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5月が終わっての対談③(ふたりのパーソナリティの話)

いよいよ、対談の最終編。
2時間弱にわたって対談していると、段々とお腹もすいてきて、より話は深みに入り込んでいく。長谷川さんと武田さん、その人の在り方そのものの断片が見えてきそう。

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恒光:
長谷川は、人を喜ばせるってことに対して、どう思っている?

長谷川:
武田さんは、人に姿勢が向いているけど、私の場合は自然であったり、自分に向いている。自分っていうのは、武田さんから見た自分だったり、恒光さんから見た自分という意味で。食べることって、たしかに人との交流を深めたり、繋がりをつくるような食事というような意味合いもあるけれども、やっぱり一番近い食卓は自然にあると思っていて。

食卓のうえにあるものは、自然が生み出したものっていうのが根本にあるから。食べることって、自然と触れていることだし。本来はそういうものだったけど、今は段々とそうじゃなくなってきているところが、やばいだろうって危機感が自分の中にある。だから、問題意識から料理に興味を持っているというのが、武田さんともしかしたら違うところかなと思う。

恒光:
問題意識をもつって、なにかしら重大な出来事を経験しないと、できないことのようにも思う。

昨年度に、たまたまフードロスを改善しようとしている団体の方と知り合う機会があって、オンラインで寺子屋の生徒も交えてディスカッションみたいなのをしたんだけど、なんだかしっくり来なくて。

寺子屋のやっていることは、結果としてフードロスにも繋がるんだろうけど、フードロスを解決する為に寺子屋を動かそうとすると、それは違うなって。フードロスをなくすことを目的にできるほど、フードロスに起因している危機に寺子屋自体が直面していないというか。

長谷川:
フードロスそのものを考えるより、そもそもなんでフードをロスするようになったか考えるべきと思っていて。なんでそういう風な社会に変わった、人も一緒に変わっていくんですけど。だから、生活も20年前、30年前から変わってきているし、これから30年後も変わっているだろうし。

表面的な課題って、これからもどんどん出てくる。SDGsとかethicalとかsustainableとか色んな横文字が出てくるんだろうけど、それって結局ずっと同じことを言っているだろうなって。エコって言葉が2000年の初頭に出てきてから、ずっと同じことを言っているだけで。根本的にやらなきゃいけないって分かっていることなのに、それをやらないってことに、わたしはいつも違和感を感じている。それは、最初のnoteにも書いたんですけど。

恒光:
そういったことに興味をもつ、長谷川のパーソナリティに興味を持っていて、そういうことに対して掴みにいくというか。どういう生い立ちでそうなったのかなって。

長谷川:
人に説明するうえで一番わかりやすいのは、小学校のときの給食がいつも残っていたから。ってだけです。

恒光:
そのことが、記憶に残っているし、今でもそれが気になり続けている感覚?

長谷川:
それを人生かけてやりたい。

武田:
そこは、すごく熱いんですよ長谷川さんは。本当に。夜中までかけて話してくれるくらい。

恒光:
普段って、シェアハウスでどっちがどのくらいの割合で話すん?

武田:
どっちかが、ばーって感じだよね(笑)

今日は長谷川さんの話題を話す時もあれば、私自身の想いを話すこともある。そうやって答えたくなるような質問をしてくれるんですよ、長谷川さんが。

話しながら自分の気持ちの整理ができるように聞いてくれる。
「あー、じゃあこうやっていったら良いかー」とか。

恒光:
へー。一個だけでも具体例を教えてほしいな。

武田はいつも難しい顔して授業受けてるから、楽しいのかなって心配になっちゃう。

長谷川:
武田さんは、全部を吸収しようとしているというか、今ここで起きる全てのことに重きがある気がする。それを全てメモしたり、聴いたりするから。

武田:
すごく得たいの。色んな事を。

長谷川:
私の場合だと、「ここを知りたい」が切り取られるわけで。
先生は先生だけど、先生のコピーになろうとは思っていなくて。そうなる為に寺子屋に来ているわけではないし。

恒光:
長谷川のの中で、「切り取る部分」と「省く部分」ってどう分けているの?

