Ⅵ-#6 シートの作り方(1)
1.事例
前回までで、簿記の発想を取り入れて、学校の教育活動を考える際には、費用対効果の視点だけでなく、それによって「学校の教育原資がどのように変化していくかを考える必要がある」ということを述べました。
これをワークシートのかたちで再整理したのが、次にあげるプログラムバランスシートです。
このシートでは簿記の発想にヒントを得て、学校の教育原資の変化をとらえられるようにしたものです。学校の教育資源や活動は質的に多様であるので、簿記のように数字で把握することはできませんが、それでも活動と資源の循環関係を把握していくことは可能です。
例えばグループに分かれて行っていた中学校の職業体験3日間を中心に行っていたキャリア教育を、地域学校協働本部の支援を得てより探求的なプログラムに変更する場合を考えてみましょう。
現在のプログラムの概要は地域の産業を体験を中心とする下のようなプログラムを想定します。( )は該当学年の教員一人当たりの必要時間です。
[1]事前準備(職業体験のための準備)
①趣旨説明(1)、②下調べ活動(3)、③生徒の事前訪問(3)、④注意事項の説明(1)、⑤保護者への周知(2)、・・・合計10時間、指導の準備に同時間がかかるとして合計20時間
[2]体験3日間(仕事の実態を知る)
①各職場へのあいさつと参加状況の確認、必要に応じた指導・・・勤務時間をフルに活用するとして3日間、合計24時間
[3]事後指導(学びをまとめる)
①グループ内振り返り(2)、②レポートの作成(3)、③活動報告会(2)、④お礼文書の作成・送付(3)、・・・合計10時間、指導の準備に同時間がかかるとして合計20時間
これをコミュニティスクール(学校応援団)を活用して地域の商工会などと連携して、生徒に職場を紹介と、2日間の体験をしたうえで、事業者に対して提案をする次のようなプログラムに再編する計画を立ててみるとします。
[1]事前準備
①趣旨説明(1)、②下調べ活動(3)、③各事業所の紹介と質問・対話(3)、④注意事項の説明(1)、⑤保護者への周知(2)、・・・合計10時間、③は協力者にゆだねそれ以外は指導の準備に同時間がかかるとして合計17時間,、受け入れ事業者との打ち合わせに5時間・・・合計22時間
[2]体験2日間(仕事の課題と可能性を見つける)
①各職場への状況の確認と必要に応じた指導・・・勤務時間を半分活用するとして2日間で合計8時間
[3]提案プレゼン(仕事の魅力を紹介し提案する)
①グループ内振り返り(2)、②課題と可能性の探索(3)、③プレゼンの作成(3)、④プレゼンの実施(2)、・・・合計10時間、指導の準備に同時間がかかるとして合計20時間
[4]学びのまとめ(学習経験を振り返り自らの成長課題を探る)
①体験レポートの作成(3)、②クラス全体での振り返り(2)・・・合計5時間、指導の準備に同時間がかかるとして合計10時間
2.まずは実施コスト(imput)から
まずは実施コスト(imput)の部分(下図赤枠)です。
上の事例だと例えば次のような記載例が考えられます。
< >は現段階では時間が読めない部分です。
学校についてみると指導にかかわる時間ではプラスが2+20+10=32時間。マイナスが3+16+20=39でマイナスが勝ちますが、<学校応援団の導入に関する準備>がどのくらい大変か読めないので、ファンが残るでしょう。
一方で地域の側を見るとプラスの部分が目立ちますが、後で述べるようにこれが直ちに問題となるとはかぎりません。
(次回に続く)