赤ちゃんは空手より先に柔術を学ぶ
早いもので、うちの娘氏ももうすぐ2歳になってしまいます。
……ええ、なんとこのマガジン、始めたっきり2年近くも更新していなかったことになります;
ブログってそういうことよくありますよね。立ち上げるのが一番楽しいからね。
まあでも、真面目な話として、子供が生まれたらこれまで通りの生活というわけにはいかなくて、ペースを掴むのにかなり苦労しました。
独身のときのようにいかない、というのはもちろんですが、やっぱり子供が最優先になり、寝る時間家事の時間などを当てはめていくと自分の時間がありません。
普通に仕事も忙しいわけだし、ありがたいことになんやかや、いろんな案件に誘われて原稿書いたりもしてましたし。
ただ、それも落ち着いてきたというか、保育園に入ってだいぶリズムが出来てきて、進めてなかったエルデンリングを100時間ほど進められるくらいにはなりました。
……いや本当にすいません。
でも、そんな中でも書きたいネタというか、育児の上で興味深い諸々のことはメモを取っておりまして、時間を見つけてはつらつら書いていきたいと思う次第です。
その二本の足で立て
拙作、「空手バカ異世界」にこんなセリフがあります。
空手=「手を空にする」、素手で戦う武芸、であるという理解が一般的ですが、これにはいろいろな解釈があります。
直立二足歩行によって自由になった両手により、広がる可能性は格闘のみならず、人間文化のあらゆる可能性につながる……という具合に解釈したのが上記、拙作での話。
このくだりの前には、こんな文章もあります。
赤ちゃんが立ち上がり、歩き出すのは大体1歳前後。
それまでの間は、いわゆるハイハイでの移動をするわけです。
……でもね。
実際に子育てに臨んでみると、これはそんな簡単な話じゃなかったんです。
立ち上がるより前に、赤ちゃんが身につけるのは
育児の本などを紐解いても必ず載っていることなので、知っている人には当たり前と思いますが、赤ちゃんが二本の足で立ち、歩き出すまでには以下のようなプロセスがあります。
生後5~6ヶ月:仰向けからうつ伏せに寝返りをする
そこから1ヶ月くらい:うつ伏せから仰向けに戻る(寝返り返り)
生後6ヶ月くらい:うつ伏せから上半身を反る
生後6~8ヶ月:上半身を起こし、座れるようになる(お座り)
生後6~8ヶ月:ずり這いをするようになる
四つん這いになれるようになる
生後8ヶ月ごろ:ハイハイをするようになる
生後8~11ヶ月:つかまり立ちをする
生後12ヶ月ごろ:歩く
……こうやって書いただけでも大変ですが、これらの動きひとつひとつが全部、赤ちゃんにとって初めての動き。
例えば、「仰向けからうつ伏せになる」という動きをひとつ取っても、身体はうつ伏せになったものの、腕が下敷きになったまま、これを身体の下から引き抜くのにとても苦労するというプロセスがあったりします。
ハイハイはそれらの動きが全て出来るようになって、初めて獲得する、赤ちゃんにとっての自由な移動手段。
決して、二足歩行が出来ないから仕方なくやっている、というようなものではないんです。ハイハイマジすごい。
想像つきますでしょうか?
寝っ転がった状態から自由に動けなくて、ひとつひとつの動きを身につけて、徐々にできることが広がっていって、というプロセスがどんなに大変か……
……ん?
なんかこれ、知ってるぞ?
寝技の基本動作トレーニングじゃん!?
初心者が初めたときにすごいキツいやつ!!
いや、先に挙げた「仰向けからうつ伏せになる時、身体の下敷きになった腕を引き抜く」なんてのまさに、柔道や柔術の寝技でやる動きなんですよ。
腕を引き抜くところをスムーズにやれるかどうかが結構大きい。
そしてこの動き、普段やらないようなものばかりなので、初心者はマジで基礎トレーニングキツいんです。僕も苦手だった……
でも、これをしっかり練習してスムーズに出来るようになると、グラウンドの攻防においてマジで自由自在に動けるようになります。
レスリングにおいても、練習の最初にみんなでやることが多いらしく、吉田沙保里さんが以前、動画をアップしていました。
心得のある人はわかると思うんですが、「こんなスムーズに動けるもんなのかこれ……」ってなります。さすが、タックルだけでなく基礎の動きが超一流です。
人間は「立つ」よりも「寝る」から始まる
つまり、ハイハイというのはマジですごい「技」なのです。
もしかしたら、赤ちゃん的には2本の足で立って歩くよりも大変かもしれません。だってなにも出来ないところから、手や足を動かすところからようやく、到達できるわけだからね……
赤ちゃんによっては、ハイハイが上手くなりすぎてなかなか立ち上がらない子もいるのだとか。さもありなん。だってこんなすごい技を身につけたんだもんね。
ただ、さすがに立って歩くようになると、赤ちゃんもなかなかハイハイはしなくなります。
寂しいけどそういうもんです。
それでも、「寝た状態で動ける」という選択肢があることって、実は人間にとってとても重要なんじゃないでしょうか。
考えてみれば、仰向けに真っ直ぐ寝る動物というのはあまりいないようにも思います。
ついでに、仰向けに寝た状態で両手を自由に動かし、玩具を触ったりできることは人間の器用さの発達に大きな意味がある、と考える向きもあるようです。
つまり、「二本の足で立つことから空手は始まる」というのは誤りで、実は「寝っ転がるところから空手は始まる」であったということになります。
ハイハイだって、両手を使った可能性の一様態なわけですからね。
寝た状態での可能性が豊かであることってすごい……これは育児をしてみて初めて気がついたことでした。
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