長谷川:
んー、なんだろう。

「そこは自分の感覚で掴むべきだな」という部分はあえて聞かないです。自分で試行錯誤して落とし込むところは、経験を積む以外にないなって思う部分と、そうじゃない部分があると思っていて。その違いを説明するのは、すごく難しいんですけど。

全部が全部を先生から詳らかに問いただす必要がないこともある。
突発的なことが授業の中で起きたとしても、「今は桂剥きをする時」「魚を捌くことをする時」とか。

1日とか1か月はすぐに過ぎていくものだし、自分が限られた時間で手を動かして頭を動かす時間は、自分の中でコントロールしないと負けていく。過ぎていくことにしない為に、繰り返し練習することを大事にしたいなって。

もちろん、見たい気持ちとか知りたい気持ちはあるけど、抑える。そういう訓練は5月は特にした。武田さんが、全てを吸収しなきゃってなっていたのをみて、私もそうだって思って。

武田:
なんだろう。

みんなと出会ったことが、本当に良かったし刺激になるというか。本当にひとりひとりが長けているところがあるというか。競っているわけじゃないけど、自分が何もないというか、すごい他の人は色んなことを知っていて、自分はなにを知っているんだろうって。

だから、みんなのそういう姿に刺激をもらったし、みんなが話していることも大事だなと思ったし。今まで知らなかったことを知ったり、気付かされたというのが大きくて。

本当にパニックになるというか。私ってここに料理をしにきたのに~、なにから手を付けたらいいんだろうか、。

長谷川:
他人の好奇心にすごい振り回されやすい環境だなっと、思ったんですよ寺子屋は。限られたメンバーと生活も一緒にしていて、なにからなにまで知っているとまではいかないけど、生活の様子もお互い分かっていて。

都会にいたらこんなことないじゃないですか。友達がいま何しているのかを知らなかったのが、今は筒抜けになっていることとか。授業中にそれぞれの生徒が興味をもって先生に質問していることすら、半分くらいは聞いている状態で。

新しいものに出会った時ってワクワクするけど、それが本当に自分の突き詰めたいことかとは別のところにあるのに。ここは突発的な刺激が、ガンガンときて、通り抜けて、それが終わるとはぁって疲れちゃう感じ。

武田:
でも、それが本当に自分に必要なものかどうかも考えるようになる。
それが本当に知りたいことなのか?とか。

長谷川:
例えば、武田さんの「食べてくれる人を幸せにしたい」って一番の目的と、生産者さんから得る色んな情報がどれだけ関係あるのかとか。

武田:
それが繋がってるなって、ここに来て気付かされたの。

今までだったら欲しい食材をスーパーに買いにいって、誰が作ったかも知らないような食材を使って料理を作ってきたわけやん。

ここでは、生産者さんがすぐそばにおって、生産者さんそれぞれにもそれぞれの想いがあって、自分が本当に料理を家ではないところで作るようになった時に、生産者さんの想いを知ったうえで料理を作ることは大事だなって思った。

離島キッチン海士で料理を出すときに、伝えられることも増えるじゃん。食べる人の気持ちも変わってくるから、とても大事なことだと思う。

だから、自然と切り離しちゃダメだって思った。

長谷川:
うん、良かったじゃん。

そしたら、いま畑に行ったりする時の気持ちは、4月の頃とは違ってきているのかな?

武田:
うん。畑仕事がめんどくさいとかは全くないし、なんなら本土に戻ってからもやってみたいなとも思うし、むしろそういう知識があった方が得するなと思うし、繋がっていくかもしれない。

ここに来たからこそ気付けたことだと思う。だから、全部が全部料理のことだけで、他のことはポイってしたいわけじゃないし。そう。

恒光:
情報とか知識って表出しているものは、寺子屋以前に沢山あると思う。ネットの情報だってそうだし。

そのうえで、寺子屋では色んな体験をする。例えば椎茸の原木を担いだり、田植えの体験をしたり。そこで、恒光として伝えたいことというか、現時点での自分なりの感じ方はあるけど、あまりそれを答えとして提示したくはない。

