バックパックに貴重品をつめるときに大切なこと
バックパックには、旅人の全てがつまっていると言っても過言ではない。希望も夢も、大切な思い出も。
ただ、そんなバックパックは旅中、おもいのほか乱暴に扱われる。投げられたり、上に他の荷物を置かれたり。そう、バックパックに荷物をいれるとき注意すべきことはたくさんある。
今回は、そんなパッキングに関する旅の失敗体験。
スペインのバルセロナからエジプトのカイロへ。長い道のり、さっそく空港で、宿の迎えがこないというトラブルもありつつ、なんとかゲストハウスのチェックインを終え、部屋にはいって長いフライトの疲れを癒そうとベッドでくつろいでいると。
何やら部屋の中に漂う焼肉の匂い。
おい、なんだ、この宿の1階は焼肉屋か?それとも下でバンサンカンのCMの撮影でもしてるのか?カンカンカンカンバンサンカン。焼肉焼いてもピラミッド焼くなみたいなやつか?
違う。あきらかにこの焼肉の匂いは部屋の中からしている。前に泊まったやつが部屋でも焼肉でもしたのだろうか。それも違う。明らかに今焼肉をしていなきゃこんな匂いは発生しない。だが、ゲストハウスで焼肉をしている気配はない。
いよいよ、匂いの元を探し出すと、それはすぐに見つかった。匂いの元凶は明らかに僕のバックパック。もう原因は火を見るより明らかである。
カイロに来る前に、僕は日本に一時帰国している。一時帰国からまた世界へ羽ばたく前日、スーパーで一人ニヤニヤしながら買ったのが、味噌汁と、サッポロ一番塩ラーメンと、ふりかけと焼肉のたれだ。
恐る恐るバックパックを開けてみると、そこはもう焼肉屋よりも焼肉の匂いがした。。
ほとばしる焼肉のたれ。被害はバックパックにとどまらない。バックパックの中の衣類や、文庫本など全てが焼肉くさい。ふりかけも、サッポロ一番塩ラーメンまで焼肉くさい。どうやら全てが浸食されてしまったらしい。
焼肉の匂いをくさいと表現することに異論があることは認める。焼肉の匂いはいい匂いだし、人が幸せを感じる匂いであることは間違いない。赤ちゃんはお母さんの匂いと焼肉の匂いを嗅いだ時に泣きやむし、おじさんは焼肉の匂いとキャバ嬢の香水の匂いにめっぽう弱い。
でも、それは「焼肉の匂い→焼肉が食べられる」という図式が成り立つ時だけであって、今はそうじゃない。
バックパックも、パンツも、文庫本も、食べられないんだ。
急いでバックパックから全てを救出し、すべてを水で綺麗に洗い、なんとか応急処置で対処した。だが、部屋はまだまだ焼肉くさい。全てを水で綺麗に洗い流したはずなのに、窓を開け放っても、必殺ファブリーズ(これも日本でGetしてきた)を放ってもまだまだ焼肉くさい。ファブリーズは、匂いの全てを解決するものだと思っていたが、僕の靴と焼肉の匂いだけはどうにもできないらしい。
これは一種の拷問だ。カイロという日本式の焼肉から最も遠い地で、焼肉の匂いを嗅がされるだけ嗅がされて、一口も食べられずに生活するなんて。しかも、楽しみにしていた焼肉のたれかけご飯を実現させる間もなく、焼肉のたれは匂いだけを残して、どこかへ行ってしまった。
大好きなあいつは、懐かしい香水の香りだけをほのかに残し、僕の元から静かに去っていった。だと、少しは文学的にもなる。
大好きなあいつは、懐かしい焼肉のたれの香りだけをしっかり残し、僕の元から静かに去っていった。では、何も文学的にならない。
結局そのゲストハウスでは2泊3日お世話になった。最後にチェックアウトをするころには部屋の匂いはだいぶましになったが、それ以降、旅の間中バックパックを開け閉めするたびに、かすかに漂う焼肉の匂い。。僕と妻はそれから、大切な食材はジップロックに詰めるようになった。ジップロックでちゃんとふたをしていれば、匂い漏れが気になることもほとんど無いし、こぼれても被害が他に及ぶこともない。
人の記憶は、五感全てに残るのだ。僕は今でも焼肉屋の前を通り、焼肉のにおいを嗅ぐと、あのカイロの宿の光景を思い出す。
無理やり文学的に仕上げてみたが、全然文学的じゃない。ちなみに、日本で焼肉屋の匂いを嗅いだら、いてもたってもいられなくなるので、極力焼肉屋の前は通らないようにしているのが僕です。
この失敗談から学んだこと
1、こぼれる危険性のある食材などはジップロックにいれて、パッキングするべし。
2、世界一周中に一時帰国しても焼肉のたれは買わない方がいい。
3、ふりかけとサッポロ一番塩ラーメンは買うべき。
4、覆水盆に返らず。
5、香水の残り香は文学的 焼肉のタレの残り香は拷問
旅の失敗から学んだことは以上です。それでは。
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