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書籍 文章は接続詞で決まる

端的に言うと、書く人にも読む人にもとても良い本。新書なのでさらりと読めるボリュームなのも良い。

そもそも接続詞とは?

本書においては、接続詞は以下のように定義されている。

独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現

つまり、文脈の中で「次はあちら→」と読者を誘導してくれるガイドであり、語、句、文、節という様々な大きさの言葉を繋ぐもの

楽しい文例が多く、思わず微笑みが

種別ごとに接続詞を分け、章ごとに整理して述べていく構成を取っている。ちょっとお堅い話になるのかな…と思わせつつも、案外するすると読める。これは、文例が良く、くすりと微笑みながら読めることも寄与していると感じた。

「うんとこしょ どっこいしょ ところが かぶは ぬけません」
「うんとこしょ どっこいしょ まだまだ かぶは ぬけません」

と、懐かしい絵本からの引用もあり、思わず音読して懐かしさで胸いっぱいになったり。

役人は人民召使である。用事を弁じさせるために、ある権限を委託した代理人の様なものだ。ところが委任された権力を笠に着て毎日事務を処理していると、これは自分が所有している権力で、人民などはこれに就て何等の嘴を容るる理由がないものだなど狂ってくる。

という夏目漱石のフレーズを味わい深く読んだり。そして引用元の本を読み返したくなる。つまり、読書欲がむくむく湧く本でもある。

口語調・カジュアルな表現の接続詞

文語体を一通り進めた後に、本書は口語体の接続詞についても章を割く。この章がとても新鮮で興味深く読んだ。

接続詞を話し言葉でどう使うかによって、その場の空気が変わることのリスクや、プレゼンテーションの際にやたらと「で」を使ってしまう傾向があること。話し言葉的メディアで好まれる短めの接続詞については、近年のチャット文化で自分もそうしているなあ…と思い当たる節があった。

接続詞を使いこなして伝わりやすくしよう

適量が難しいのが接続詞。少なすぎると読者が迷いがちだったり、著者/話者の意図が伝わりにくい。一方で、多すぎると方向を指し示す看板だらけの道のように心地良くなく、文章の流れが悪くなる。

バリエーションに富んでいてセレクトに迷うのが接続詞。同じ意図(順接、逆説等)であっても、長短多様な接続詞があり、どれを使うかで文章の感触(お堅い、カジュアル)やスピード感が異なってくる。

言葉のプロが最も推敲するのが接続詞である、というのも頷ける広く深い接続詞の世界をさらさらと読みやすい文章で教えてくれる一冊。

書くとき、話すときにどこまで意識できるかな。したいな。と思ったので、少しずつ接続詞のバリエーションを増やしていくことを意識していくつもり。

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