その体験から何を抜き取るかとか感じるかは、人それぞれであってほしい。例えば、同じ生産者さんを見ていても、農法に興味をもつことも正解だし、その生産者の生き方に惹かれるのも正解だし。だから、他の人がなにか特定のものに興味を持っているからといって、そっちに流される必要はないと思う。

一旦は、自分自身が「どう感じたんやろうな?」っていうのを、一個一個丁寧に貯めていく感じで。貯めていくうちに、段々自分の趣向というか、好きな方向性というのは見えてくる。そんな風に、もう少しフラットに自由に日々を過ごしてほしいな。

たしかに、シェアハウスの弊害もあって、ある人がAって言ったら、周りも確かにそれAかもってなりがち。それは、あくまで表出している情報として受け取って、改めて一人で考えて振り返るっていうのは、絶対に大事な蓄積だと思う。

武田:
たぶん、私にはその時間がすごく必要で。まとめることで自分に入ってくるし、わーってなっているのがリセットされる。解決されていく時間がないとダメなんだって思って(笑)

長谷川:
みんなそうだと思うよ。

武田:
三者面談の時に、「周りのことは気にしなくていい」って仰っていたじゃないですか。確かにそうやなって思って、そこでスッキリしたっていうか。全部が全部を得ようとすると勝手に自分を苦しめているだけだから、自分が数あるなかで自分で選択して、ちょっとずつでも自分で蓄積していけるようにしたいなって。

恒光:
もし、ここで「もっと欲張りになりなよ」って言ったらどうなるの?

武田:
パンクすると思う(笑)

恒光:
でも欲張りになることって悪いことじゃないやん。睡眠時間を削って、あれもこれも勉強するってことも一つのやり方だし、限られた選択肢だけこなしていくのも一つのやり方として。

武田:
うーん、そういうのを全て両立したいというか。

長谷川:
うーん、武田さんは家事も自分の身支度も、絶対にやるんですよ。ちゃんと。私は波があるけど、武田さんは波を作らない。毎日、絶対にやるっていうのが、武田さんのパーソナリティだと思っていて。

武田:
たぶん、習慣なんだよね。やらんとスッキリしないというか。

長谷川:
ここで恒光さんに質問で、恒光さんにもたぶん「興味」ってあるじゃないですか。
島には魅力的な人や自然や色んなものがあって、出会うものが新鮮で、もうここに来て何年も経っていると思うんですけど、どういう風に自分の興味を定めていくというか、これを極めていくって心を落ち着かせていくといくか、ってどういう風にやっていたんですか?

恒光:
来たばかりの2人と同じ土俵で話せているかわからない前提で話すけど。

一旦は目の前にあることを楽しむ、ってことかな。楽しんでやっていると、自然と色んな気持ちとか知識が付いてくるというか。あの人は半農半漁の生活しているなって今さら気付かされたり。正直とりとめのない生活やけど、楽しむってルールだけは決めてるかな。だから、そのあとに何がついてくるかっていうのは、なにも期待はしていない。

長谷川:
もし恒光さんが、海士町にいるのが1年間限定だって言われたら?違う感情が入ってくるかもしれない。1回しか出会えないものというか。そういう部分との向き合い方というか。そこは私たちも模索中というか。

恒光:
留学していた時が、同じような境遇になるのかな。
まずは「語学だよね」ってところから始まって、とにかく自分のなかで3時間は誰かのところに英語で話しにいくって決めていて。病気でもないのに病院に行ったりもしていたし(笑)

やっているうちに別のルールができてきて、「遊ぶことで語学が伸びるんだ」って。遊ぶことで色んな人と関わって、自然と英語で話す時間も伸びて。それで、、「遊ぶ」ってルールができたかな。

区切りを置くのかどうかっていうのもあると思う。部活とか留学とかは区切りがあって、区切られた時間の中でどんな結果を出したのかが査定基準になるとは思うけど、

長谷川:
私からすると来年は就職しないといけないという、明らかな条件があって。

武田:
焦りを感じる?

