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Ⅵ-#4 簿記の発想(2)

1.簿記にみる経営資源の流れ

 できるかぎり簡単に、簿記の基本にある経営資源の流れを見ていきましょう。下の図を参照しながら読んでください。

①事業を行うための「資産」は、資本金やそれまでに蓄えてきた財等の企業がもっている「資本」(純資産)と事業のために外部から調達してきた「負債」の総和としてとらえられます。
②「資産」の規模によって、事業にどのくらいの「費用」をかけられるか、その規模が決まります。
③「費用」をもとにして企業はできるだけ多くの売上を上げられるよう、事業を行います。
④「費用」よりも多くの「売上」が出れば、それが「利益」となります。当然、費用よりも「売上」が少なければ利益はマイナスで、これが赤字と呼ばれるものです。
⑤「利益」は企業の「資本」を増加させ、次期の事業に投下できる資本を増加させます。

このように、簿記の発想を使うと、費用対効果だけでなく、それによる組織活動の原資となる資本の増減も連動させて考えることができることがその特徴です。

2.学校に置き換えると・・・

ではこれを学校の教育に当てはめてみたらどうでしょう?次の図(赤字の部分)は、簿記の表現を学校に置き換えてみたものです。


①教育活動の原資となる「学校の教育原資」は、学校がそれまでに蓄えてきた財産である「学校の教育資源」の地域やボランティアなどの「学校外の教育資源」の総和としてとらえられます。
②「学校の教育原資」によって、教育活動にどのくらいのコストをかけられるか、「教育活動へのインプット」が決まります。
③「教育活動へのインプット」をもとにして学校はできるだけ多くの教育成果を上げられるよう、活動を展開します。
④「教育活動へのインプット」に比べて豊かな「教育活動のアウトプット」が生まれれば、それが「+α」となります。
⑤「+α」の部分が「学校の教育原資」を増加させ、次年度の教育活動に投下できる資本を増加させます。


ここでミソとなるのが組織の生産性の向上から生まれる「+α」の部分です。企業の場合はそれは利益ですが、学校はもともと営利をもとめる組織ではありません。

けれども学校についてもやはり「+α」は存在します。それは、生徒の意欲であったり、教員の力量や研修時間であったり、学校の時間的ゆとりであったりするかもしれません。

「+α」によって上の学校のバランスシートは次のように変化します。



そしてこうした「+α」を生み出すことができなくなっていることこそが、現代の学校の病理であり、工夫次第では好循環を作っていくことも可能であると筆者は考えています。

次回以降では、プログラム・バランスシートを作り方を解説しながら、学校という組織における好循環への挑戦について考えてみたいと思います。

(次回に続く)