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映画独り言。(目の見えない白鳥さん、アートを見にいく&トークイベント)

岐阜新聞映画部が企画しているアートサロンの一環としてトークイベントと映画の上映が開催された。
タイトルは「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」。(上映期間は約1週間)
トークゲストは、監督2名(三好大輔 共同監督、川内有緒 共同監督)と岐阜県美術館の正村副館長。

映画は、全盲である白鳥さんのドキュメンタリー。タイトルで少しドキっとしながらも、とても惹かれた。

原案本は映画鑑賞後に購入したのでこれから読むのが楽しみだ。
映画は、白鳥さんの日常が描き出されていた。
パソコンの読み上げ機能を使ってニュースを聞いている。しかも聞き取れない速さで・・・

白杖を使い、ブロックを使い、バスに乗って一人でお出かけもしている。
しかもカメラを持って写真を撮影していることにも驚いた。
写真は振り返る事のない日記。
確かに、見えない分大変なことはあるだろうけど、ごくごく普通な生活をされていた。

白鳥さんは生まれつきほとんど見えておらず、20歳ぐらいでほとんどの光が見えなくなってしまった。それでも、見えていた時の記憶を頼りに、原色だったり夕陽の色などをベースに説明してもらえばイメージがつかめるということだった。

彼女と美術館デートしたことをきっかけに、自分も美術鑑賞が楽しめるのでは?と鑑賞するようになり、自分一人ではわからないので美術館に連絡をしてサポートをお願いして鑑賞するように自ら道を切り開いていた。

◯わからないことを目がみえないせいにしていいのか?

◯目が見えない分人より何倍も努力しないといけないと言われたが見える人は頑張らなくてもいいのならずるいと思っていた 

等々
時折、胸にグサリと言葉が刺さってくる。

「美術が好きというよりは美術館が好き」

これは私も同じだ。少し前に京都に行ったけど、京セラ美術館が好きすぎて、特に興味がなかった「ルーブル美術館展」を鑑賞した。
キレイだけど、美術史を知らない私にはサッパリわからなかった。
どうしてみんな半分服を脱いでいたり、全裸だったりするのか。
男女のもつれが描かれた作品を観ていたら、不倫で叩かれている芸能人がかわいく見えてしまうぐらいのエグい作品だったりでよくわからなかった。
でも楽しかったのです。京セラ美術館が大好きだから。


新潟のマリーナ・アブラモヴィッチによる宿泊体験型作品「夢の家」での出来事だったり、はじまりの美術館で自らが作品の一部になった展示などの様子が映し出されている。
何かを訴えかけるというよりかは本当にナチュラルにスッと心に入ってくる素敵な映画だった。

上映後は監督と正村副館長のトーク。
原案の本が8割先行した形で、夢の家での出来事をせっかくだから映像に残そう、10分ぐらいの作品にしてほしいというところからスタートしていた。
10分ぐらいの予定が10時間ほどカメラが回っていた。
監督の三好さんが少し消化不良に感じていた所に、白鳥さんのお茶を飲むシーンを撮影出来て映画として制作できるのではと感じていたそう。
このシーンは一番好きだった。

元々は白い鳥という映像作品で配信として公開されていたものを劇場版に再編集されたということだった。タイトルはどっちが良かったのだろうという問いがあったが、私は原案に近い映画のタイトルがとても好きだ。
一瞬ためらってしまうかもしれないけど、そもそも「見える」ことと「見えない」ことを自分が分け隔てているからそう思えるのではないだろうか。

正村副館長が「私たちも物につまづくし、財布をなくしてしまうし、特別なことではないのかもしれない」とお話されたように、確かに見えないことは見えることに比べたら不便なことが多いだろう。でもそれ以外に変わりはないのではないだろうか。


白鳥さんがお散歩しながら撮影した写真は何と40万枚!
映画用に三好監督が全て目を通されていたとのこと。すごい。
映画では白鳥さんは写真家ではなく、写真活動家とお話されていたが、さいたま国際芸術祭のメインビジュアルに起用されたこともあり、現在は写真家になられたとのことだった。
さいたま国際芸術祭2023 (artsaitama.jp)


私は2017年に画家・造形作家の友人が盲学校で開催した盲学校美術館で、目の不自由な方のアート鑑賞を初めて目の当たりにした。

その時の岐阜の盲学校は全盲の方はほぼおらず、弱視の方がほとんどだった。単眼鏡を使って絵を鑑賞したり、実際に手で触ることの出来る立体作品を触って鑑賞していた。

盲学校美術館2017
触れる立体
点字を学んだり記録映像を担当した

その後、障がいのある方のアートサポーターとして活動するようになり、対話型鑑賞会のナビゲーターや実際に全盲の方がアート作品を鑑賞する対話型鑑賞会の記録映像を担当させていただいたこともある。

その時からだんだん、自分が制作している映像作品をどうやったら目の見えない方に観てもらうことができるのだろう?という疑問が渦巻き始めていた。
いつまでたっても答えは見つからない。
そんな気持ちでいたときにこの映画を見れて本当に良かった。
答えはたぶんまだ見つからないだろうけど、いくつかのヒントが得られた気がする。

監督の三好さんが岐阜出身だというのもとても嬉しく思う。
岐阜はシネックスで8/11まで。バリアフリー上映(UD cast対応)もあります。

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