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タイで出会ったお坊さんが、全然LINEを返してくれない話

お坊さんに送ったLINEは既読スルーだった。


タイのバンコクではいろんな仏教施設にいった。

暁の寺という名のワットアルン


三島由紀夫の『暁の寺』に描かれた寺らしい。

それからワットポー


涅槃像がいるところ。

それからワットプラケオ

ここは、僕が短パンだったがために入れず、足を覆い隠すための布を買いに行っている間に閉まっちゃったという「短パン小僧の大ポカ」をやらかしたお寺。だから中は見れていない。


そんななか、僕はあるお坊さんとLINEを交換した。

それは、ワットアルンでの出来事。

観光中に、タイ人の若者に声をかけられた。
彼はその時、私服であったが、私はお坊さんだと自己紹介した。名前はもう忘れたがムチャラさんみたいな名前だった気がする。

彼は英語で話しかけてきたので、初めは何を言っているかわからなかったけど、よくよく聞いてみるとメディテーションという言葉が聞こえた。

メディテーション=瞑想のことだ。

さすがお坊さん。観光客である僕たちに瞑想の大切さを説いてくれるのだろう。だんだん英語に慣れてきて、少しずつお坊さんの言ってることがわかってきた。

直訳するとだいたいこんな感じ。

「日々瞑想をしていると、いろんなことに惑わされずに生きていくことができるようになる。毎日最低でも1時間、瞑想をした方がいい。例えば君が心穏やかな生活を送りたいと思った時、世の中にはすごくたくさんの誘惑がある。そういったものに心惑わされたらどうなると思う?」

答えにつまる私。心惑わされまくった結果、世界一周中。いろんな誘惑に負けて各国をフラフラしているので、何も言えねーの北島康介状態である。

「心穏やかに過ごせないだろ?君にはガールフレンドがいるか?」

妻がいると答えると、お坊さんは

「だとしたら、他の可愛い女の子に惑わせれたら大変だ!今すぐ瞑想に取り組んだ方がいい」とのこと。

まぁそれもそうだなーと思っていると、横を別の日本人観光客の女性二人組が偶然通りかかった。

するとお坊さんは、ちょっと待ってろといい、その女の子二人に先ほどと同じように声をかけ、熱心に瞑想の大切さを説きだした。

このお坊さんが一番誘惑に負けている?

そんな気もしたが、彼はきっと多くの人に瞑想の大切さを広め、多くの人に心穏やかに過ごしてほしいのだろうとかつてない拡大解釈をし、しばらく待つことにした。

さすがに女の子二人も、ちらちらとこちらの様子を伺っている。さっきまでおしゃべりしてた短パン野郎がほったらかしだが大丈夫なのか?という目線を感じる。

彼女たちもまだまだ瞑想が足りていないようだ。こちらを気にしている場合ではない。お坊さんの話に集中したまえ。

とはいえ、かれこれ5分ほど待たされた頃にはさすがにもう行こうかなとも思ったが。そう考えるのも瞑想が足りていないからなのだ。きっと。

そうこうしているうちに、お坊さんはポケットから颯爽とスマホを取り出して、彼女たちにこう告げた。

「本当の瞑想を知りたければ、僕がこのあと継続的に教えてあげよう。だからLINEを交換しよう」と。

新手のナンパか!?

とも思ったが、そんなわけはない。彼はただ瞑想の大切さをこの女の子たちに深く、継続的に伝えたいだけなんだ。

そう自分に言い聞かせて、呼吸と心を整える。

ただ女の子たちは、LINEはええかなという雰囲気でこちらの様子をうかがってくる。

助け舟を出すべく、僕がお坊さんに近づいていき、僕も教えてほしいのでLINEを交換したいと申し出ると、じゃっかんいやそうな顔をしながらLINEを交換してくれた。

ちなみに女の子二人は結局LINE交換はせず、しれーっとその場から立ち去っていった。

さて、これで場は整った。いよいよ、お坊さんから瞑想の真髄について聞けるときがやってきた。

彼女たちに5分かけてレクチャーしたことを僕にも教えてくれ。

するとお坊さんはこう言い放った。

「あとはLINEで教える。」

まあ仕方ない。お坊さんにも約束があるのかもしれないし、もしかすると今から瞑想の時間なのかもしれない。
決して女の子二人のLINEを聞けなかったからすねたわけではなかろう。と必死に自分に言い聞かせて了承すると、お坊さんはその場を去っていった。

まるで禅問答のような時間であった。
大きく波打ちかけた僕の心は、「お坊さん」と「瞑想」というパワーワードのおかげでなんとか凪の状態にとどまったわけだ。

そして、その後お坊さんからLINEがくることはなかった。


一度だけ、こちらからLINEしてみたが、お坊さんに送ったLINEは既読スルーだった。

彼は果たして本当にお坊さんだったのだろうか?

そして、私はこの話の中で、何回お坊さんと言ったのだろう。

まだまだ心穏やかになれそうにない。

だけど、そんな日々も悪くはないと思っている。

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