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アジア各地のアーティストたちによって、演劇作品が変異しながら長い旅をするプロジェクト「テラジア|隔離の時代を旅する演劇」。その旅の道中を、みなさんと共有します。
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記事一覧

テラジアアーティストインタビュー Vol. 6: ナルモン・タマプルックサー(愛称ゴップ)

日本発『テラ』 の最初の感染地はチェンマイ取材日、現地は夕方だったが、直前まで学生の試験監督をしていたとか。母校のチェンマイ大学で演劇を学ぶ学生を教える常勤講師をしながら、演劇人として活動し、その上合気道の師範として道場も運営と、まさに八面六臂の忙しさである。 「フルタイムの教員になって生活が一変しました、学生と年に4本、大学内の劇場で上演する作品を作っています。これまで大小含めて30作品以上。学生たちはそれぞれの文脈で作品を作っていて、面白いです。今、彼らと試みているのは

テラジア アーティストインタビュー vol.5 ズン・エイ・ピュー(アーティスト)

アートの道、医学の道。アーティスト ズン・エイ・ピュー(以下、ズニ)には、アーティストと医師という2つの顔がある。彼女はどのようにして現在の活動に至ったのかをまずは聞いた。 「6歳の時に子どもの美術コンクールがあって、『参加したいです』と参加することになったんですが、確か『麻薬防止』みたいなテーマでした(笑)。学校は、国際的な子どもの絵画コンクールにも作品を応募してくれて、4年生の時に日本の福岡児童作品展で金賞をもらいました。私に芸術の才能があるかもしれないと気づいた親が、

テラジア アーティストインタビュー vol.4 カミズ(アーティスト・アートセラピスト)

なぜ、生と死にフォーカスするのか絵画やドローイング、アートプロジェクト、そしてアートとヒーリングのワークショップやプログラムまで、多岐にわたる創作・活動を行うカミズ。「生と死」というテーマに触れるようになったのには、どのような理由やきっかけがあるのだろうか。 「以前から個人的には死について関心を持っていましたし、それは仏教的な関心からでもありました。仏教で瞑想や色んな訓練をするのは、全ては死ぬ時のための準備というところがある。死ぬ瞬間に何を思うかとか、どのようにその瞬間に

テラジア アーティストインタビュー vol.3 稲継美保(俳優)

ミニマムな座組の中から生まれた『テラ』もともとは創作ダンスをやっていたという稲継。ダンス作品を作れる人になりたいと、東京芸術大学の音楽環境創造科に入学し、そこで坂田ゆかりと出会う。 「よくあることだとは思いますが、大学に入って自分の方向性に迷子になった時期があって。そういう時に先輩だった坂田さんに、一人芝居に出演しないかと声をかけられたのが縁の始まりです。それまで演劇の経験はなかったんですが、妙に、やってみようかなと思い引き受けました。そこから坂田さんの卒業まで二人で、何

インドネシア滞在レポ TIM

滞在したホテル 今回、私たちテラジアメンバーが泊まったのは「IBIS Budget Cikini」というホテルでした。チェックインのためにロビーに向かう途中、楽しげな市民プールが眼前に広がります。水着を持ってくればよかった…と早速後悔。 お部屋はこんな感じです。 近くに打ち合わせできるカフェが複数あります。 ホテルから徒歩1分の煌びやかなアートコンプレックス このホテルが選ばれたのは、ずばり立地が良いから。ジャカルタのチキニという繁華街に位置し、徒歩圏内にレストラン

インドネシア滞在レポ テアター・クブール

墓地の中に劇場? 今回の旅を語る上で欠かせない場所のひとつが、テアター・クブール(墓地劇場)です。私は事前に「ジャカルタの墓地に劇場がある」「身体能力の高い人たちがそこを拠点に活動している」という断片的な情報を教えてもらっていました。しかし行ってみるまでは全く想像がつきません。墓地劇場とは一体、どういうことなんでしょう? 1983年旗揚げの劇団 こちらはテアター・クブール主宰・演出家のDindonさん。劇団を創立したのは1983年。劇団はまもなく40周年を迎えるのだそう

インドネシア滞在レポ はじめに

つづきを読む>> こんにちは。私は坂田ゆかりといいます。普段は東京に住んでいます。いろんな仕事をしているのですが、今日は、テラジアの演出家のひとりとして、このレポ記事を書き始めました。 テラジアって何? …ということが気になる方は、続きはさておき、こちらのイベントにジャンプして来てください。私たちは今、11月に行う「テラジア オンラインウィーク 2022+オンサイト」というミニフェスの準備をしているところです。演劇・音楽・トーク満載で、「これがテラジアか!」ときっとご納

「テラジア オンラインウィーク2022+オンサイト」開催決定!

