12/14 読書また読書

 今日は古井由吉さんの『槿』と、藤隆生さんの『巨乳秘書 鬼畜の洗脳研修』を読んで一日が終わった。

 とても悪意のある言い方をすればどちらとも性に関わる小説なのだけど、当然切り口は違う。『槿』の方は中年男がストーカー被害(妄想もある)に悩まされる女と、何十年も前の情事の相手が当の中年男だと思い込んでいる女との交わりを、記憶の非孤立性や畳み掛けるような匂いの描写と共に幻想的に描いているのに対し、『巨乳秘書 鬼畜の洗脳研修』は巨乳の姉(婚約状態)が、人的リソース・技術を本業そっちのけで女の変態性の開発に全振りする異常な企業に入社して洗脳された妹を救いに行きミイラ取りがミイラになる話だ。


  どちらの物語も好きだが、『槿』は自分が中年にならないと分からないのだろうなという心理描写が多かったので読むにはまだ早かった気がする。中年男はわりと堅い男とされているけど、主体性をごまかしたまま流されるように女を抱いたりしていて、ここら辺をわりと綺麗な思弁にまとめてしまうのには違和感を感じてしまう。これが若さか。


  僕は官能小説がわりと好きなのだが、どうも最近は紙媒体もネット小説もクオリティがそんなに変わらなくなっている気がしている。多分自分で書くような人はなかなか自分の性癖に合致するコンテンツが無く、自分用に作った結果として個性を放つコンテンツが出力されるというのがある気がする。プレイの種類自体は限度があるので、官能小説はプレイ外の設定を差別化できるかが核になる。AVやエロマンガから逆輸入したような表現を読まされると、こいつシチュエーションを考えるのさぼりおってからにギギギギギ……という気持ちになる。それでいうと今回の『巨乳秘書 鬼畜の洗脳研修』は、悪の企業の設定が軍事機密などを取り扱う会社であり、ハニートラップ対策として女性社員に男性社員の慰安任務を与えるという流れは(異常ではあるものの)論理的であり、かつ高度な技術を取り扱う会社ならではの特殊な素材を活用したプレイなど、設定が多岐にわたって生かされており非常に良かった。……何でこっちの方が感想の分量が多いかというと、『槿』とても長いんだよな。仔細な部分を一回では追い切れなかった所があり解説を呼んでマジかよ全然覚えてないわみたいになった。なにこれ、感性は若いまま脳だけ老化してるのか?多分そう部分的にそう。


 本、最近はいろんなコンテンツと横並びに戦わなければいけなくて大変だなと思うが、僕みたいな人のためにも、出来るだけ多様性を残したまま生き残っていって欲しい。

延命に使わせていただきます