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#1773 ファシリテーションにおける問いの重視

今回は、安斎勇樹氏の著書『問いのデザイン』『問いかけの作法』からの学びを整理していく。


・討論:どちらが正しいかを決める話し合い
 議論:納得解を決める話し合い
 対話:新たな意味づけをつくる話し合い
 雑談:気軽な挨拶や情報のやりとり

・質問:問う側が答えを知らず,問われる側が答えを知っている
 発問:問う側が答えを知っており,問われる側が答えを知らない
 問い:両者とも答えを知らない

・問題:何かしらの目標があり,それに対して動機づけられているが,到達の方法や道筋がわからない,試みてもうまくいかない状況のこと

・課題:関係者の間で「解決すべきだ」と前向きに合意された問題のこと

・課題設定の罠
①自分本位 ②自己目的化 ③ネガティブ・他責 ④優等生 ⑤壮大

・課題を定義する手順
(1)要件の確認
(2)目標の精緻化
 ①期間:短期,中期,長期
 ②優先順位:理想,現実,最低限
 ③性質:成果目標,プロセス目標,ビジョン
(3)阻害要因の検討
 ➀そもそも対話の機会がない
 ②当事者の固定観念が強固である
 ③意見が分かれ合意形成できない
 ④目標が自分事になっていない
 ⑤知識や創造性が不足している
(4)目標の再設定
 ➀利他的に考える ②大義を問い直す ③前向きに考える
 ④規範外にはみだす ⑤小さく分割する ⑥動詞に言い換える
 ⑦言葉を定義する ⑧主体を変える
 ⑨時間尺度を変える ⑩第三の道を探る
(5)課題の定義
 ➀効果性があるか ②社会的意義があるか ③内発的動機か

・ワークショップ:普段とは異なる視点から発想する,対話による学びと創造の方法
①非日常性 ②協同性 ③民主性 ④実験性

・ブレーンストーミング
①判断や結論の排除 ②自由奔放な意見
③質より量 ④アイデア同士の結合と改善

・学習環境デザイン
①活動 ②共同体(参加者の関係) ③空間 ④人工物(道具,教材,素材)

・ワークショップ・プログラム
①導入(イントロダクション,アイスブレイク)
②知る活動
③創る活動
④まとめ(発表,振り返り)

・問いのデザインのプロセス
(1)課題解決に必要な経験のプロセスを検討する
 ➀創り出す経験のブロックに分割 ②さらに細分化する
(2)経験に対応した問いのセットを作成する
 ➀探索の対象を決める(個人か,組織か,未来か,過去か)
 ②制約を設定する(価値基準を示す形容詞,ポジとネガ,時期や期間)
 ③表現を検討する
(3)足場の問いを組み合わせてプログラムを構成する
 ➀抽象,具体の段階を設ける ②点数化 ③グラフ化
 ④ものさしづくり(価値基準) ⑤架空設定 ⑥そもそも ⑦喩える

・プログラムのタイムテーブル調整
①個人・グループ ②グループサイズ ③共有方法
④問いの分担(ジグソー) ⑤問いの省略 ⑥ワークショップの回数

・問いの深さを決める変数
①問うためにどれだけの視点が関わるか
②出す答えがどれだけ多様になるか
③仮の答えを出すためにどれだけ時間が必要か

・良いアイスブレイク
①固定観念を揺さぶる ②集団の関係性を揺さぶる
③警戒と緊張をほぐす ④テーマと接続させる

・狭義のファシリテーション:ワークショップの司会者
 広義のファシリテーション:解くべき課題を定義し,課題解決に伴走する

・ファシリテーターの難しさ
①動機づけ・場の空気づくり ②適切な説明
③コミュニケーションの支援 ④参加者の状態把握
⑤不測の事態への対応 ⑥プログラムの調整

・ファシリテーターのコアスキル
①説明力(問いの焦点の明確化,問いの背景の意図,前の問いとのつながり) ②場の観察力(声のボリュームに注目,虫の目と鳥の目)
③即興力(まずは受容し,自分からの無理のない反応を提案する)
④情報編集力(共通点,相違点,情報の構造化,視点の不足)
⑤リフレーミング力 ⑥場のホールド力

・導入のファシリテーション
➀開催に至った経緯の説明
②「二人称の問い」で自分事化させる
③参加を納得させる

・知る活動のファシリテーション
➀視覚的に「必要な情報」を簡潔に伝える
②種まき

・創る活動のファシリテーション
➀知る活動とのつながりを明示する
②場・グループ・個人のレベルで観察する

・まとめのファシリテーション
➀思ったことを正直にフィードバックする
②次の問いの生起

・即興的な問いかけ
①シンプルクエスチョン
②ティーチングクエスチョン(気づきを与える)
③コーチングクエスチョン(引き出す)
④フィロソフィカルクエスチョン(共に考える)

・チーム
①チーフファシリテーター
②フロアファシリテーター
③バックファシリテーター

・空間のレイアウト
①ソシオペタル配置(対面・話し合い)
②ソシオフーガル配置(背を向ける・個人思考)

・「ファクトリー型」から「ワークショップ型」へ
①メンバーは問題解決する
②マネージャーはファシリテートする
③トップは理念を探究する

・フォクトリー型への環境適応による4つの現代病
①判断の自動化による認識の固定化
②部分的な分業による関係性の固定化
③逸脱の抑止による衝動の枯渇
④手段への没頭による目的の形骸化