会期は 2022年 11月4日(金)〜13日(日) 「テラジア|隔離の時代を旅する演劇」は、2020年、世界規模のコロナウイルスの流行とともに始まった、アジアのアーティストたちによる4年間の国際協働プロジェクトです。 3年目となる2022年11月、日本、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシアのアーティストたちによる作品やトーク映像をオンラインで連続公開する10日間のミニフェス「テラジア オンラインウィーク2022」を開催します。 今年はアジア各地でオンサイトイベント

テラジア アーティストインタビューVol.2 渡辺真帆(ドラマトゥルク)

『テラ』『テラ 京都編』のドラマトゥルクを務めた渡辺真帆は、小学生時代をカタールで過ごし、大学生時代に留学していたパレスチナで演劇に出会い、2022年現在はスイスに暮らしている。 Zoomの画面越しに聞いた彼女の話のなかで印象的だったのも、土地への愛着だった。 「父の仕事で、小1〜6のうちの4年半、ドーハにいました。 日本で中高生時代を過ごして、大学に進むときに『将来、何を勉強したかと関係なく、ただ良い大学に行ったから良い企業に就職していく、みたいなのは嫌だなぁ』と思って、

【カミズによるワークショップレポート】あなたにとっての「死」とは何か

2022年5月に開催される展覧会「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」。 アーティスト カミズは、ミャンマー国軍によるクーデター以降、多くのいのちが失われる現実を目の当たりにし、一人ひとりの顔をかたどったマスクを制作してきました。 ミャンマーから本展会場に届く100のマスクには、鎮魂の祈りと、生の証、死の真実が刻まれています。 彼らの生、そして死とは、どのようなものだったのか。 いま生きている、わたしたちにとって「いのち」とは何か。

【イベント情報】展覧会「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」

2022年5月1日(日)〜10日(火)、テラジアの参加アーティストの1人であるカミズの作品を中心とした展覧会を、東京藝術大学大学美術館 陳列館にて開催します! ぜひ、たくさんの方にご覧いただきたく、ここでもご紹介いたします。 展覧会「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」は、 ミャンマー出身のカミズが、2020年2月の国軍によるクーデター勃発以降、 弾圧の犠牲となった人々の顔をかたどった「マスク」を制作したプロジェクトを紹介するもので

テラジア アーティストインタビューVol.1 演出家 坂田ゆかりが『テラ』に辿り着くまで/「テラジア」はどこへ行くのか

2020年、コロナウイルスの世界的な流行とともにはじまった新時代の国際協働プロジェクト「テラジア|隔離の時代を旅する演劇」。昨年11月には「テラジア オンラインウィーク2021」と題して、日本、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシアのアーティストたちによる作品やトークイベントを一挙公開し、成功をおさめた。 「テラジア」の出発点となったのは、2018年に東京・西方寺で上演された演劇作品『テラ』だ。三好十郎の詩劇『水仙と木魚』をベースに、文学作品、会場となった西方寺をとりまく

TERASIAに外部観察者として関わるとはどういうことか?

Text by 田中 里奈(興行研究者/明治大学 助教) 序に代えて  「テラジア オンラインウィーク2021」への寄稿は打ち合わせから始まった。最初、「テラジア隔離の時代を旅する演劇」(以下、「テラジア」と略記)というプロジェクトが、演劇研究者の視点から見てどう思われるかを文章化してみないか、と坂田ゆかりさんからお話しを頂いた。それは坂田さんからたびたび問われてきたことだったので、一度言語化するべきとは思った。だが、いま「演劇研究者の視点」で語れるほど、私はプロジェクトと

地獄の唱導と芸能―絵解き・落語・芝居/前篇

書き手:渡 浩一(明治大学国際日本学部教授) 表紙:「十界双六」(国立国会図書館所蔵) はじめに 思いがけないご縁に導かれて、『テラ 京都編』の記録映像を視聴し、観劇の趣味などまったくないのに一文を寄稿させていただくことになった。  正直、映像を視聴しての印象は「わからない」であった。しかし、何となく面白く感じ興味をひかれた部分があったことも事実である。一つは『テラ』の活動全般に関わることだが、場所が寺であること。仏教・お寺と芸能との歴史的因縁を思った。一つは井戸から堕ち