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シリーズB投資家対談 Vol.2 | SBIインベストメント 河村様 × Terra Drone 代表 徳重

日本発グローバルメガベンチャーを目指すTerra Droneと、テクノロジーを通じてレガシー産業の課題解決に取り組むSBIインベストメントが見据える未来とは?

この度、3月23日にTerra Drone株式会社は、シリーズBで総額80億円(注)の調達を発表いたしました。今回調達した資金を活用し、安全で効率的な空の移動を支える「空のプラットフォーム」UTM技術の開発、各事業成長資金、本活動を実現するための採用活動への投資を行います。(注)追加融資枠含む

今回のnoteでは出資いただきましたSBIインベストメント河村様とTerra Drone代表取締役徳重が、本出資の裏側をお話していきます。

<登壇者 >
□河村 暁 様(SBIインベストメント株式会社 投資部次長)
□徳重 徹(Terra Drone株式会社 代表取締役社長)

1.2人が出会ったきっかけ

質問)河村様と当社と出会うきっかけは、何だったのでしょうか?

河村様)
まず前提として、私は世の中の社会課題に対して、「テクノロジーの力を活用して解決していくこと」を投資テーマとして投資活動
を行っています。国内では、人口の減少及び少子高齢化による労働者不足が喫緊の社会課題となっている中、レガシー産業における真の変革が起きていない市場として建設・物流業界を見ていました。これらの業界は非効率な作業を属人的に行うことで、その場凌ぎとなっている労働集約型の状況が続いていますが、これからはロボティクスによる自動化が加速していくでしょう。特に国内インフラにおける社会課題は、次のように整理しています。

2021年度の建設投資額は約63兆円で、2011年以降は東日本大震災の復興や全国各地のインフラ老朽化による再開発等により、建設投資額が増加傾向にある巨大市場です。一方で特にインフラ設備として重要な道路橋は、4割近くが築50年以上となっており、崩落の危険性があります。そこで、国交省のICT活用工事は2023年度までに全ての公共工事(小規模を除く)について、BIM/CIM(3次元モデルの導入)活用への転換実現を目標としていますが、建設業の就業者数は約500万人と、ピークである1997年から約3割減少しており、業務の省力化が求められています。つまり、労働人口が減少する一方で、測量・点検箇所が膨大となっており、ドローンによる省力化の期待が高いところから、本格導入化していく局面に入っているのではないかと私は見ています。

 また、今回担当するファンドのコンセプトは、第四次産業革命(Industry4.0)の中で新市場を開拓するというものです。私は、産業革命に資するような新市場を創造する領域に注目していました。そうした中で「空の産業革命」といわれているドローン市場に魅力を感じました。ドローン技術はIndustry4.0の技術革新の一つと言われており、このような視点から投資活動をしている中で2019年にTerra Drone社と出会い、今回出資させていただきました。

(河村様)

徳重)
実は、当初SBI様にはお声掛けしていませんでした。というのも、ラウンドが上がるにつれてバリュエーションも高くなりやすいので、ラウンドが上がった段階では出資しづらいことが一般的です。そのため、SBI様のような大手VCから調達できるとは思っておりませんでした。しかし、河村さんから熱心にお声掛けしていただきまして(笑)。起業家のような情熱をお持ちで、良い意味で何度も何度もご提案をいただきました。私自身、VCの方に対して、スマートな印象を持っていたのですが、河村さんは本当に泥臭くご提案いただきました。トレンドとしては、VCのお金がコモディティ化してきているように思います。その中で差を生むのは、トラックレコードや出資いただいた時のサポート体制、あとは人間的な魅力だと思います。そういう意味では、河村さんの情熱的で起業家マインドをお持ちである点、また、情報感度が高く、非常に多くの知識・情報量をお持ちであることにとても感動しました。こうした点から、今回出資いただくことになりました。

2.投資家からみた、TerraDroneの第一印象

質問)河村様から見た、当社の第一印象はどのようなものだったでしょうか?

