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値段を乗っける

今日から、お弁当を週に1回のペースで販売を始める。

不特定多数の方に売るのではなく、今年の春から「大人の島留学」という制度を使って、島のお試し移住制度を活用している方々向け(20名)に、1ヵ月半程度の期間限定で販売をする。

販売する値段は700円。
お弁当箱のサイズは7寸(20cm強)で、4つ仕切りのもの。

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700円という数字は、島内で売られているお弁当の値段の大まかな平均値。そして、大人の島留学に参加している大半が大学生ということもあり、お財布事情を考えてみても700円が妥当と考えてのもの。

このお弁当の最大の目的は、大人の島留学生たちの食事に使うお金が、食材費として少しでも多く島に還元されること。つまり、お弁当に使われる食材は、全て島のもので完結するのが大前提。ここまでは、島食の寺子屋が普段取り組んでいることと、なんら変わりない。

いつもと違うことといえば、食材原価を100%に近い形で売る点にある。普段の実践授業であれば、食材原価は30%前後を目安にしており、それ以外のところは人件費(=料理人の技術料)などが乗っけられていく内訳。

今回の弁当販売は、利益度外視な取組であって、本来の飲食店であれば考えられない売り方。地産地消を大前提とする料理学校がチャレンジする取組だからこそ成り立つ売値である。

ここで、値段を乗っけるということについて、改めて考えさせられる。
島の直売所で売られている野菜の値札を見て、お弁当に使う「この大きさのレタスにしては割高だな」と思ってしまった。

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だけれども、小さい島ゆえに、野菜を作っている人がいて初めて野菜が手に入る事実を分かりやすく突きつけられていて、パワーバランスは「食」を生産する側に常に傾いているようにも感じる。

分業が進む世の中で、専門職という枠では、料理人も生産者と同じ立場にいるのかもしれない。料理をする時間や手間を惜しんで、料理店にお金を払う消費者もいる。
素人にはない、料理人の技術や発想にお金を払う消費者もいる。

そして、料理人のマネタイズの仕方も様々である。
料理そのものでお金を頂く考え方もあれば、料理教室などで豊かな暮らしのヒントを伝える方法で「食」をマネタイズしている人もいる。

また、生活していく為のマネタイズの割合も様々で、料理一本で食べていく人もいれば、自給自足の暮らしをしながら少しだけ副産物を売ってマネタイズをしている人もいたりする。

話をお弁当の値段に戻すと。
今回のお弁当で、まずは生産者にとっての原価から始まり、そこに生産者の技術料が乗っかり、そこに更に料理人の技術料が乗っかっていく。この値段の乗っけ方が妥当なようで、なにかひと手間余分な気もする。

長々と書きつられたわりに、今すぐに答えは出せない。
少なくとも食材の価値だけでも、邪魔をしないように、しっかりと伝えられるように始めていきたい。

(文:島食の寺子屋・受入コーディネーター 恒光)