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【監査法人の海外駐在】駐在員になるメリット・デメリット

ジャパンデスクとして海外駐在すると得られることはいろいろあります。デメリットとともにお話しします。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

「監査法人の海外駐在」シリーズも3回目になりました。
過去の2回は、次のマガジンにまとめていますので、よかったらご覧ください。

今回は、海外駐在するとどんないいことがあるか、を中心にお伝えします。
いいことばかりではフェアでないので、デメリットもお話ししましょう。
なお、これまでの2回と同じように、海外派遣の中でもジャパンデスク業務が中心になる場合を前提にしています。


海外駐在のメリット

海外での生活を経験すると、視野が広がる、日本を客観的に見られるなどのメリットがあります。
ここでは、もっと仕事に直結するものに絞ってお話しします。

問題解決能力が身に付く

前々回にお話ししたように、ジャパンデスクの仕事はよろず相談窓口です。持ち込まれた困りごとを解決するのが仕事。
またクレーム対応も問題解決にほかなりません。

前回で触れたように、半年ほど経つと質問もクレームもほぼ一巡し、慣れてきます。
それでも、想像の上を行く質問・クレームは来ますので、その都度対応策を編み出さないといけません。

こうやって日々問題解決にあたっていると、次々と勃発する問題に対応できる力が備わります。

コミュニケーション能力が向上する

語学が鍛えられることは言うまでもありませんが、語学だけなら日本でもがんばればある程度は向上できます。
海外に行ってこそ得られるもの、それは異文化コミュニケーション能力です。

日本の監査法人が日本の会社であるように、海外のネットワークファームの事務所は現地の会社です。日本企業の子会社と違って、日本の文化やコミュニケーションに慣れた組織ではありません。

そんな中で意思疎通を図らないといけないのが、駐在員のコミュニケーションです。

もう一つ重要なのが、クライアントの日本人駐在員とのやり取りを通じて、日本語でのコミュニケーション能力も向上することです。

クライアントである子会社に派遣されている駐在員は、経理畑でないことが多く、経理畑でも経理全般を経験した人は少ないと言えます。
そんな方々に理解いただくためには、より高い説明能力が求められます。
手を変え品を変え説明しているうちに、力がつきます。

度胸がつく

海外旅行では、国内旅行だと考えられないようなトラブルが起こりますよね? 海外で生活し、仕事をすればなおさらです。

驚くようなことが続くと、人間は慣れるもので、あまり驚かなくなってきます。

「度胸がつく」とは、言い換えると「何が起こっても冷静に対応できる」ということです。
想定外のことが起こって恐怖や怒りといった感情に支配されてしまうと、正常な判断ができなくなります。
たいていのことには冷静でいられる、これは強い武器になります。

人脈ができる

クライアントの日本人駐在員とは、「駐在員仲間」という親近感があり、子どもが同じ学校に行っているなどで家族ぐるみのお付き合いになることもあります。
また、親会社から遠いからか、本音もよく出ます。

帰国後、クライアントの親会社と監査法人とでそれぞれが昇格し、役員とパートナーとして関係が維持できるのが理想です。

個人的には、クライアントの人脈よりも、ファーム内の人脈の方が影響が大きいと感じています。
駐在先の事務所の人たちとの関係も重要ですが、駐在員の人脈の方がさらに影響が大きいと言えます。

ずっと日本にいると、転勤などがなければ監査法人内で知り合う人数は限られると思います。
一方、海外には全国から駐在に来ています。その人たちとは、同じ時期にともに苦労した戦友のようになります。一番心置きなく、愚痴を言いあえる仲間です。

その戦友たちは帰国すると全国に散らばります。もともとしっかり人選され将来を嘱望されて駐在している人たちなので、活躍する可能性も高くなります。
そうすると、お互い助け合い励まし合う、優秀で心強い仲間たちになります。


海外駐在のデメリット

私自身は海外に行きたくて行かせてもらいましたので、デメリットは感じませんでした。
それでも想像を巡らせると、次のようなところかなと思います。

専門分野がぼやける

ジャパンデスクとして赴任する場合では、なんでも対応しないといけないため、知識が薄く広くになります。
例えば、税務の質問が多いと現地の税務に詳しくなりますが、体系的に学んだわけではないのでどうしても断片的な知識になってしまいます。

長い年数いると幅広い知識が蓄積されますが、何の専門家なのかよく分からなくなってきます。
駐在先がニッチな国であればまだよいかもしれませんが、「アメリカの専門家です」という人に何を頼めばよいのかよく分かりませんよね?

日本国内でのキャリアパスが一旦途切れる

大きいクライアントのチームにいると、キャリアパスがある程度見えているかもしれません。
「シニアマネジャーのトップはあと2、3年でパートナーになるだろうから、次はあの人で、がんばればその次に自分に順番が回ってくる……」

そんなときに海外駐在に行ってしまうと、狙っていたポジションはほかの人に取られてしまうことになるかもしれません。

個人的には、そんなことよりも行けるときに海外に行っておく方が、長い人生の中でメリットの方が大きいと思います。
ただ、感じ方は人それぞれなので、デメリットが大きすぎると考える方もいらっしゃるかもしれません。

生活が大きく変わる

当たり前なんですが、住み慣れた日本を離れて知らない土地で生活基盤を整え、仕事を始めるわけですから、日常は大きく変わることになります。
それが耐えられない、ということであれば、海外駐在は難しくなります。

また、自分は行きたくても家族などの事情で行けないこともあるかもしれません。


おわりに

メリットとして「海外に行くと昇格しやすくなる」と考えられる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、もともと優秀だから選ばれている上に、ここにメリットとして書いたことで成長できるためだと考えて、ここには挙げませんでした。

と、断定的に書いてしまいましたが、海外駐在に行った人はそれぞれ違う経験をしていると思います。
メリットもデメリットも、もっとあると思いますので、ここに書いた以外のことが頭に浮かんだ方はぜひご教示ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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