河村様)
まず、徳重社長の第一印象としては、とにかく熱量がすごい方だなと。そして、他の人が見えていない世界観を持っている方で、その世界観を皆さんに伝えていきたい方であるという印象を持ちました。一方で、会社自体は土木測量・インフラ点検の営業集団で徳重社長によるワンマン経営のイメージが強かったです。しかし、実際にTerra Drone社に足を運んでメンバーに会っていくと、エクスポネンシャル思考を持つ優秀な若い取締役・執行役員が数多く揃っています。徳重社長に頼らなくてもドローンサービス・技術を磨き成長していくことができるエンパワーメント体制を構築している会社であることが分かりました。一言でいうと、「自力で仕事を作り上げる」メンバーがそろっている会社ですね。

徳重)
河村さんは色んなスタートアップ企業を見てこられたと思いますが、「自力で作り上げる」メンバーがいる会社さんというのは、少ないのでしょうか?

河村様)
社長主導の会社さんが大半であると思いますね。そういう意味ではTerra Drone社は「社長が何人もいる」状況なのかなと。権限を部下に委譲し、会社全体でエンパワーメントできる体制が構築されていると思います。他のベンチャー企業には無いものだと理解しております。こうした面は実際に会社の中の状況を見ないと分からないことですね。まさに百聞は一見に如かずという言葉が当てはまり、噂と現場で見てきた中でのギャップを感じました。

このギャップについて分かったことは、徳重社長がこの数年の中で柔軟な姿勢に変わったことが最大の要因ではないかと思います。徳重社長はもともと精神鍛錬で0から1を生み出す行動力に長けていましたが、現在はガバナンス体制の整備に力を入れています。ガバナンスに力点を置かれた理由は、従業員が連結ベースで160人に拡大したことで社長が1人で出来ることの限界をよく理解し、メンバーに任せるように自分を変え組織を変えていったからだと思います。

徳重)
そうですね。確かに私はスタートアップながら海外企業に多く出資することでグローバル展開してきたので、世間的には「攻め」のイメージが強いかと思います。しかし実は性格的にはとても保守的です。当たり前ですが、赤字を許容し過ぎて会社は潰れてしまいますから、そうした保守的姿勢だからこそ上手くいく部分は多かったです。しかしそんな私が多くの挫折を経験し、新規事業は失敗ありきだと強く身に染みてから失敗を多く許容できるようになりました。元来持つ「守る」姿勢と、打ち手を多くスピーディーに事業を進めるという後天的に身に付けた「攻める」姿勢の両輪で経営しています。

3.TerraGroupの人材育成とは

質問)社長自身、人材育成に力を入れていますが、このように評価頂いている点についてどのようにお考えですか?

徳重)
そうですね。まず、前提として今の日本にグローバルで経営できる人材は本当に少ないと思います。なぜなら、経営に必要な修羅場体験や大きな挫折経験を積める機会が限られているからです。私は「新規事業は神の領域」と表現するのですが、新規事業は成功するケースの方が圧倒的に少ない。つまりスタートアップは、失敗が当然の世界です。そのため、成功が前提で仕事を進める大企業と、失敗が前提の新規事業では、積める経験が全く異なります。

現在、EV事業、DX事業を含むテラグループには、10人前後の経営人材がいますが、それぞれ一人当たり数千万円から数億円規模の失敗を経験しています。それでも私は彼らに大きな仕事を任せてきました。何度も失敗を重ねた先で成功することで、本物の経営人材が育つと信じているからです。失敗と成功の繰り返しで、彼らも大きく成長してきました。

4.出資背景

質問)出資いただいた背景を教えていただけますか?

河村様)
Terra Drone社はドローンを活用した国内最大級の土木測量・インフラ点検をグローバルに展開しています。また、UTM事業、空飛ぶクルマ事業によるスケールアップを目指しており、世界で活躍するユニコーン企業になることを期待し投資をさせていただきました。

5.TerraDroneの強みとは?

質問)投資家からみて、当社の強みをどのような部分だと感じていますか?

