Ⅶ-#5 学習デザインのチェックポイント
他のあらゆる学習プログラムと同様に、教育活動を進めながらその進捗をチェックすると同時に、計画の策定・実施から評価・改善に至るマネジメントサイクルを適切に稼働させないと、活動はやがて形骸化していくであろうこ
とは、プリズムカリキュラムについても同様です。
ここでは、プリズムカリキュラムをより効果的に取り入れていくために着目すべき事柄について、いくつかの視点をあげてみます。
ア)チームの成果と個人の成長
児童生徒が挑戦するチャンスが多ければ多いほど、チームの力を高めるだけではなく、一人一人の児童生徒の力を高めることにもつながります。そのためには、プロジェクト自体が、一部の子どもが活躍するだけではなく、全員で取り組み、一人一人の力を生かせるものなっていることが大切になります。
イ)コーチングの視点
どうしても教員は指導することに偏りがちになってしまいますが、PBLにおいてはコーチングの視点がより大切になります。コーチングの基本は、教員が知っていることをただ伝えるのではなく、児童生徒の能力を最大限に引き出すことです。
児童生徒は学習に主体的に取り組み、教員はコーチングによって子どもの力を引き出すことが、PBLを実践していく上で重要なポイントになります。
ウ)評価の一貫性・継続性
評価は、児童生徒が学習内容を習得するための活動を保障することにつながります。そして、それは「順位」を付けたり、なにかを「選ぶ」ためのものではなく、児童生徒が「成長」するために重要なものです。
その際、プロジェクトを通して頻繁に行う「形成的評価」(学びのための評価)と、プロジェクトの終わり段階で行う「総括的評価」の視点をともに備える必要があります。
一定の発達段階に達していれば、「総括的評価」のルーブリックを児童生徒にも提示して、自身が「どのような成長が期待されているか」を理解できれば一層有効な評価になります。
エ)モチベーションの維持(中盤の力点)
プロジェクトの中盤で、中だるみが起きたり、思ってもみない方向へ子どもたちの思考が進んでいくことがあります。
細かく考えられたプロジェクトであっても、柔軟性が必要になります。決められたことに従うだけではなく、柔軟に活動を変化させていくことが重要です。その中で、時には学習をあまり整理しすぎないことも必要になるときがあります。
また、学習の中盤には「中だるみ」を防ぐための工夫がされているかが重要になります。「中だるみ」を防ぐためには山場をプロジェクトの最後だけにもってくだけではなく、「小さな山場」を中盤につくることも、児童生徒のモチベーションを維持するために有効です。
オ)プロジェクト途中でのチューニング
教員や児童生徒が、プロジェクト途中で活動を調節・修整していくためには、学習途中で他者の考えに触れる場面が必要になります。時には、それは批判につながるかもしれませんが、他者の考えに触れることは、児童生徒の考えを深め、深い学びができるチャンスにつながります。
他者の考え方に触れるために、お互いの成果物を見合う場をつくることが有効になります。お互いの成果物を見合うことで、自分たちにはなかった考え方や手法に気付き、これからの活動を調節・修整していくことができます。
また、形成的評価を有効に活用することも、プロジェクトの調節・修整に有効です。ここでの評価では、教員だけではなく、クラスメイト、専門家、成果物を発表するときの参観者などの複数の視点から相互に行うことでより学習を深めることができます。
カ) アウトプットの柔軟性
アウトプットの方法には柔軟性が必要です。新聞作成、公開発表会、ポスター作製など様々な形式がありますが、児童生徒自身が発達段階に応じて工夫をする余地があることが重要です。
場合によっては、それぞれのチームで違ったアウトプットの方法を選ぶかもしれません。児童生徒自身がアウトプットの仕方を工夫する余地が大きければ、背のことが意欲をより高めることにもつながります。
*「学習活動のチェックポイント」については、以下の文献を参考にその内容を日本の学校の文脈に当てはまるように修正して活用したものです。
(『プロジェクト学習とは ~地域や世界につながる教室~』 スージーボス+ジョンラーマ― 池田匡史・吉田新一郎訳)