ残高くらい把握しといてくれよな」
とイライラするタイプの人間だ。

これが朝の通勤ラッシュで目の前の人が、チャージ切れで止まろうものならば、
「は?ふざけんなよ!朝の1秒が通常の何十倍の価値を持ってるのか知らんのか!」
と、それがサラリーマンでも、弱々しいおばあさんでも、抜群に綺麗なお姉さんでも、イライラしてしまう、心の狭い人間である。

先週、新潟県新発田市へ出張する為、家を出てバスに乗ろうとすると、PASMOがエラーで反応しなかった。
僕のPASMOはオートチャージであり、前日は都内で使用したのでチャージ切れはあり得ない。
「あれ?なんだろう、バス側の原因かな?」と思い、再度PASMOをかざすもエラーが出てしまった。

原因はわからないが、後ろの人をこれ以上待たす訳には行かないので、小銭を探して、現金でバスに乗った。

後ろから2番目の席に座り「なんでだろう?」と、PASMOを見てみる。

すると、僕のPASMOはクレジットカード機能も付いており、その期限が11月までとなっていた。
「多分これだな」と思いつつ、「きっと住所変更をしなかったから、新しいカードが届かなかったんだ」と理解した。

同時に「今まで、チャージ切れを自己管理能力の無さだと、イライラしていたけど、こういうこともあるのか」と今までイライラした人たちに申し訳ないという気持ちが起こった。

「でも、申し訳ないのは、こういうイレギュラーだけだからな」とも考えてしまい「なんて自分は心に余裕がないのか」とほんの少しだけ反省をした。

その後、カードを復活させようとネットで調べた。ログインしようとするも、3回ミスをした時点で「あーめんどくせー」と諦めてしまった。

このめんどくさがり精神が今回のミスを発生させたのは十分に理解しているのだが、面倒なものには蓋をして、腐ってから後悔する性格はもう変えられない。

出張から戻り、小銭でバスに乗り、切符を買う生活2日目。

あ、ここで書いておきたいがPASMOで電車に乗るより、切符を買って乗る方が、料金高いことを皆さん知っているだろうか。

その日、切符を買うために検索すると440円と出る。しかし440円の切符は存在しなかったので、とりあえず450円の切符を買い電車に乗った。
SuicaやPASMOの方が安いことは知っていたが、10円単位で切符の方が高いことは、初めて知った。

手間も時間もかかるのに、さらに価格が高い切符を買うメリットなど一つもないことを実感しつつも、面倒なのでまだ新しいカードの発行依頼をしていない自分にイライラしていた、その日の帰り。

外苑前駅で切符を買っていると、おっさんに声をかけられた。イヤホンで川島明のねごとを聞いていたのに声をかけられた。
「なんだよ、あつかましいおっさんだな」と思いイヤホンを外しおっさんを見ると、横には化粧の濃い綺麗で明らかにおっさんより若い女性がいる。

女性の顔を見て「日本人じゃないのか」と思うと英語で話しかけられた。
「外国人観光客ならば親切にしないと」と思い耳を傾けると…

ちょっと書き方が僕にメリットないな。

この前神戸に出張し、イヤホンでハライチのターンを聴きながら歩いていた時も、耳の不自由な方に声をかけられ「中華街に行きたいんだけど、どこ?」と聞かれ、丁寧にジェスチャーで案内してあげたこともあるので基本的には親切な人間であることを理解してもらいたい。

外苑前駅に戻り、「外苑前から原宿?JRじゃないから無理やろ。でも原宿は明治神宮前の近くだよ、と英語で説明できるかな?」と思いつつ、路線図を見て原宿を探すも見当たらない。
そもそも十年以上振りに切符生活をしているので、路線図を見ても目的駅を探すことがめちゃくちゃ大変なのだ。

しかし、僕は基本的には親切な人間なので、「アリトルウェイトプリーズ」と言い、外苑前→原宿をYahoo!路線情報で調べた。

やはり表参道で乗り換えて、千代田線で明治神宮前に行くルートが出る。168円と書いているが、切符だと10円単位なので170円だ。

日本語の検索結果を見せながら「チケットワンセブンティエン、オモテサンドウチェンジ、メイジジングウマエ、ハラジュク、メイジジングウマエ、ニアステーション」伝えると「センキュー」と言われ、大量の小銭を出し切符を買い出した。

日本円には慣れていないのか、小銭を選ぶのがめちゃくちゃ遅い。「全部入れたら勝手にお釣り出るのにな」と思う。

おっさん達は、もうここで僕がいなくなっても良かった雰囲気を出していたが、僕に基本的に備わっている親切心と好奇心により、切符購入も手伝うことにした。

さらに、「アイゴートゥオモテサンドウ、レッツゴートゥゲザー」と伝え、おっさん達と一緒にホームまで行く。

「何駅乗るのか?」と聞かれ「オモテサンドウワン、チェンジチヨダライン、チヨダラインイズグリーン、メイジジングウマエワン、イコールネクストネスクトステーション」と伝えると、完璧に理解してくれた。

電車到着まで2分あったので、「ウェアアユフロム?」と聞くと、フィリピンとのこと。
「ホワイゴーハラジュク?」と聞くとアソビと日本語で答えられた。

他にも少し会話しつつ、「おっさんの横の若い女性は彼女か?それとも愛人か?愛人だとするとおっさんは金持ちなのか?」と聞きたかったが、理性が保たれつつ英語力がないので断念した。

そんな下世話なことを考えているとおっさんは「日本人はめっちゃフレンドリーで親切だよ。君もだね。アリガト」と最後は日本語で感謝の言葉を伝えられた。

「このおっさんの英語わかりやすいな」「俺の中学英語レベルでも理解できるな」ととても感心した。

そして、一緒に表参道まで行き、千代田線乗り換えの階段まで連れて、「ゴーチヨダライン、グリーンラインオーケー?」と言い、そこでおっさん達とバイバイし、僕はちょうど反対車線に到着した電車に乗った。

「切符を買ったことによって、少し違う体験できてよかったなー」「親切出来てよかったなー」と勝手に自己肯定感が上がりつつ、「おっさんは優しかったけど、お姉さんは切符売場でサンキュー言われた以降、一切こっちをみず、おっさんにくっついてたなー」

「やはり、あれは愛人だな」と思い、翌日カード会社に電話、届くまでの新しいPASMOもゲットし、数日の切符生活は終わったのだった。

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