 河村様)
同社の強みは大きく2点あります。
1つ目は、土木測量を創め時流に即したドローンサービスを多面的に展開していることです。ドローンの機体(ハード)とソフトウェアソリューションを国内外において展開している点が非常にユニークであります。同社は国交省推進のi-Constructionの流れでドローンを活用した土木測量から創業されました。私はそこに焦点を当てて事業展開された事実が非常に評価されるものであると思いますし、SBIもタイミングというものを重視しています。土木測量から始まった取引実績を積み重ねてきた経験があるからこそ、インフラ点検・UTM事業において大企業からの導入実績が増えている状況です。そして現在は更なる事業スケールのフェーズにあり、優秀な経営陣により自走しています。

2つ目は、国内、海外子会社でのインフラ点検の経験をもとに開発した技術を「再現性」のある形に変換して事業会社に横展開している世界でも唯一無二のドローンベンチャーであることです。国内ですと、早稲田大学と共同開発で独自技術によるUAVレーザシステムなどのテクノロジー開発を進めています。また、インフラ点検においても、現場で真に使える点検サービスを創り出す為に、例えば石油プラントを手がける石油会社の案件のように、高所・爆発の危険のある場所においても活躍の場を広げており、電力会社においてもPOCが進んでいます。海外では、Terra Inspectioneering(本社オランダ)は、ロイヤル・ダッチ・シェル社のプラント点検業務の効率化に向けてドローンを活用した膜厚検査のPOC経験があり、この超音波探傷検査技術は、国内の大手鉄鋼メーカー・石油会社などにおいても活用されていますよね。

徳重)
おっしゃる通り、時流と順番はとても大事だと考えます。ニューテクノロジーって、市場のニーズよりも早く生まれるんですよね。例えばメタバースが今盛り上がってますが、10年くらい前にも似たようなテクノロジーが注目を集める時期がありました。そして再び注目を集めるということは、断言はできませんが、ニューテクノロジーに対して市場のニーズが追いついてきたと捉えることもできます。ドローンも同様で、ドローンソリューション自体色んな産業での活用が考えられますが、今どの市場のニーズが高いのかを見極めることが非常に重要です。

創業当初、我々も偶然土木測量に取り組んだわけではなく、色んな分野での活用を検討しました。その中で足元のマネタイズをいかにするかという観点で、土木測量が時流に即していると考え、まず測量から始め、次に点検へと展開しています。一方でビジネスとして先を見据えた時、やはり最終的に重要となるのはプラットフォーム事業です。ドローンのプラットフォームが何かを考えた時に、UTMがそれにあたると初めから考えていたため、欧州で既にUTM事業で実績のあったユニフライ社に出資しました。

河村様)
そうですね。ドローンに加えて、現在ようやく空飛ぶクルマが世間に周知されてきた段階です。地上・宇宙にはマーケットが既に存在しますが、その中間、つまり低空域・中空域のマーケットも今後生まれてくるだろうと考えました。そのうえで関連会社であるユニフライ社のUTM事業が各国で導入されている実績も踏まえ、同社が取り組んできたUTM事業をアップサイドと捉えました。テラドローン社のUTM事業はその新しいマーケットのプラットフォームになり得る存在であると思ったのも出資要因の一つです。更には、将来の「UTMプラットフォーム」構想として、空飛ぶクルマのパイロットの飛行申請件数に応じて支払われる課金モデルを想定した新規事業の検討や、エンタープライズUTMとしてFOS技術(遠隔で複数機の同時飛行を可能にする技術)を商品化してBtoBで提供することを企図されており期待しています。

6.ドローン産業が社会に与えるインパクトとは

質問)2022年度からはついにレベル4(有人地帯での目視外飛行)が解禁され、ますますドローン市場は大きくなると思われます。お二人はドローン産業が社会にどのようなインパクトを与えると思いますか?

