交通事故のケガの治療で関係の無い場所の治療もできるのか?

このタイトルを見て「こんなの無理でしょう」と思うのは極めて常識的な方です。しかし世の中には「事故のせいにして一緒に治してもらおう」と考える方もいるわけです。今回は「生活の中での通常の痛み」と「事故による痛み」を一緒にできるか?そのデメリットなどをご紹介します。

賠償での治療の範囲はどこまでか?

交通事故に限りませんが、損害賠償は因果関係の無いものは対象になりません。交通事故では事故とケガに因果関係がある場合が賠償の範囲になります。要するに「ケガは確かに事故によるものだ」と認定される場合に賠償されるわけです。

多くは因果関係があると考えられるのですが、たまに「事故でココも痛くなった」とどう考えてもおかしな訴えをしてくる方もいます。そういう場合でも普通は医師が「これは事故と関係が無い」「事故とは切り離して治療しなさい」と本人にハッキリ言うケースがほとんどです。

しかし、事故形態によっては因果関係がわからないケースもあり、そういう場合には保険会社が調査をして、自賠責が認めると賠償範囲となります。

全てが事故の痛みに思えてくる

私も追突事故に何度か遭ったことがあり、その際の痛みはよくわかります。特に追突は自分に非が無い事故ですので「事故のせいで、いつまでも首が痛い」と「事故に遭わなければ」と何度も思います。

実際の私の体験をお話しします。
ある事故で首(むちうち)症状は徐々に改善していて、2ヶ月も経つと自覚症状がほとんど無くなりました。しかし、背中の肩甲骨の下あたりがいつまでも痛くて治らないのです。逆に痛みが増しているぐらいです。

一番多い捻挫や打撲などのケガに限定されますが、交通事故のケガの痛みは、事故直後にはあまり感じません。気が張っていたり、興奮状態になっているからだと言われます。そして、事故後2-3日で痛みは最高に達します。その後は筋肉の炎症も収まっていき、徐々に痛みも少なくなっていきます。最終的には3ヶ月もすると自覚症状は無くなります。

私の場合、事故直後から背中に違和感はあったのですが、2ヶ月ぐらいから徐々に痛みが大きくなってきたので「おかしいな」とは思ったのですが、「交通事故前には痛くなかったから、絶対事故の痛みだ」と思っていました。

しかし、痛みが大きくなるのは事故によるケガと違うはずです。
そこで腕が良いことで知られる整骨院で見てもらいました。あえて「交通事故に遭ったことは話さず」「自費」で施術してもらいに行ったのです。
その先生は「あなた利き腕どっち?仕事でパソコンや書いたりすることが多い仕事じゃない?」と言い触診をしながら「背中の痛みは首や背中が原因じゃないかもしれないよ」「肘だと思う」といって右肘(私は右利き)を施術しました。
するとどうでしょう。翌日には背中の痛みが急に少なくなり、1週間も通わないうちに治ってしまったのです。

私の背中の痛みは「肘の腱鞘炎」だったようです。体は皆つながっているので他の場所に痛みがでることはよくありますが、肘とは思いませんでした。
それより整骨院の先生に感謝でした。本当に腕のいい先生は違いますね。「毎日通いなさい」なんて言わず、数回で原因を特定して治してしまうのですから。

考えてみると交通事故による背中の痛みは、首が治るのと一緒に少なくなっていた気がします。たまたま、痛くなった時が交通事故による治療期間と時期が重なったのです。

私は「交通事故の痛みは2-3日で最大化し、徐々に少なくなっていく。逆に大きくなることは無い」という知識があったので、交通事故とは別に治療することができました。しかし、そのような知識が無い方は、当然のことですが「交通事故のケガがいつまでも治らない」と思ってしまいます。

「交通事故と関係の無い治療」は保険会社とのトラブルになるケースもある

状況によって違うので絶対とは言えないのですが、故意か故意でないかは別として、交通事故のケガと一緒に事故と関係の無い場所を治療(または整骨院での施術)をすることは、のちのち保険会社とトラブルになる可能性があります。

先にもお話ししたように、賠償は事故と因果関係のあるものに限られます。公平性を維持するためにも関係の無いものは賠償範囲からはずされます。自賠責保険もそのあたりは注意深く見ていて「これは事故との因果関係が認められない」と治療費の一部を否認することになると、保険会社としては任意保険(対人賠償保険)を使うことになるので避けたいですし、被害者と話し合って、その部分の治療を終了してもらったり、自費でお願いしたりすることになります。

被害者があまり協力的でない場合は「一括対応終了」とする場合もあります。これが俗に言う「保険会社に治療を打ち切られた」というものです。

私の体験談のように、最初に痛かった場所とたまたま同じケースは判断がしにくいのですが、もし「何カ月たっても痛い」と通院継続したり「痛みが大きくなった」と主張して譲らなければ、トラブルになるケースでしょう。

交通事故の痛みが、別の病気を発見しにくくするので注意

基本的に「交通事故による痛みは2-3日で最大化し徐々に少なくなる。逆に大きくなることは無い」と覚えておいてください。
捻挫・打撲は「筋肉の炎症」なのです。
炎症は徐々に消えていくのです。足首捻挫しても治りますよね?首のスジを違えても治りますよね?冷静に考えればわかるのですが、交通事故となると、しかも追突事故のよう自分に非が無い時には「この痛みもあの痛みも交通事故のせい」と思いがちです。

しかし気を付けていただきたいのは「医師の診察」です。
医師は「交通事故との因果関係あり」と思ったら、交通事故のケガとして患者が「もう大丈夫」というまで治療します。
気の利いた医師であれば、患者の話を聞いて「これは事故による痛みと別のものだよ」と言ってくれたり、「3ヶ月で治らないのは事故と関係ないから、健康保険で通いなさい」と言うケースもあります。
気の利かない医師なのか、通院してくれれば儲かると思っているのかは不明ですが、基本的に「痛いなら通いなさい」というスタイルです。

よって「原因が交通事故以外にある」とは思いません。
これは、先の私の体験談のように事故と関係無しに受診すれば話は別で、原因を探り治療することになります。
医師も捻挫・打撲は「保存療法」で治ると思っているようで、特に治療らしい治療はしません。事実、保険会社に送付される診断書には「保存加療中」と書かれてきます。3ヶ月もすると大半が治るというのは事実で、医師もそのように考えているからこそ、治るのを待っているのです。

首・腰・背中など交通事故のケガと同じ部位が痛む「内臓疾患」が原因の病気もあるそうです。その場合には、交通事故のせいで別の病気の発見が遅れることになりかねません。

「3ヶ月たっても捻挫・打撲の痛みが治らない」
「痛みが増大した」
という場合には、別の原因か病気かもしれません。

まとめ

関係の無い場所の治療もできるのか?
というテーマの結論としては「しないほうがいい」となります。
故意ならば当然トラブルの元なのでやめるべきですが、わからないなら保険会社の担当者や医師に相談すべきです。


捻挫・打撲の場合、
「交通事故による痛みは2-3日で最大化し徐々に少なくなる。逆に大きくなることは無い」
「3ヶ月で大半の人が治る」
と知っておいていただければ、別の病気になっていることを見逃さないことにつながります。

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