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近くのスーパーではなぜ毎日パクチーが売り切れているのか

いつも決まったスーパーにいく。行く時間もほぼ同じ。仕事終わりにスーパーに寄る。

野菜コーナーをぶらぶらしている時、いつも残念に思うことがある。パクチーが売り切れているのだ。

パクチーが好きだ。あの匂いや味が与える料理へのアクセント。あれがいい。だから、サラダに投入してやろうと思い、毎回スーパーに寄るたびにいつもパクチーを買い求める。でもいつも時すでに遅しである。
パクチーの棚はすでに空になっており、横で売られている謎のハーブが侵略していたりする。

さてはこのスーパー、パクチー売り場を設けておきながらパクチーを仕入れていないのでは?という疑念を抱き、休みの日に検証してみたこともある。

開店と同時にパクチー売り場に行き、在庫状況チェックするとそこには確かにパクチーがあった。
(なぜかそのタイミングではパクチーは全くいらない気がして、買わなかったらその夜もなくて後からすごく後悔した)

検証の結果「このスーパーには相当なパクチー好きが毎日パクチーを求めにやってきている」ことが判明した。


そこで仮説を立ててみた。どんなパクチー好きがこのスーパーにパクチーを買い求めにくるのか。

(仮説1)1人の男が、毎日スーパーにやってきて全てのパクチーを買い占めている。
彼はどんな料理にもパクチーを入れる。ラーメンにも、カレーにも、鍋にも。恐ろしいくらいのパクチーを入れる。無類のパクチー好きだ。

とうとう彼はバニラアイスにさえパクチーを添えるようになる。(これハマる人はどハマりするらしい。)


もはやパクチー中毒。パクチーに食生活を乗っ取られた男。
彼は次第に、パクチーに合う料理しか作らなくなる。もはやパクチーは料理を盛り立てるスパイスではない。
パクチーのために料理を作る。パクチーがいかに料理を引き立てられるかではなく、その料理がいかにパクチーにあうかだけを追求する。

そして彼は、パクチーにあう究極の料理を見つけるため東南アジアへ旅に出る。究極のパクチーを求める旅ではない。パクチーを盛り立てる究極の料理を探す旅である。

それは本来、料理のアクセントとして使うパクチーを、主役にすえてしまう行為である。
いうならば佐藤二朗を主役にすえたドラマのようなものであり、ビブラスラップを中心に曲作りするようなものである。

ちなみに、佐藤二朗は身長が181cmもある。思いのほか高い。

あと、ビブラスラップとはこれのことだ。

調べてみて、初めて名前を知った。おそらくこれからもその名前を呼ぶ機会はないだろう。ビブラスラップという本名よりも「あのガイーンていう謎の打楽器」と呼ぶ機会の方が多いだろう。
だってこちらは名前を知っていても、会話の相手が名前を知らないことの方が圧倒的に多いから。もはや名前を「ガイーン」に改名して欲しい。


(仮説2)このスーパー周辺に、程よくパクチー好きのヒモ男が1人、エスニック料理好き主婦(外出時はターバン巻きがち)が1人、呪術師が1人住んでおり、その3人が定期的にパクチーを仕入れにきている。

3人はそれぞれ、毎日ではないが定期的にパクチーを仕入れにくる。勝手に組まれたローテーションでパクチーが購入されていく。
パクチー好きヒモ男は月・木に、ターバン主婦は火・土に、呪術師は水・金・日にパクチーを仕入れにくる。それぞれの需要にあった供給はなされているが、お互いの存在は全く認知していない。

ちなみに、ヒモ男を養っているキャリアウーマンはパクチーがそんなに好きではない。というか嫌いだ。それで何度か喧嘩になったこともあるが、それでもなんだかヒモ男を手放すことができない。
喧嘩をするたびに捨てようと思うものの、最後にはそのヒモ男の可愛さと可哀想さが彼女を繋ぎとめてしまう。

ちなみに、呪術師がどのような呪術を使い、それにどうパクチーを使うかは謎である。呪術師はいくつものハーブや得体のしれない何かを鍋で煮込んでドロドロにすると相場が決まっているので、おそらくその材料の一種なのであろう。知らんけど。

主婦はターバンを30枚ほど所有しており、寝るときは必ずタイパンツだ。


この2つの仮説のどちらかが、このスーパーとパクチーの間で起きていることの一部始終である。

仮説1の男は東南アジアに旅に出ているため、仮説2が濃厚だろう。

だから中途半端なパクチー好きで、夜にしかスーパーに立ち寄らない僕は、パクチーを手に入れられない日々が続いている。

冷静に考えると、家の近くのスーパーはもっと積極的にパクチーを仕入れた方がいいことがわかる。あとパクチーを2束ほど多く仕入れていただければ、僕が定期的に夜にパクチーを購入します。パクチーが叩き出す売り上げは今よりあがり経営が楽になる。

この文章を読んでいるスーパーの仕入れ担当者の皆さん。今すぐ店舗のパクチーの売れ行きについて情報を分析してください。ターバンを巻いた女性や謎の呪術師が買い物に来ていないか、どうか客層のチェックも忘れずに。

そして、我がスーパーこそこれに該当する店舗だとお気づきの際には一刻も早くパクチーの仕入れ量を増やしていただきたい。

しかし、増やしたところで何かが変わるのだろうか。おそらく私の他にもパクチーを狙っている主婦か会社員か学生が1人くらいはいるだろう。その彼か彼女が僕よりスーパーを訪れるのが早ければ、結局僕はパクチーを手に入れられないことになる。


いつまで経ってもパクチーが手に入らない。仕事帰りにパクチーを手に入れることは、僕の住んでいる地域では不可能なことなのかもしれない。どうすればいいんだ。

あぁ、サラダにアクセントが欲しい。生活にアクセントが欲しい。誰か僕にパクチーを恵んでください。
あとビブラスラップの使われている曲も教えてください。

サポートしていただいたお金は、旅の資金に回し、世界のどこかであなたのことを勝手に想像してニヤニヤしたりなどします。嫌なときは言ってください。