河村様)
スマートフォンが普及したように、世界中の人々の生活の中で当たり前のようにドローンを利用していく時代になると思います。ドローンロボティクスの利用シーンは、点検、土木建築、農業、防犯、物流など多岐にわたります。建設、電力、石油、製造業、倉庫、航空、物流、不動産、小売、卸売、保険などの企業群に対しても事業に大きく関与していく時代が来るものと想定しています。ドローンソリューションが無い世界は有り得ない、というような未来がくると思っています。

一方で、課題としてドローンの性能・飛行規制の2点があると思います。

1つ目のドローンの機体性能は、雨や風が強い環境、冬の寒い環境でも飛行可能で積載量が大きい機体・バッテリー性能の高度化や、墜落を防ぐための警告音・緊急停止&パラシュートといった安全装置、保険などの課題が存在します。

2つ目の飛行規制は、障害物、安全性、密集した空域、墜落事故対応などといった法規制などの難題を抱えているのが現実です。2022年度を目途に有人地帯でのドローンの目視外飛行を可能にすることが目標として掲げられており、国土交通省や経済産業省の取り組み、地方自治体の協力のもと2030年に向けて低空域における「空の新交通インフラ」が整備されていくと思います。

徳重)
まずインフラ点検の観点で、日本も含めた先進国では、橋梁やダム、タンク等のインフラは、数十年以上も前に作られたもので、老朽化が社会問題となっています。一方で、インフラ改修にかけられるお金も限られており、加えてそれらを点検できるスキルを持つ労働者の年齢層が高齢化しており、労働力が減少しています。そのため、いかにインフラを効率よく点検・改修していけるかが課題となっています。これらの課題に対して、ドローンソリューションは非常に有効であり、大きな価値を生むでしょう。

またドローンや空飛ぶクルマ等のエアモビリティの観点においては、世界中の大都市で問題となっている交通渋滞を解消できる可能性があるでしょう。空飛ぶクルマというと、まだまだ近未来的で想像が難しいですが、ヘリコプターが電動化かつ自動化したものが空飛ぶクルマと考えれば分かりやすいかもしれません。現在、ヘリコプターは目視運航が必須であり、夜であったり霧が濃かったりすると運航が困難になります。これが自動運航になれば、時間や天候の条件もクリアしやすくなるため、活用の幅も広がります。また、ヘリコプターが仮に電動化すれば、騒音レベルは現状の1/100にまで下げることができると言われています。こうした課題が解消されれば、エアモビリティがより日常生活に密着した存在になるでしょう。

7.出資への期待

質問)河村様は今回の出資を通してどのような期待をお持ちでしょうか?

河村様)
同社は、現在NEDO「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」、大阪府公募案件である「空飛ぶクルマの実現に向けた実証実験」等に参画してPOCを数多く行なっています。「UTMプラットフォーム」はこれから開拓していく新市場ですが、失敗をバネに成功するまで挑戦していくカルチャーを持つTerra Drone社は、運航管理、アーバンエアモビリティ(都市型航空交通)のゲームチェンジを起こす可能性があるかもしれません。

 SBIインベストメントとしては、これまでの組成ファンドでLP出資いただいた企業様とTerra Drone社を繋いでいくことが、新しい市場を作りだすことになり、地域社会の課題解決を図り地方創生にも寄与するものであると思います。世界で活躍するユニコーン企業となるよう、Terra Drone社と一緒に伴走していきたいと思います。 

質問)このご期待に対してどのようにお応えしていきますか?

徳重)
冒頭にも申し上げましたように、河村様には大変ご尽力いただきましたため、財務的なリターンはもちろん、それ以上のお返しをしたいと考えています。というのも、ユニコーン企業はこれまでSBIインベストメント様が出資された企業さんの中から既にあると思いますので、まずは我々もそこにしっかりコミットしたいと思います。加えて、我々の強みであるグローバル展開という点を生かし、我々が世界で勝てる日本発のグローバルメガベンチャーの一例になりたいと思います。

今回は、投資家である河村様と当社の出会いから、ドローン産業の未来、当社の展望についてお話いただきました。お二人ともありがとうございました!

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