長谷川:
終わりがあることに対しては違うかなって思う。それを感じながら、それにコントロールされないように自分を保つかって。

恒光:
もしかすると、自分は結論にあまり不安を感じないタイプなのかも。留学の話に戻っちゃうけど、毎日喋るっていうのを続けていたら、なんとかなるでしょ。それ以外は、どうでもいいというか。その辺りの変な自信というか。

長谷川:
その辺りは私もある方で、楽しむってことも含め。でも、一年間で学校が終わるっていうのと、仕事を始めるっていうところは、なにかが起きない限り絶対で。1年後には決まってなきゃいけないんだってところが負荷になっている。そことの付き合い方が、自分の中で整理がつかないから。

恒光:
寺子屋としての話だと、手に職をつけるという文脈では間違いはないと思う。技術っていう意味でね。最低限の技術とか、実践に近いスタイルとか。

あと、この島食の寺子屋に関わって4年目くらいだけど、卒業生たちも普通に第一線で働いているし。まあ、第一線にも色々あるんだけど。色んなところにいっても馴染むし、調理師専門学校の人たちと同列、もしくは突発的なことへの対応力というのは絶対的に勝っているだろうし。その代わり、甲殻類の扱いが分かっていないとかの弱みはあるかもしれないけど。

卒業生たちの中で、一年間を上手く過ごせた過ごせてなかったって、なんとなくの主観で思うところはあるけれども、それでも卒業後に酷い状態になっているかと言ったらそうでもないから、心配はしなくていいと思う。そういった意味で、殆ど鞍谷先生に託してもいいかなって。もちろん、微調整はするけれどね。

料理の道に進むのであれば、一歩目はちゃんと踏み出せる学校。だね。

武田:
でも、長谷川さんはそれをどういう風にしていったらいいかわからないから不安なんじゃない?

私みたいに、「料理をしたい」っていうのをどういう形にするか考えればいいだけだけど、長谷川さんは「どういうことにしていきたいか」を考えていく段階だから不安になっている気がする。

長谷川:
言い換えるならば、どういうことでもできてしまうと思っていて。だから、良い悩みをしていると思う。IT企業に勤めることもできると思っているし、料理人になることだってできると思うし、全然違う半農半漁するでもいいし。民宿をやるでもいいし、なんでも選べるって思っているから、人から見たら変な悩み方をしているかも。悩みとも言えるし、考え中。

武田:
ここを卒業してから、色々と変えることもできるわけじゃん。自分の答えを見つけていく為に。

長谷川:
でも、そこに最短でたどり着きたいの。

武田:
その方が、もちろん良いよ、みんなにとって。

長谷川:
だから、人と同じことをして過ごしたくないっていう気持ちが昔から強いのと、それってもう誰かやっていることだよねとか、殆どのことが流れていくんだよね。本当にやらなきゃいけないことってなんだろうって考えているから、たぶん全てが抽象的になっていく。具体性をもつよりも、曖昧な方が可能性を壊していないというか。色んな正解があると思うから新卒で就職もしなかったし、ここに来てしまったというのがある(笑)

恒光さんに言われたんですけど、ここに来ることでより一層悩むと思うよって。見学の時に。それを自分も見学の時にそれを感じたし、もっと混乱したいなって思っているところもあったりして。かきまぜたいというか。

恒光:
かきまぜる前があったんだ?

長谷川:
かきまぜる前はインターンしていたデザイン会社に、普通にそのまま入るってこと。10月位に見学に来たんですけど、それまでは親にもそこに就職するって説明していて、でもそこが急に変わって。色々あります(笑)

恒光:
そこは言わないんだ(笑)

長谷川:
誰かを傷つける言い方になっちゃうので言いたくないんです。自分が思っていることとして思っているだけ。

恒光:
そんな背景があったんだね、入塾に。
わりと長谷川さんって、定義に対してのリアクションというか、テーマ性をもって話したがる気がする。

長谷川:
テーマは複雑に交差していて、それのど真ん中を見つけるのって難しい。料理でもそう。
この前の鯵フライのアンケート結果で、鯵フライを味わってほしいのか、横にあるタルタルソースを味わってほしいのか、わかりませんとか。ど真ん中が決まっていないから、わからなくなる。分からないから、人に伝えたいことがあっても伝わらない。それがもったないし、かっこ悪いから、鯵フライとタルタルソースと同じように決めたいんだよね。