・チームのポテンシャルを発揮するための循環
①「こだわり」を見つけて育てる
②「とらわれ」を疑い,問い直す

・組織のシステム
①個人による探究(専門性・衝動)
②チームによる対話(価値の創発・多様な個性)
③組織による事業(社会的価値・理念)

・問いかけの基本定石
①相手の個性を引き出し,こだわりを尊重する
②適度に制約をかけ,考えるきっかけを作る
③遊び心をくすぐり,答えたくなる仕掛けを施す
④凝り固まった発想をほぐし,意外な発見を生み出す

・問いかけのサイクル
①見立てる ②組み立てる ③投げかける

【見立てる】
・「見立て」とは対象に解釈を加えること

・観察を支えるガイドラインとしての問い
①何かにとらわれていないか?
②こだわりはどこになるか?
③こだわりはずれていないか?
④何かを我慢していないか?

・見立ての着眼点
①何かを評価する発言:評価を支える「観点」「価値観」を探る
②未定義の頻出ワード:「こだわり」か「とらわれ」かを探る
③姿勢と相槌:表情や頷き,姿勢を見る

・見立ての三角形モデル
①場の目的 ②見たい光景(組織の望ましい状態) ③現在の様子

・場の目的のパターン
①情報共有
②すり合わせ(前提や認識)
③アイデア出し
④意思決定
⑤フィードバック

【組み立てる】
・問いかけの種類
①計画的な問いかけ ②即興的な問いかけ

・問いかけの前提
(1)チームにおける自分の立場や役職を考慮する
(2)元々の自分のキャラクターや芸風に合わせる
 ➀触発タイプ(働きかけ×感情)
 ②提案タイプ(働きかけ×論理)
 ③共感タイプ(受け止め×感情)
 ④整理タイプ(受け止め×論理)

・質問を組み立てる手順
①未知数を定める ②方向性を調整する ③制約をかける

・未知数を定める
①チームの目指す方向性に未知数を置く
②定義されていないキーワードを未知数にする ※Why型,What型

・方向性を調整する
(1)主語のレベル(個人,組織,社会)
(2)時間のレベル(過去,未来)
 ➀歴史(組織×過去) ②ビジョン(組織×未来)
 ③経験(個人×過去) ④願望(個人×未来)

・制約をかける
①トピックを限定する
②形容詞を加える
③範囲を指定する
④答え方を指定する(フォーマット,所要時間,答えの個数など)

・2つのモード
①フカボリモード(こだわりの解像度を高める)
②ユサブリモード(とらわれが見えたときに,新しい可能性を探る)

・フカボリモードの質問
①素人質問:素朴な疑問をぶつける
②ルーツ発掘:こだわりの源泉や背景情報を掘り下げる
③真善美:メンバーやチームの根底にある哲学的な価値観を探る

・ユサブリモードの質問
(1)パラフレイズ
 ①たとえる ②数値化 ③動詞化 ④禁止 ←発散
 ⑤定義 ←収束
(2)仮定法
 ①立場の転換 ②制約の撤廃 ③架空の物語
(3)バイアス破壊:特定の「とらわれ」に揺さぶりをかける

・ミーティングの基本的な流れ
①イントロダクション ②チェックイン ③話題提供
④意見交換 ⑤ディスカッション ⑥成果の確認 ⑦まとめ

・プロセスの使い分け
①谷型のプロセス:歴史→経験→願望→ビジョン
②山型のプロセス:経験→歴史→ビジョン→願望

【投げかける】
・ミーティング・話し合いは「開始5分」が勝負
 ※熟練者は冒頭に難しさを感じ,初心者は中盤以降に難しさを感じる

・注意を引くためのアプローチ
①予告(プッシュ型・頻繁) ②共感(プル型・頻繁)
③煽動(プッシュ型・たまに) ④余白(プル型・たまに)

・予告
➀「意見を求めること」を事前に伝える
②話し合いの流れを変えるときに予告で割り込む

・共感
➀メンバーの心の声を代弁する
②ユサブリモードの前振りに共感を入れる

・煽動:相手の気持ちを煽り立てる

・余白:前振り的に焦らす質問をする,沈黙をする

・問いかけのレトリック ※問いかけの文言を工夫する
①光の量を足す(質問の前提や特定箇所の印象を強める)
②光の色を変える(質問の意味を拡げ,イメージをふくらませる)
③光を和らげる(質問の言葉のニュアンスをぼやかす)

・光の量を足すタイプ
①倒置法(語順を逆にする)
②誇張法(フォーカスポイントを当てる)
③列挙法(具体例を挙げる)
④対照法(対をなすメッセージを添える)

・光の色を変える
①比喩法(別のものに例える)
②擬人法(人間に見立て,感情を込める)
③共感覚法(五感に関する表現を使う)
④声喩法(オノマトペを足す)

・光を和らげる
①緩叙法(二重否定を使う)
②婉曲法(オブラートに包む)

・問いかけのアフターフォロー
(1)意見が出ないとき→足場かけをする
 ➀前提を補足する ②意義を補足する
 ③ハードルを下げる(仮定法を使うなど) ④手がかりを渡す
 ⑤リマインドする(再度質問する,問いを提示する) ⑥組み立て直す
(2)意見が出るとき→本音が語られていない
 ➀ハードルを下げる ②相手の懐に飛び込む(ぶっちゃけ~、正直~)


以上が、書籍からの学びである。

自分がファシリテーターになった際に活用したい。

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