見出し画像

離島キッチンでの会席料理

ご馳走様でした。
満足。幸せ。感謝。
食べ終わった後のこの感覚がすき。
言葉じゃ言い表せないけど、

久しぶりに感じた気がする。この感覚。
島では飲食店は少ない。
自分で作るしかない。

家で美味しいと思う料理が作れないことが続いて
嫌になる時もある。
食べるのが好きで食べに行っては、
美味しものたちで幸せになる。

島に来る前は、仕事で嫌なことがあったとしても、誰かと食べるんじゃなくて1人で食べたとしても、美味しかった〜幸せだ〜 って。
この感覚をもっともっと味わいたくて、
味わってもらいたくて、学びたいと
思ったのかもしれない。
と改めて感じた。

離島キッチン海士の営業は、5月から始まって
生徒全員(8人)で準備、盛り付け、提供を行ってきた。暑くて、人数多いな、狭いなと思う時もありつつ、離島キッチンもだいぶ
回数を重ねた。

7月に入って半分がお客様、半分が提供する側になる機会を頂いた。
提供する側は8人から4人になり、4人だけで準備から盛り付け、提供までを担って。
残りの4人はお客様として会席料理を味わう。
そのためメニューはだいたい同じにしてくれていたから、準備も盛り付けも味もわかっていた、、はずだったのかもしれない。

八寸は見た目からかわいい。
5味5法5色が使われていて、それぞれが変化をつけてくれている。タコの間にいるちり酢は、
私には辛かったけど、いいアクセントになって。役割がそれぞれにある。

造里はその日とれた魚達で決まる。
だから何が食べれるのか楽しみだった。
初めて食べる赤水がいた。高級魚。

ぷりぷりしてた。伊佐木は見慣れたもの。
おかひじきは生徒の1人が育てたものでわさわさと育ってる。いい役割を果たしていた。
美味しいのに、刺身醤油が甘いのが許せない。育った環境がこんなにも影響するものかってくらいに。

蓋物は、少し前の私だったら美味しいで終わってたと思う。今日は、味の変化がわかって食べてて楽しいが加った。

隠元は口に入れると味がフワッと広がって濃すぎない。人参の塩気と甘さ、黄蕪は出汁がジュワっと出てきて。南瓜はほんのり甘くて。蕪は塩気を感じ、ズッキーニは素材の味もしっかりとして出汁の味が広がる。ナスは揚げ煮だからか、油感がきてしまって味を薄く感じてしまいがち。この一品で色んな味が楽しめた。

焼物の椎羅大蒜醤油焼きは、味がしっかりしていてふわふわで美味しかった。添えてある青梅の甘露煮。これはお客様にも大好評で。私は焼き魚に甘露煮の組み合わせはあまり思いつかないような感じで。食べてみると甘露煮で口を直してくれると言うか、合うんだ、、ってなった。

冷物の南蛮漬け。見た目からも涼しさと夏を感じさせてくれる。すっきりした甘酸っぱさ。焼物の後にこの一品をもってくる
タイミングの良さ。

そして肉料理にと続く。
肉料理は隠岐牛の3種盛り。
盛り付けの時はいつもバタバタしてるんだよなと思いながら肉を待つ。
カツは私達のは、試しで野いちごジャムソースが半分のっている。味変になってこれもまたあり。添え野菜のビーツはローストビーフ用のポン酢のせき止めになっていたのかと。

お肉がくるとご飯が欲しくなる。

本膳がやってきて。ご飯、味噌汁、香の物。
汁は毎回違う味。魚出汁の具合、種類によってこんなにも味が変わるんだ
って話しながら食べた。

水菓子のプラムジャム餅は毎回試行錯誤が加わって、今回はジャムが練り込まれてうっすら色づいて可愛らしい。
梅寒天はお客様から「寒天だけじゃ無いよね、何を使ってるの?」と聞かれたことがあった。
その時なんでそんな質問がくるのかわからなかったけど、実際の量を食べてみて確かに寒天ぽく無い食感がした。こういうことを言いたかったのかと、その時理解出来なくて申し訳なくなった。

こうして食べてみると気づくことって沢山あるんだな。
提供してみて、食べてみて、やっと少しだけ先生の頭の中がわかった気がした。
お品書きの構成、切り方、味付け、盛り付けの時、先生はこういうことを思いながら作っていたのかな。

これからは「美味しかったですか?」だけじゃなく、他の問いかけができる気がした。
食材がどうやってとれて、どのように料理になって、お客様がどういう反応をしているのかを知れるのはとてもありがたいこと。
だから提供されるまでの過程を知っている分、お客様に料理の説明をしっかりできるようになりたい。

あの感覚を味わってもらいたい。
幸せな時間になってもらえるように、
もっと学んで、出来るようになるんだ
と思わせてくれる時間だった。

(文:島食の寺子屋生徒 髙田)