武田:
私はそこまで考えられないから、はぁすごいなぁって思うの。どっちか味わいたいんだー位しか、感じとれていなかった。

長谷川:
決められなくてもいい。でも決めたいなって思いながら、やることに意味がある。

武田:
どの物事に対しても、その姿勢だよね長谷川さんは。

長谷川:
決まらないことに対して決めようと思って臨んでいくことの積み重ねが大事だと思っている。その後ろに、生き方として残っていくわけじゃん。

恒光:
残したいの?

長谷川:
そうなんですよ。残らないものって、結局なかったものになる。残っているものって普遍的なものというか、そういうのが好きですね。食べ物のこともそうだし、食べ物以外のことでもそう。ファッションも道具もそうじゃないですか。例えばiphoneなんて100年後に使っている人がいる分けないじゃないですか。

武田:
すぐ100年後の話になるんですよ(笑)

長谷川:
例えばの話ですよ。こういうものを作ることもテクノロジーの発展の為にすごく大事なことなんですけど、それよりやらなきゃいけないことがあると思っていて。このスマホを作るために大量の金属とかを必要とするわけで。それで、みんなこれに10万円払って、どうしても欲しいって。でも、もっとやることある。

SDGsとか言っているけど、本当にやるべきことわかっているのかな?って。同じように自分に対しても思うけど。

恒光:
今のスマホの話の流れで思ったけど、いわば時代の最先端みたいなものについていくという生き方もあって、プログラミングもどんどん発展していくし、自分もそれについていこうとする生き方。

一方で器であったり、ずっと世の中に残るであろうものを大事にして丁寧に暮らすことできるけれども、社会の歯車の中で取り残されて生き残れないんじゃないか?って怖さはあるかな。

長谷川:
それはすごいあります。

それを民芸として捉えるのであれば、大学の先生が民芸の研究をされていて、大事なことって気付きにくい。だってそこにあるから。それに気付いて掘り返して、やっぱ大事だよねっていう声を増やしていかないとダメだよねって。

そうなると、どう巻き込んでいくかになってくる。その巻き込む輪に段々と身を投じていくことが、今の不安を消していくことになると思う。ちゃんと加担していて、それが残っていくものと信じていくことが目的なのかな。

恒光:
すごくエネルギーのいりそうな話だね。

長谷川:
はい(笑)

恒光:
いつまでにやらなきゃとかってある?

長谷川:
見つけるのは早ければ早い方がいいんじゃないですか?
でも、生きることと仕事を重ね合わせたいから年齢は関係ないかもしれないです。
ほぼ、一緒にしたい究極は。

武田:
ここまで考えられるってすごいと思いません?恒光さん。

恒光:
普段から考えているからだろうね。

武田:
長谷川さんの頭の中を見てみたい。

長谷川:
なんもないよ、お笑いくらいだよ。

恒光:
武田さんは悩みがないから得な性格をしているのかもね。

武田:
悩みがないわけないじゃないですか!?(笑)

恒光:
あー、ごめん。聞き方が悪かった(笑)
「料理がしたい」っていうシンプルな気持ちで動いているから悩まないっていう意味。

長谷川:
わたしも、料理がしたいという気持ちは強い。そう決めたから、ここにいるんだけど。武田さんとは同じ言い方ではないけど、料理にすごい可能性を感じているから。

私の中では人生が動いているというか、手段を料理に絞ったというところでは、人生で初めてしたことだなって。だって、今まで中学・高校・大学を4年で卒業してってだけだし。自分の人生の中で決めたのは、これが初めてだから。

さっき言ったことと裏腹にはなるけれども、絞ったことは良かったことだなとも思う。初めて狭めることで、料理以外のことを見れるっていうのも、有意義なことだなと思っています。

恒光:
武田にとって、寺子屋に来たことは「狭める」になるの?それとも、「ジャンプ」とか。なんか、形で言い表せないかな?

