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果て無き道の先へ

料理とは、ずっと未完成なものなのだろう、と思い至った最近の日々であった。
 
1年の期日の中で、春・夏・秋がほぼ終わりかけに至った。ここまでに学んだことを自分の中で整理して、できるようになったことの実感を持ちたくなるものの、周囲の人々と比べると得られたものが少なく感じ、無意識ながら焦りが生まれる。

何かに追われるような気持ちの中、先日松江で行われた「勇木史記 作陶展」搬出のお手伝いへ。個展らしいピシっとした空気感の中、普段あまりまじまじと眺めることの少ない器を手に取り、質感を肌で感じながら、1つ1つと向き合う時間。丁寧に作られた作品には、それぞれのストーリーがあり、その先に作り手の人物像が浮かび上がってくる。
搬出作業後、最近感じていたスッキリとしない思いを勇木さんに聞いてもらうと、「モヤモヤした状態でいいと思う。この1年間のことを綺麗に整理してスッキリしてしまうと、あとで思い返したときに残っているものが少ないかもしれない」というような主旨の話をしていただいた。消化しきれないながらも、1つ1つのことに一生懸命取り組んでいく。それでいいのだな、と思えた夜だった。

思い返せば、私の珈琲焙煎の師匠は、焙煎歴40年の大ベテラン(趣味)で、これまで飲んだ珈琲の中でも、最も衝撃的なコクを味わった素晴らしい腕の持ち主である。そんな人も、「最近ようやくちょっと焙煎がわかってきたような気がする」と言うのである。珈琲の焙煎という、料理と比べると、扱う物の範囲が狭い話においてもそうなのだから、料理はますます果てしない道なのだろう。その道中を楽しみながら、振り返って何かを見つけつつ、1歩ずつ前へ進んでいきたい。

(文:島食の寺子屋生徒 鈴木)