武田:
んー、「決断」?

恒光:
形でお願いします(笑)

武田:
形!?私は前に手を広げる感じで、前だけ見ている感じ?

やっと、今までの世界から出られた!っていう。私は資格を持っていたから、とりあえず資格を持ったからには、資格を活かした仕事をしなきゃいけないって気持ちがあったし。やっぱり親の想いとかも考えるし。勤め始めたら、勤め先のこととかも考え始めるじゃん。入ったのにすぐに辞めるとか無責任なことはできないしとか、と思うと次の違うところに進みたいとは思うけど、色んな事を考えてしまって。

人生は長いから、今じゃなくてもいいのかなとか、でも早く挑戦したいなって思い続けていたから。ようやく、やっと出られたなっていう感じ。

恒光:
今までのことはマイナスではないってイメージ?

武田:
今までのことは全くマイナスではない。自分が今まで生きてきた人生の選択。

長谷川さんとは、逆に私は今まで人生の選択を沢山してきた。中学校に入る時点で既にひとつの選択をしている。ソフトテニス一本でいきます、それで頑張りますっていうところで中学受験を選択しているし。そこが中高一貫だから、6年間ぶっ通しでテニスを頑張るということも決まっていた。次の大学進学の時も、保育士の仕事をするという選択をしているし、そこでもテニスを続けるかどうかという選択もしているし。

長谷川:
うん、すごいよね。

武田:
私の人生は選択だからけだったと思う。

でも、私の今までの人生に悔いはないし、テニスの人生は苦しかったけど、でも自分の得たものはすごく大きいと思っていて。だから、やってきて良かったと思う。

でも、同じことをもう一回するかと言われたら、絶対に苦しいからもういいわって思っちゃう。でも、テニスのことも保育士のことも悔いは全くないし、自分の糧になっているなって思う。

恒光:
すごい不安を与える質問になっちゃうかもしれないけど。たとえば、運よく理想の料理屋さんをオープンすることができたとして、そこですごい大変なことが降りかかってきた時に、どうなるんだろう。料理が終着点なのかな?また、次の世界にシフトすることもあり得るのかな?

武田:
料理をやってみてどうなるかっていうのは、やってみないと正直わからんなっていうのは思っていたし、だからこそ踏み出すのに勇気がいったし。本当にこれ無理だって思う時があったらどうしようっていう気持ちもあった。

だけど、やってみんことにはわからんなって。失敗とか成功とかは、どうでもいいから、やってみないことには始まらないって。とりあえず挑戦したいなって。もし、料理の世界と違うんだったら、資格ももっているし、どうしても困った時には保育士に戻ることもできるし、どうにでもなるって思っています。

恒光:
なんだか、卒業生インタビューみたいになっちゃったね(笑)

長谷川:
本当に色んなことがあると思う。もう2ヵ月経っちゃったんだって、思いました。恒光さんと話すとすごく思う。「やればいいじゃん」っていう恒光さんのスタンスを、もうちょっと受け止めなきゃなって思ったというか。

割と私も周りに気を遣ってしまう方なんですけど、周りに対して上手くやらなきゃもあるし、逆に周りから影響を受けることもあるんだけれども、なんかこう自分がこうやりたいって思う気持ちって、すぐやらないと冷めちゃう。そういうのを大事にしていかないとなって、恒光さんと話すと思っちゃう。思わされるというか。

寺子屋ができることって、恒光さんも鞍谷先生も模索中だと思うんですけど。学校でやることが全てじゃないし、海士町というところで起きていることは他に沢山あるし、そういうところは恒光さんに助けて欲しいと思うし。相談したいし、相談しなくても自力で開拓したいきたい。

妹尾君と話していても思った。彼のコミュニケーション能力の早さとか、馴染む早さというか。早い。見習わなきゃねって。

恒光:
彼はフラットでいながらも、たてるところはたてるし、仲良くなるところは仲良くなるよね。でも、やな感じがしないというか。

武田:
それは、人間性の違いだね。

恒光:
急に話をまとめちゃったね(笑)

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(2021/5/26 収録)